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よみものどっとこむ

第3回

「必要なものだけとの暮らし」がくれたもの

2016.09.09更新

読了時間

■収納、断捨離、片付け、ミニマリスト。ブームはどこまで?


 大量生産、大量消費が当たり前の時代。


 安い、可愛い、かっこいい、便利なものが増え、家の中にはものが溢れている。


 その溢れたものをどうにかして、家を少しでも居心地の良いものにしようと、ここ十数年で色々な方法が提案されてきました。


 20年程前、収納術の大御所、近藤典子さんがご活躍されていました(現在もご活躍中)。近藤さんの提案する収納テクニックは、たくさんあるものを、誰にでもマネできそうな小さなアイデアで、より整然と、使いやすくする、という印象がありました。私が結婚し、新しい家庭のものの管理を任された時でもあったので、おおいに参考になりました。


 子どもが生まれ、まもなく購入した90㎡、3LDKのマンションは、3人の小家族には十分な広さでした。ものを持ちすぎると掃除も大変になるので、なるべく多く持ちすぎないように心がけていました。


 2010年、やましたひでこさんの断捨離が流行語大賞にノミネートされた後、まもなく起きた東日本大震災。近藤麻理恵さんの片付けの著書がベストセラーになったのは、その年のことでした。


 我が家は、さらに子どもが2人生まれ、5人家族になりました。人が増えると、比例して必要なものも増えます。広いと思っていた部屋がうまく片付かなくなりました。自分の暮らしに活かせたらと、整理収納アドバイザーの資格をとりました。


 整理収納アドバイザーの講座で学んだのが、まず「整理」する、ということ。


 「整理」の定義は、広辞苑にこう書かれています。


 1 乱れた状態にあるものを整えて、きちんとすること。「資料を―する」「気持ちの―がつく」「交通―」

 2 無駄なもの、不要なものを処分すること。「人員を―する」


 他にも語意はありますが、整理収納アドバイザーで学んだ「整理」とは、「無駄なもの、不要なものを処分すること」でした。つまり、右にあるものを左に動かしても、ばらばらに散らばったものを一箇所に集めても「整理」とはいわないのです。「整理」とは、「不要なものを手放すこと」。つまり、「必要なものだけ残すこと」だったのです。


 断捨離から始まった、ものを持たない、シンプルでコンパクトな生活。昨今、ミニマリストがブームですが、気がつけばシンプルを心がけていた自分の暮らしもミニマリストの部類になっていました。


 「持つことのメリット」はメディアや文化で知れ渡っていても、「持つことのデメリット」や「持たないことのメリット」は、いままでまったく語られることはなかったように思います。私の場合は、学校や親からも学ぶ機会はありませんでした。


 でも、生活をシンプルにしていき、「持たない」ことで、いろいろなことが好転することを実感しています。


■持ちすぎるデメリット


 ここで、いままで私が親からも学校からも教えてもらう機会がなかった、「より多く」「より大きく」「持ちすぎる」デメリットをあげてみます。


 個人の生活では、例えばこんな不具合が生じます。

・お金がかかる

 必要でないものまで買ってしまう。そのものを収納するために、大きな収納庫、大きな家が必要になり、そのスペースを買う(借りる)のに、より多くのお金が必要になる。より大きな家は光熱費や税金も高くなる。

・住みにくくなる

 「もったいない」と、整理されなかったもののガラクタ収納庫と化した家は、掃除などのメインテナンスに手間と時間がかかる。メインテナンスされない家は、清潔を保ちにくくなり、居心地が悪くなり、住みにくくなる。
大きい家のローンや賃料でお金がかかりすぎ、適当なリフォームや住み替えができないと、ライフスタイルの変化についていけず、住み心地の悪い家になる。

・家でくつろぐ時間が減る

 お金が十分にあり、程よい住み心地がキープされたとしても、そのためにより多くの就労時間が必要となる。せっかく心地よい家なのに、そこでゆっくりくつろぐ時間がない。


また、社会的にも、こんな弊害が生じる可能性があります。

・労働力がムダになる

 たくさんものを消費することは、経済を回すとしてメディア、企業、国家レベルでも推奨されています。多く消費することは、近視眼的に見れば、たしかに経済的に効果はあるでしょう。とはいえ、長期的にみれば、多くの損失を生じることも忘れてはなりません。日本は、高い技術力と真面目な国民性が評価されていますが、私たちは、すぐゴミになるものを作っているのでしょうか。

日本の住宅は、ほとんどの場合新建材の寄せ集めでできています。新建材を組み合わせた住宅は、職人の匠の技ではなく、工業製品。工業製品としての住宅は性能的には優れているかもしれません。でも、悲しいことに、その資産価値は20年で失うことになっています。それは個人レベルだけでなく、国家レベルでも大きな損失となっています。

・資源のムダと環境へのダメージ

 20年で価値がなくなる家は、大きければ大きいほど損失が大きくなります。上物がある不動産は「古家つき」として売買され、古家は不動産の買い主に壊され、大きなゴミとなります。
工業製品の材料でできた古家は、燃えるゴミとして簡単に焼却することができません。複合的な素材でできた建材は、どれもガレキとして、燃やせもしない複合大型ゴミとなります。それは地球上のどこに埋められるのでしょうか。
あまり使われることなく断捨離されたものたちは、家ほど大きなゴミではなくても、同じ運命をたどります。
行先がなくなった、不用品は、一体どこにいくのでしょう。


