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それはきっと必要ない 曇った思考がクリアになる”絞り込む”技術 印南敦

第45回

図書館は必要だ

2018.10.10更新

読了時間

めまぐるしくトレンドが変化する現代。改めて自分に必要なものは何かを見つめなおしてみませんか? 本連載では、作家・書評家の印南敦史さんが、大きなことから小さなことまで、日々の生活で気になった事柄をテーマに「なにが大切で、なにが大切でないか」を考えていきます。
「目次」はこちら

「図書館に行く習慣がない」
「そもそも、行く必然性がない」
「行ったところで、なにをしたらいいのかわからない」

たとえばこのように、図書館を「縁遠い場所」「自分には関係のない施設」と考えている人は、決して少なくないのかもしれません。

ただでさえ読書人口は減っていると言われていますし、本を読む習慣のない若い人であれば、なおさらその傾向が強いと考えることもできるでしょう。

でも実際のところ、図書館に行くと、いろいろなメリットがあるのです。そして僕はそれを、ひとりでも多くの方にわかっていただきたいのです。

では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか? まずは、思いつくことを挙げてみることにしましょう。

1:無料で利用できる
公共の図書館は、誰でも自由に利用できるところが最大のポイント。「そんなの当たり前だろ」と突っ込まれそうですが、しかし、その「当たり前」を活用できていない人が多いのも事実ではないでしょうか?

でも、それではもったいない。「自分には関係ない」などと考えず、利用できるものは利用したほうがいいし、そうすれば得るものも多いと思います。

2:いろいろなジャンルの本がある
これも当たり前。しかし、とても重要な点でもあります。人はとかく自分に興味のあることだけに注意を注ぎがちですが、普段なら気にもかけないような本を手に取ることで、いままで知らなかった世界を知ることができるようにもなるからです。

もちろん書店でもそれは可能ですけれど、図書館には「こういう本もあるんだよ」と背中を押してくれるような、独特の雰囲気があるのです。それは、とても心地よいものです。

3:借りられる
またまた当たり前なことです。が、これは大きなチャンスにもなりうることです。書店に行ったとき、ちょっと気になる本を見つけたものの、「でも買うのはちょっとなぁ」と躊躇することってありますよね。でも図書館なら、気になった本を借りられるのです。ですから、まず借りて読んでみて、それが好みかどうかを判断すればいいわけです。

個人的にオススメなのは、「タイトルが気になった」とか「装丁が好きだ」とか、理由はなんでもいいのですが、「なんらかの理由で気になったもの」を片っ端から借りてみること。もちろんそのすべてを好きになれるわけではないでしょうが、それを繰り返していると、やがて必ず、自分の好みにピッタリはまる本と出会えるはずだからです。

4:時間を潰せる
たとえば予定のない休日などに、なにをするでもなくYouTubeをダラダラと眺め続けたりすることはないでしょうか? 実は僕もあるのですが、あれはどう考えても時間の無駄。しかも、「時間を浪費してしまった」と罪悪感に苛まれることも少なくありません。

でも、やることがなにもないなら、図書館へ行けばいいのです。無目的に館内を歩き回るだけでも、興味のある本がなにかしら見つかります。それらを読んでみるのもいいでしょうし、さらには雑誌や新聞だって読み放題。

視聴覚スペースで音楽を聴いたりDVDを見たりすることもできますし、食事のできるカフェを併設した図書館も少なくありません。

早い話がお金を使わず、有効に時間を使えるのです。そればかりか、滞在していればなんらかのかたちで知的好奇心を満たすことができるのですから、こんなにいいことはありません。

とはいえ、「具体的に、図書館をどう活用したらいいのかわからない」という方もいらっしゃることでしょう。そこで、僕がおすすめする「図書館活用ステップ」をご紹介したいと思います。

ステップ1:書架案内図をチェックする
なにしろそこは図書館ですから、至るところに本があります。そのため、「どこから見ればいいのか」がわからなくなったとしても無理はありません。そんなときは、どんな本がどこに収められているのかをジャンルごとに表示した「書架案内図」を見て、そこにどんな本があるのかを確認してみましょう。たとえば美術が好きならば、まずは美術書のコーナーに行ってみて、そこをスタートラインにして動けばいいわけです。

