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第37回

猛暑にエアコンは必要だ

2018.07.25更新

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【この連載は…】めまぐるしくトレンドが変化する現代。改めて自分に必要なものは何かを見つめなおしてみませんか? 本連載では、作家・書評家の印南敦史さんが、大きなことから小さなことまで、日々の生活で気になった事柄をテーマに「なにが大切で、なにが大切でないか」を考えていきます。

暑い日が続きますね……なーんて呑気に言ってはいられないほど、今年の暑さは異常です。

ネット上には「インドよりも暑い」という冗談みたいなフレーズが飛び交っているので調べてみたところ、驚くべきことに事実でした。

2018年7月24日12時の時点で、コルカタは31℃ですと。湿度が81%もあるので体感温度は違うでしょうが、同じ時刻に東京は33.4℃、湿度58%だったので、あながち間違った情報ではないようです。

なお新聞によると、お隣の韓国もまた記録的な猛暑だそうで。7月23日のソウルは最低気温が29.2℃で、1907年に近代的な観測が始まって以降、最も暑い朝だったのだとか。

韓国では最高気温が35℃を超える日が2日以上続くと予想される場合に出る「暴熱警報(ポギョムキョンボ)」が頻発しているといいますが、日本はもうそのレベルを超えている気がしなくはありません。

しかし「暴熱警報」とは、言い得て妙だよなぁ。

さて、きのうは外出時に車のなかでNHKのラジオ第一放送を流していたのですが、ニュースのたびに「命に関わる暑さなので、エアコンの使用をためらわないでください」という旨のアナウンスを何度も聞くことになったのがとても印象的でした。

僕の知る限り、ラジオでこうしたメッセージが何度も流されたことは、いまだかつてなかったような気がします。

つまりはそれほどの異常事態だということですが、個人的にとても困っていることがあります。

81歳になる母が、頑としてエアコンをつけようとしないのです。

おそらく理由は2つあり、ますひとつ目は性格の問題です。うちの母は昔から、首を傾げなくなるほど無意味な意地を張りたがるところがあるのです。だから今回も「本当に危ないからエアコンつけな」と言っても聞かず、「私は大丈夫だから」と謎の反論をするわけです。

そして自室の窓とドアを開け放ち、入ってくる熱風にさらされながら「お年寄りが熱中症で亡くなりました」というテレビのニュースをぼーっと眺めていたりするのです。矛盾だろ、それ。

そして、もうひとつの理由は、年齢的なもの。やはりあの世代は、

1:エアコンの冷気がどうしても好きになれない
2:そもそも何十年も、エアコンなしでやってきた
というような思いから離れられないのだろうということです。

年齢的に、こうした思いから離れることができないのだろうと思うわけです。

まぁ、1に関してはわからなくもありません。僕はエアコン肯定派なのですが(もちろん温度を下げすぎないように配慮はしていますが)、多くのお年寄りの考え方はその対極に位置するはず。

程度の差こそあれ、「人工的な冷気に抵抗があるし、窓を開ければ風が入ってくるから」と考えているのだろうということですが、そもそも今年、軽井沢のような避暑地でさえ暑いという現実に我々は直面しているのです。

なのに東京のどまんなかで、そんな風が入ってくるわけがありません。それに、入ってきたとしてもうちは幹線道路に近いので、とてもじゃないけど「新鮮な空気」なんてものとは縁なしです。

でも本当の意味で問題なのは、多くのお年寄りに共通する2のほうだと思っています。「いままでこれでやってきたんだから」という、よくあるプライドが邪魔をしているということ。

しかし現実的に、何十年も前と同感覚でいること自体が間違っているのです。それは、過去の気象データを参照してみればすぐにわかることです。

1968年7月23日 最高気温31.7℃、最低気温24.9℃
1978年7月23日 最高気温33.6℃、最低気温25.6℃
1988年7月23日 最高気温32.9℃、最低気温26.8℃
1998年7月23日 最高気温30.8℃、最低気温20.7℃
2008年7月23日 最高気温32.4℃、最低気温26.8℃
2018年7月23日 最高気温39.0℃、最低気温28.5℃

母の世代が高度経済成長期を生きていた50年前、すなわち1968年と今年とでは、最高気温が8.3℃も違うのです。にもかかわらず、当時と同じライフスタイルを貫き通したいというのなら、それは自殺行為と言わざるを得ません。

熱中症による死者数が、7月22日までの1週間で65人(速報値)だったという発表が24日にありましたが、そんな事実こそがまさにエビデンスであると断言できるはず。

ところが、うちの母のようなタイプは、「熱中症で亡くなる人と自分は別の人間」であるような意識が確実にあるのです。だから、どれだけ周囲が心配して「危険だから」と力説しても、暖簾に腕押し。

なにかあってからでは遅いので毎日気が重いのですが、もう打つ手がない感じです。困ったなぁ。

いずれにしても、こんな夏です。だから、好きとか嫌いに関係なく今年ばかりは「エアコンは必要だ」と断言したい。そんなに暑くない夏だったとしたら、「過度なエアコンは必要ない」というアプローチだってできたのかもしれません。

が、今年は話が違いすぎます。

もちろん、さっきも書いたとおり、温度を下げすぎないなどの配慮は大切だと思います。でも、我が家のように老人を抱えている方には、本人が嫌がろうがどうしようが、エアコンをつけるべきだと力説したいのです。

「自分の母親すら説得できない人間に、なにを言う資格があるものか!」という話ですけどね。


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著者

印南 敦史

作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。ウェブ媒体「ライフハッカー(日本版)」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。以後、驚異的な読書量を実現する。著書に『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フローリーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)ほか多数。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)

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