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第25回

マイナンバーは必要ない

2018.04.19更新

読了時間
無題ドキュメント

【この連載は…】めまぐるしくトレンドが変化する現代。改めて自分に必要なものは何かを見つめなおしてみませんか? 本連載では、作家・書評家の印南敦史さんが、大きなことから小さなことまで、日々の生活で気になった事柄をテーマに「なにが大切で、なにが大切でないか」を考えていきます。

前回は、「印鑑は必要ないのではないか」ということについて書きました。某地方都市の公共施設で講演会を行った際、講演料の入金手続きをするためにたくさん印鑑を押さなければならなかったという話です。

読んでいない方は前回の記事をぜひチェックしていただきたいのですが、実はそのとき、印鑑以上に違和感を抱いたことがありました。タイトルに書いてあるのでバレバレですが、マイナンバーってやつです。

講演会の一週間ほど前に、「当日は印鑑をお持ちいただき、マイナンバーもお伝えください」というようなことを言われたのです。

……ああ、マイナンバーね。はいはい。

そう感じるしかなかったのは、いまだにまったく馴染みがなかったからです。アレがスタートしたのは2015年4月ですから、まるまる3年が経過しているわけです。でも、ちっとも生活に直結していません。

もし「いや、マイナンバーで生活変わったわ!」という方がいらっしゃるならぜひお話を伺いたいのですが、いかがでしょうかね?

マイナンバーについて思いを馳せるとき、僕は謎の転校生を思い浮かべます。

ある日突然、なぜか教師からとても評価の高い、難波舞くんという女の子のような名前の生徒が転校してきました。でも、前評判のわりに難波くんは超無愛想。誰とも積極的に交流しようとしないまま、教室の隅でつまらなそうにしています。

だから結局、誰も彼に興味を持とうとしないまま3年が経ってしまいました。入学直後に転校してきたのに、なにもしないまま卒業です。ものすごく無駄の多い人生です。

この3年間、難波くんは、誰かが話しかけたりしても、ボソッと「職員室で聞いて」「それ、○○先生の担当だから」というようなことを答えるだけで、自分から積極的に動こうとしませんでした。

優秀でなんでもできる男という触れ込みだったのに、結局はなにをするでもなく、ただそこにいるだけ。そんな彼を動かさなければならないときにはなぜか職員室まで行って先生に疑問点などを相談しなければならず、非常にめんどくさい。

だからいつしか、「なんで教師はあいつを贔屓するんだ?」「そもそも、あいつはなんで転校してきたんだ?」と不満がどんどん大きくなっていく……。

いくら先生たちが「優秀だ優秀だ」と騒ぎ立てたところで、無愛想でやる気がなくてプライドだけは高いやつなんて、つきあおうと思わないじゃないですか。

みんなと仲よくしたいなら歩み寄らなくてはいけないし、そもそも学校や教師が「すごいすごい」と大騒ぎするなら、「なぜ転校してきたのか」ということについての説明があってしかるべきではないですか。

でも本人は無愛想だし、学校側も納得できる説明をしないのです。そんなことでは、誰も納得するわけありませんよね。
で、つまりはマイナンバーもそんな感じだ。

内閣府のサイトを見てみると、「マイナンバー(社会保障・税番号制度)」と書かれたページに、この制度について次のような記述があります。

マイナンバー制度3つの目的
1. 公平・公正な社会の実現 給付金などの不正受給の防止
2. 国民の利便性の向上 面倒な行政手続きが簡単に
3. 行政の効率化 手続をムダなく正確に

わかりにくいことこの上なし。しかも講演会に際するマイナンバー手続きで非常に面倒な思いをした身としては「面倒な行政手続きが簡単に」「手続をムダなく正確に」って、冗談としか思えません。

まさに、絵に描いた餅。

詳しい裏事情は計り知れませんが、「マイナンバーやるからな。お前ら動けよ」と偉い人に言われた人たちが、その内容や意義を理解するよりも先に「命令なんだから、やんなきゃ仕方ないよなー」と愚痴りながらいやいや動いて形にした。マイナンバーは、そんな感じで生まれたのではないでしょうか?

その証拠に、カードの発行がスタートして早々、すぐにトラブルが発生しました。市町村の端末からシステムにつながらないとか、データの更新ができないとか、そのテのトラブルが3カ月で80回もあったとか。

3カ月で80回って、使ったはしからトラブルが起こるような感じですよね。そんなもの、誰が使うというのでしょう?

お上のやることを頭ごなしに否定したいというわけではありません。きちんと納得できる説明があり、それを確認することで「これは便利そうだな」と思えたのであれば、それは僕も歓迎するだろうと思います。

でも、この制度には核心部分が欠けているのです。だとしたら、それを受け入れろと言われても、それは無理な話であるわけで。

とはいえすでに始まっているのですから、いますぐこの制度を廃止しろと感情的に責めるのは現実的ではないでしょう。

難波くんの例でいえば、いまはクラス中のあちこちから、「あいつには協調性がない」「そもそも、教師連中がなぜあいつをもてはやすのかがわからない」と不満が噴出しているような状態。

でも、彼を除くクラス全員が、「でも、転校してきちゃった以上はどうしようもないじゃん」と戸惑い続けているのです。

ただ、それではクラスの雰囲気はどんどん悪くなっていく一方でしょうし、火種である彼も、いくらさめた転校だからといっても居心地はよくないはずです。

つまり将来的に転校してもらったほうが、クラスのためにも、学校全体のためにも、彼自身のためにもいい。

スタートするぞと発表された時から非難を浴び、スタートしたと同時にさっそくやらかし、以後もいい話をまったく聞かないマイナンバーは、まさにそんな状態にあると考えるべきです。

しかも、難波くんの場合は転校すればとりあえずは解決するでしょうし、仮に留年したとしてもいつかは卒業できるわけです。でも、マイナンバーはそうもいかないもんなぁ……。


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著者

印南 敦史

作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。ウェブ媒体「ライフハッカー(日本版)」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。以後、驚異的な読書量を実現する。著書に『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フローリーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)ほか多数。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)

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