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第26回

(ECサイトの)ランキングは必要ない

2018.04.25更新

読了時間

【この連載は…】めまぐるしくトレンドが変化する現代。改めて自分に必要なものは何かを見つめなおしてみませんか? 本連載では、作家・書評家の印南敦史さんが、大きなことから小さなことまで、日々の生活で気になった事柄をテーマに「なにが大切で、なにが大切でないか」を考えていきます。

たとえばアマゾン・ドットコムにアクセスすれば、本とか生活雑貨とか食料品とか、いろんなものの「売れ筋ランキング」が表示されます。

楽天市場みたいなところにしても同じ。「人気商品ランキング」とか「今月の売れ筋ランキング」とか、いろいろ出てきます。

いや~、余計なお節介ですね。頼んでもいないのに。と個人的には感じてしまうのですが、それでもいまや「ランキング」というものは、ECサイトに欠かすことのできない要素であるようです。

ということは、そこにニーズがあるということになります。

みんな、こういうランキングをチェックして、「そうか、いまはこれが売れてるのか。だったら買ってみよう」みたいに感じて、「購入する」に進んだりするのかなー?

それはそれで個人の自由だけど、僕のなかに「売れてるから買う」という発想はない……というよりも、むしろそれは「したくないこと」なのです。だから、ランキングを見て買うものを決める気持ちが、ちょっとわからないのです。

だから今回は、ずっとモヤモヤしていたそのことについて書こうと思い立ったのでした。

で、そう考えていろいろ思いを巡らせていたら、20数年前に勤めていた職場でのエピソード(というほどのものでもないけど)を思い出してしまいました。当時の部下と、「音楽を、どのようにして選ぶか」という雑談をしていたときのことです。

僕はそのころ、音楽にどっぷりハマッていました。もちろんいまもハマッたまんまですが、当時、つまり1990年代初頭といえば、インターネットもなかった時代です。情報源も限られていたから、週に一度か二度はレコード店に足を運び、店員さんからの情報を頼りに、新譜から中古レコードまでをばっちりチェックしていたのです。

でも使えるお金にも限度があるので、気になるものがあったら試聴させてもらって「自分に必要なものであるか」を確認し、好みに合ったら買うようにしていました。

手間はかかるけれど楽しかったし、それは僕にとって、当たり前の音楽との出会い方でした。

だから、その部下くんの音楽に対するアプローチは衝撃的だったのです。なぜって彼は音楽の選び方、消費の仕方について、ニコニコ明るくこう説明してくれたから。

「月イチぐらいでTSUTAYAに行って、『いまどんなのが流行ってんのかなー』って売れ線のコーナーを見て、人気ありそうなシングルを適当にまとめて借りるんですよ。んでカセットに録音して車に乗るとき聴いて、飽きたらまたTSUTAYAに行くんです。その繰り返しですねー」

音楽を聴こうというとき、「TSUTAYAでCDを借りる」のが当たり前の時代でしたが、それはともかく「いまどんなのが流行ってんのかなー」というところを、とても強烈に感じました。

僕のアプローチ方法とまったく違っていたので、いいとか悪いとかいう以前に、純粋に驚いたのです。でも、妙に納得もしました。

簡単なことで、彼にとって音楽はそれほど重要なものではなかったのです。そんなことよりも週末に愛車でどこかへ行くことのほうが、あるいは部屋でマッタリすることのほうが大切で、だから「適当に流れてるもの」があれば十分に満足できたのでしょう。

僕とは発想が全然違うけど、それはいろんな人の「消費のあり方」を考えるうえで注目すべきことだなとも感じました。

「どちらがイケてて、どちらがダサい」とか、そういうことではありません。でも、“ちょっと理解できない”彼らの消費の仕方を客観的に見つめることで、大切なことが見えてくるような気がしたのです。

だからそのときは、試しに同じことをしてみたりもしました。TSUTAYAで流行りもののJ-POPをテキトーに借りてきてカセットに録音し、車で流してみたのです。そもそもJ-POPに興味がないのですから、特に得るものはありませんでしたが。