■必要なものだけとの暮らしで得られた、ものを大切にする心


 不要なものは買わない、持たない。


 必要なものは、少なく、小さく持つ。


 必要なものだけとの暮らしは、道具ひとつひとつが、大切なものとなります。ハサミが家に1丁しかなければ、代わりはないので、そのハサミは家で唯一大切な道具。ものの数は最小限でも、それぞれの機能を最大限に果たすのです。


 ハサミを使う機会が月に10回あったとします。ハサミが1丁しかなかったら、そのハサミは10回使われ、100%活用されます。ハサミが家に2丁あれば、1丁は50%ずつしか活用していないことになります。1つがお気に入りで、もう1つがイマイチ使い勝手が悪ければ、お気に入りのハサミは100%活用されていても、もう一方は全く活用できていないガラクタです。


 お気に入りのものは、愛着がわき、大切に使えるようになります。途中でその役目を終えることなく、できるだけ使い果たしたくなります。


■ものをお金のように循環させ、価値を上げる


 生活の変化で、道具は不要になることがあります。
家の中で、使われていないガラクタとして「死蔵」させても、ものは「死」んでしまいます。大切なのは、ガラクタを「死」なせず、新しく生まれ変わるよう「活き」かえらせることなのです。


 環境配慮に関する言葉、3R。誰もがどこかで聞いたことがありますね。


 Reduce(リデュース:ゴミを減らす)
 Reuse(リユース:繰り返し使う)
 Recycle(リサイクル:再資源化する)


 この3Rに、下記の4つを加え、7Rといわれる発展型もあります。


 Refuse(リフューズ:ゴミになるものを拒否する)
 Repair(リペア:修理する)
 Rental(レンタル:所有せず借りてすます)
 Return(リターン:携帯電話などを使用後は購入先に戻す)


 これらの言葉は、そのまま、ミニマムな生活に通じます。
「ゴミ」を、「すぐゴミになるもの=ガラクタ」と置き換えてみてください。
少ないもので暮らすことは、減らす過程でものを手放さなくてはならないけれど、全て「捨てる」とは限りません。


 流動性のある「もの」を選べば、不要になったときでもお金のように「もの」を循環させることが可能です。
不要になり、捨てた後埋められるだけでなく、ものの循環に乗せやすい基準を列挙してみました。

・古いほうが価値があるもの

 アンティークや、デッドストックなど。新品より価値が上がる場合もあります。

・素材に配慮

 天然素材のものを選べば、使い切ることができ、不要になったときにも土に還ります。

・ブランド品

 信用の置ける看板のものは、中古の需要があります。オークション、フリーマーケットなど、最近は、スマホのアプリなどで不用品を売買しやすくなりました。買取サービスもたくさんあります。


 我が家の長男は現在高2。そろそろ、友達のお兄さんお姉さんが、家から離れた大学に進学した話を耳にするようになってきました。子どもが遠方で下宿するとなると、小さいアパートを探し、新品の単身用家電一式を買い与え、費用負担が大きいという話をよく聞きます。


 私は、大学在学時、アメリカに4年ほど滞在していました。訪米して半年、学生寮から出て一人暮らしを始めるときには、当然家財道具を揃えましたが、それらはほとんどが中古品。大学の友人から譲ってもらった道具や食器、中古家具屋から買ったユーズド家具やベッドマットレス。そして卒業して帰国するときには、また友人に譲ったり、中古家具屋に売ったり。中古は英語で「secondhand(セカンドハンド)」と言いますが、このセカンドハンド品を使うのは、貧乏留学生でなくても、わりと一般的でした。


 映画「トイストーリー2」で、引越し前に、主人公の男の子のお母さんが、家の前で不用品を売るシーンがあります。「ヤード(庭)セール」「ガレージセール」は、アメリカではごく一般的。週末には、教会や公園などで、フリーマーケットが催されます。ヨーロッパに旅行したときには、フリーマーケットで掘り出し物を物色するのが旅行の楽しみの1つでした。


 日本でも、江戸時代ぐらいまでは、あらゆるものがリサイクルの対象でした。傘や提灯などは直して再利用され、紙くずは漉き直し再生され、古い食器や衣類は買い集められ市などで売られていました。今には無い、「古椀買(ふるわんがい)」という職業があったそうです。


■日本になじむミニマムな暮らし


 英国には、時を経てしかえられない美しさや価値を古いものに見出す、日本とはまったく違った価値観があります。


 新しいものはどんどん創れるけど、古いものは決して増えることはなく、だんだん減っていくから、価値がある。戦後に建築された「新しい建物」に価値があまりつかず、何百年も前の建築物の価値が上昇することもあるそうです。


 もちろん、英国の価値観を、文化の異なる日本にそのまま持ってこられないし、そんなことは意味がありません。同じように、アメリカ的な、大量生産、大量消費も、そのまま日本に持ち込んでも、日本の文化には馴染まないのかもしれません。


 そもそも「質素の徳」「禅的思想」などは、日本の文化。そして、国土が小さく、資源も少ない日本は、ミニマムな生活はすんなりマッチします。


 あえて小さく暮らすことは、日本人の持つ、日本的なものを大切にする暮らしでもあるのです。

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著者

尾崎 友吏子

ブログ「cozy‐nest小さく整う暮らし」主宰。にほんブログ村「シンプルライフ」「ミニマリスト」「ワーキングマザー育児」カテゴリーで上位人気を誇る。1970年生まれ。ニューヨーク州立大卒。不動産業などを経て、現在は建設業に従事。二級建築士、インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー1級。著書に『3人子持ち働く母のモノを減らして家事や家計をラクにする方法』(KADOKAWA)がある。

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