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よみものどっとこむ

第14回

キッチンの道具を選ぶ基準

2017.02.28更新

読了時間

【 この連載は… 】 住まいを工夫すると、ライフスタイルが変わる。小さくてもゆとりある暮らしのキーワードは「ミニマムライフ」そして「自由」。時間と共に変化していく空間やモノと長く付き合う、心地よい住まいづくりの方法を紹介します。


 三度の食事やお茶の用意。キッチンは、家庭のなかでももっとも人の動きが多い場所。

洗う、切る、混ぜる、火を使う、盛り付ける、食器を洗う。様々な動作が繰り返されるキッチンは、機能に応じて道具の種類も増えがち。さらにその形も多種多様です。キッチンツールは、昔ながらの道具に加え、新しい道具もたくさん開発されています。とはいえ、「便利そう」「手早く料理できそう」「これを使えばプロの腕前に」などの謳い文句につられ、気軽に道具を増やしてしまうと、買ってもほとんど使わないガラクタが増え、むしろキッチンの機能が低下することにもなりかねません。


 使いやすいキッチンのために、どんな道具を揃えたらいいのでしょうか。


■汎用性の高い道具を選ぶ


 キッチンツールは、新しい道具がたくさん開発されています。例えば、「切る」動作を伴う道具で、○○スライサー、○○みじん切り器、○○たたき、○○切り、○○カッターなどのように、切る材料によって、専用に作られた道具がたくさんあります。これらは、本来、包丁だけでも間に合う場合が多いのです。牛刀や三徳包丁などの万能に使える包丁があれば、大抵のことはできます。我が家では、小さいペティナイフと牛刀の2本で、ほとんどの「切る」作業をこなします。先の尖ったものを選べば、魚もさばけます。


 もっとも汎用性の高い鍋は、普通の蓋付き鍋です。揚げ物鍋、炊飯器、てんぷら鍋、おでん鍋、フォンデュ鍋、タジン鍋、ラーメン鍋、ジンギスカン鍋、パスタポット、蒸し器、スープメーカー、フライヤー、ゆで卵メーカー、焼き芋鍋、ホットサンドメーカー。「○○専用の鍋」は、その調理法や材料が特徴的であればあるほど、用途が限られるので、出番が減ってきます。その料理を本当によく作る場合でなければ、普通のお鍋で事足りるでしょう。場合によっては、大抵の家庭にある炊飯器も、使い方が限定されるので、普通の鍋より汎用性が低いといえます。我が家では、ご飯を炊くときも、普通のステンレス製の鍋です。

道具を扱う手は、両手しかないし、広げた道具を置く台の面積も限られるので、大抵の道具は、複数個持っていても同時に使うことはありません。道具の数は、同時に使う最大の数以上は不要です。ガスコンロの火口が3個なら、同時に火にかけられるのは鍋3つまでだから、鍋は3つ以上同時に必要ない、というのも一つの考え方です。


 道具としては、ボウルより鍋のほうがある意味汎用性が高いといえます。ボウルは、混ぜることに特化しているので、鍋のように蓋はなく、火にかけることもできません。反対に、蓋をはずした両手鍋は、ボウルの代わりに使うことができます。さらに、ボウルと同じ大きさの食器(ガラス製や陶器製)のほうが、食卓にそのまま出せるのでボウルより利用度が高いといえます。サラダボウルやどんぶり鉢は、大きさが充分であれば、ステンレス製のボウルのように調理に使えます。

我が家の普段使いの鍋は、5つ。普通に鍋として使うほか、時折、茹でた青菜を水に取る時に、ボウル代わりになったり、次の日の献立を途中まで入れて保管する保存容器になったり、酢飯を作る時に半切りがわりにしたり、パーティの時に氷水を張ってビールを冷やしたり、スポンジケーキの型になったり、中にザルを敷いて蒸し器にすることもあります。


■「あると便利」は「なくてもいい」


 何かを作るために、何かしらの機能が付加されているものを「道具」と呼びます。だから、そもそも全ての道具は「あると便利」なもの。だから、所有するか否かで「あると便利」というのは、理由にはなりません。「あると便利」を持つ理由にすると、全ての道具をとっておかなければなりません。


 持つか持たないかを決めるのは、「あると便利」という基準ではなく、その道具を使いこなせるか否かです。ほとんど使っていないものは、「あると便利」だけど「なくてもいい」。また、たまにしか使わないものは、無しですませられないか考えてみます。


 例えば、「以前はよくお菓子を作っていたけれど、最近はほとんど作らない」というような時。「もう家では作らない」と決めて、全ての道具を手放したら、どれだけすっきりするでしょう。そのほとんど使われていなかった製菓道具のスペースが丸ごと空けられます。いっぱいに入っていて取り出しにくかった引き出しの道具を、「よく使うもの」と、「あまり使わないもの」に分けて、「あまり使わないもの」を製菓道具の入っていた空いたスペースに移したら、よく使う道具が以前よりずっと取り出しやすくなるはず。「なくてもいい」道具類を手放すと、日々の台所仕事を手早くすることができます。


 そうはいっても、「お菓子を作るのはやめる」というたいそうな決断ををせずとも良いのです。例えば、「焼き菓子は作るけど、プリンは作らない」なら、プリン型だけを手放すことができます。または、「特別な道具を使わなくても作れるお菓子だけ作る」という方法もあります。琺瑯製の保存容器はパウンド型に、ザルは粉ふるい器に、底に角のあるオーブンにいれられるお鍋はスポンジ型に、すこしコシのあるヘラは木べらの代わりになります。耐熱性のカップがあれば、プリン型がなくても、プリン作りを諦めなくて済みます。大きなボウルを型にして大きいプリンを1つ作り、食べる時にプリンを取り分けても良いのです。