さて、話が大きくそれてしまいましたが、でも、こういう話を持ち出したことには理由があります。

あのころTSUTAYAで「流行ってるJ-POP」を適当に借りていた彼らと、いま楽天の「売れ筋ランキング」を眺めながら、「○○テレビ系列△△△△△△で紹介されました!!」と書かれている「割れチョコ」を買う人は、とても似ている気がするのです。

つまり「ランキングで上位にいる」ことは、「TSUTAYAの売れ線コーナーにある」こと同じように、彼らにとっては意味があるのではないかということ。

そして、ひとつ興味深いことに気づきもしました。

その「割れチョコ」が、“別に買わなくてもいいもの”である可能性はあると思います。でも必要なかったとしても、「○○テレビ系列△△△△△△で紹介されました!!」というキャッチコピーを見た瞬間、「あ! あれかー!」と盛り上がり、勢いでクリックしたりしてしまう。

いってみれば、その行為の「イベント性」にこそ意味があるのかもしれないということです。もしもそうなのであれば、ランキングは、そんなイベントをもたらしてくれる素敵な装置だということになります。

だとしたら、それこそがランキングの価値なのかもしれません。消費者はその「イベント」で盛り上がれるし、消費者が盛り上がれば売る側の懐も潤うことになる。いわば「win-win」です(←このことば、すっごく気持ち悪いですよね)。

そう考えると「ランキングは是か非か」という問題も一気に片づくことになります。双方が喜んでるんだから、是か非かもねーだろうって話です。

ただ、「ホントにそれでいいのかなー?」と感じてしまったりもするのです。

本来、「欲しいもの」は、自分の好みや価値観に合っているからこそ欲しくなるのではないでしょうか? しかし、そもそもランキングに表示されるのは「売れているもの」でしかなく、必ずしもそれが自分の嗜好に合っているとは限りません。アルゴリズムをもとに「好きかも」しれない商品を機械的に勧められたところで、あまり心は動きません(僕だけかな?)。

その一方には、「売れているから興味がある」という考え方もあるでしょう。が、これまで自分の価値観を軸としてきた自分の人生をより快適なものにするためには、「売れているから」とは違う考え方が必要なのではないかと思うのです。

「売れているかもしれないけれど、自分にとってはどうなのか?」
「自分は本当にそれを好きなのか? それを、自分は求めているのか?」

そのように考えていけば、「自分の好きなもの」「自分に必要なもの」がわかってくるはずだし、そうすれば、別にランキングなんか必要なくなってくるのではないかと思うわけです。

ランキングよりも大切なのは、ランキングに関係なく、

「自分はなにが好きなのか?」
「自分はなにを求めているのか?」

ということであるはず。そこまで発想をシンプルにしてみれば、それは本当の意味での心地よい生活につながっていくような気がするのです。

だから僕は、「ランキングは必要ない」と断言したいと思います。人生のどことかでランキングに引っ張られるフェーズがあってもいいでしょうが、そこを経て、「ランキングでは受けてるけど、自分はそれ好きじゃないから」と言い切ることができるようになれば、それはその点において自己を確立したということにもなるはずだから。

少なくとも僕は、そっちのほうが魅力的だと感じるのです。

なお、今回は「ECサイトのランキングは必要ない」というタイトルをつけました。あえて「ECサイトの」としたのは、同じランキングであっても、ニュース・サイトの場合はまたちょっと話が違うような気がするからです。

忙しい朝にスマホでニュースをチェックしようというときなどは、ランキング上位に表示されているニュースは「知っておくべきもの」である可能性が高いのだから。

つまり、ECサイトで買い物をするときとは違う意味や価値が、その場合のランキングにはあるのかもしれないということ。

まぁ、そうはいってもニュースをアクセス数でランク付けしようという発想自体が、なんだかちょっと違う気もするんですけどね。


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著者

印南 敦史

作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。ウェブ媒体「ライフハッカー(日本版)」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。以後、驚異的な読書量を実現する。著書に『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フローリーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)ほか多数。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)

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