ステップ2:ゆっくり歩いてみる
図書館の書棚を、端から端まで、ゆっくり歩きながら見て回るというステップ。ステップ1で決めた「自分なりのスタートライン」から始めてもいいですし、あるいは書棚スペースのいちばん端からでもOK。別に決まりはないので、自由に歩いてみればいいのです。

そして、少しでも気になった本を見つけたら、立ち止まって開いてみる。その結果、ほんの少しでも気になったり心惹かれたとしたら、それは「借りる候補」となるのです。

フロア全体をチェックし終えるころ、「借りる候補」はかなりの量になっているかもしれません。が、一度に借りられる冊数であったとしたら、そのまま全部借りてしまいましょう。借りられる冊数を超えてしまった場合は、絞り込む楽しさも生まれます。

ステップ3:持ち帰って読む
借りた本の重みを感じながら帰路につくと、それだけで気持ちが高まってくるもの。「どんな本なんだろう?」と、読むのが楽しみになってくるわけです。

結果的に、貸出期間内にすべてを読みきれなかったとしても、それはむしろ当然の話です。たとえば「10冊借りたのに、1冊読むのがやっとだった」とか、あるいは「1冊も読めなかった」とか。でも、それでいいのです。また、読んでみた結果、「期待はずれだった」ということも充分にあり得ます(逆に、「期待していなかったけど、思ったよりよかった」ということもあるはずです)。

思っていたほど読めなかった場合、ガッカリしてしまうかもしれません。でも、落ち込む必要はないのです。思っていた以上に読めなかったとしても、「読書した」という“体験”だけは確実に残るのですから。むしろ、そのことのほうが重要なのです。

なぜなら読書体験が積み重なっていけば、それはいつか必ず、読書に関しての自信につながっていくものだから。そしてそこから、読書を習慣化することができるようになるのです。

4:取捨選択する
ですから、どうしても読めない本、どうしても好きになれない本は、「そういうものだ」と判断して除外していけばいいのです。買った本の場合は、「せっかく買ったのに……」という思いがまとわりつくでしょうが、借りた本なら話は別。「また別の本を借りてみよう」と、気持ちを切り替えればいいだけです。

こう考えていくと、いままで興味が持てなかった図書館に対し、多少なりとも興味が湧いてはきませんか? だとしたら、そんな気持ちに素直になって、近所の図書館を利用してみていただきたいと思います。

僕はもう何十年もの間、自宅からいちばん近い図書館ばかりを利用していました。そこは区内でいちばん大きな図書館でもあるので、他の図書館に行く理由がなかったのです。

ところがあるとき、なんとなく別の図書館に行ってみた結果、同じ区立図書館でもだいぶ違うのだということに気づきました。蔵書も雰囲気も、それぞれの図書館にそれぞれの個性があるのです。

そのことに気づいてから、区内の図書館を一軒ずつ回ってみたくなり、いまそれを実行に移している最中です。

その一環として先日、自転車で20分ほどの場所にあるK図書館に足を運びました。おそらく、区内でもかなり古い部類に入るであろう図書館ですが、そこは小学生時代によく行っていた場所でもありました。

とても驚きました。

なぜって、小学生だったあのころと、まったく同じ空気が流れていたからです。「あれ、こんなに狭かったっけ?」と感じたのも事実ですが、それは僕が大人になった証拠でもあるのでしょう。

いずれにしても懐かしく、そこにいるだけで心が落ち着いていくのがわかりました。いまもその図書館から14冊借りていますが、早いところ目を通し、また、あの空間に足を踏み入れたいという気持ちでいます。

これはあくまで僕の個人的な体験ですが、つまりはこのように、図書館は多くのことを感じさせ、多くの知識を与えてくれるのです。そしてそれはいつか必ず、なんらかの形で人間性に影響を与えてくれることになるでしょう。

経験的にそれを実感しているからこそ、本を読む人が減ろうとも「図書館は必要だ」と声を大にして言いたいのです。

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著者

印南 敦史

作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。ウェブ媒体「ライフハッカー(日本版)」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。以後、驚異的な読書量を実現する。著書に『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フローリーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)ほか多数。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)

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