■「あると便利」とは限らない


 あらゆる道具や電気機器は、もはや私たちの暮らしに欠かせません。それを使うことで、手やアナログの道具より何倍もの効率で、作業をすることが可能になります。「ハンドミキサーがないとスポンジケーキが作れない」わけではないのに、我が家にはハンドミキサーがあります。メレンゲを作るのに、手動でやっていた時は15分以上もかかっていましたが、ハンドミキサーを使えば、5分以内で作れます。でも、1ヶ月に1回程度しか使わないハンドミキサーは、ちょっと出し入れしにくいところに収納しています。踏み台を出して、ハンドミキサーを出し、セットする。使い終わったら、本体やコードに飛び散った卵をきれいに拭き取って、収納する。泡立て部は、洗った後、しっかり乾かして、またすこ し手の届きにくいところに収納する。出し入れだけでも結構時間がかかっているようです。でも、手の届きにくいところとはいえ、適宜な収納場所はあり、そして子どもたちの誕生日にはスポンジケーキを焼くのが慣わしになっています。この慣わしが変わるまでは、ハンドミキサーを持ち続けるでしょう。


 フードプロセッサーでは、塊肉からひき肉を作ったり、たねを混ぜたり、ものによっては野菜のカットをできるものもあります。いろいろ作れて便利である一方、回転による転倒を防ぐのに、本体に重量があるものが多く、出し入れが面倒です。鋭利なスライス部を洗うときには気を使うし、機器類は形が複雑で、洗うのに時間がかかったりすることがあります。我が家は食洗機があるので、フードプロセッサーを使いますが、食洗機がないなら、洗う手間を考えたらすり鉢とすりこぎの方が早いかもしれません。

重たくて大きいフードプロセッサーを出しっぱなしにしていたら、場所を占拠するだけでなく、ホコリをかぶった周辺を掃除したりするのも面倒なものです。


 道具を持つことは、一見便利で時短になるようで、収納場所を取るだけでなく、道具の手入れや出し入れの手間も必要です。それがホコリをかぶる場所にあるとしたら、掃除という手間は他の部屋の数倍大変です。油煙の舞うキッチンで、ホコリと油が混ざった汚れは、きれいにするのにとても手間がかかるからです。


■「憧れの道具」使いこなせていますか?


 19世紀に活躍した著名なイギリスのデザイナー、ウィリアム・モリス。「モダンデザインの父」といわれた、彼のデザインした植物や鳥などをモチーフにした有機的なデザインのパターンは、テキスタイルや壁紙などにプリントされ、今でも高い人気を誇っています。モリスの名言に「役に立たないものや、美しいとは思わないものを家に置いてはならない」というのがあります。


 「役に立つ」、そして「美しい」ものが多い道具。飾って楽しむオブジェや絵と違い、道具は、機能が備わっているからこそ、それを言い訳につい増やしがちになります。私のなかで、一番キケンな言い訳は、「それを使うと料理上手になれる」です。

熱伝導のよい、そして飾っても美しい銅製の鍋。見た目も美しく、機能が良さそうな、鋳物のお鍋。それを使ったら、プロの技にも迫りそう。憧れの道具ではあるけれど、私はそれをいまだに買わずにいます。それは、本当にそれを「役立たせる」自信がないからです。銅の鍋は時間のない私にとっては手入れが難しそうです。鋳物は、その重量があるがゆえ、出し入れや手入れが面倒になりそうです。憧れの道具を使うと、楽しく料理できるのに間違いはありませんが、その道具を「役に立つ」ものたらしめるか、「ガラクタ」に貶めるかは、私がよく使うかどうかによって決まるのです。憧れだけで道具を揃えても、腕が上がるわけではありません。「それを使いこなせているか?」これにキチンと答えを持って、道具とつきあっていきたいと思います。


■最小限の道具で済ます方法


 私たちに、元から備わっている道具、それは身体のパーツです。「道具は手の延長」ともいわれます。料理をするときは、頭、手、目、鼻をフルに使うようにします。焼き色、揚げ油の音、火加減、仕上がりが近い香り。このあたりは、経験で養われることが大きいもの。キッチンに多く立つ機会があればあるほど、そして失敗も重ねるほどだんだんとわかっていくものです。また、ちょっと工夫すれば、必要と思っていた道具が他の道具を代用してすませられるかもしれません。「昔の人はどうやっていたんだろう?」と調べてみると、別の方法がみつかるかもしれません。


 主婦歴が長い、尊敬すべき私の友人は、私が「持っていて当然」と思う道具を持っていません。スライサーやピーラーがなくても、神がかった包丁さばきで、薄切りや皮むきをするするとこなします。私も、ようやくスライサーは不要になり、買い替えのときに手放しましたが、ピーラーはまだまだ必要です。メレンゲを作るのに、私が手で泡立てると15分かかりますが、手でも5分もあれば十分という達人もいます。私がスポンジケーキを作る機会は月に1度もないので、やはり当分はハンドミキサーのお世話になりそうです。

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著者

尾崎 友吏子

ブログ「cozy‐nest小さく整う暮らし」主宰。にほんブログ村「シンプルライフ」「ミニマリスト」「ワーキングマザー育児」カテゴリーで上位人気を誇る。1970年生まれ。ニューヨーク州立大卒。不動産業などを経て、現在は建設業に従事。二級建築士、インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー1級。著書に『3人子持ち働く母のモノを減らして家事や家計をラクにする方法』(KADOKAWA)がある。

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