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第38回

ストロング系酎ハイは必要ない

2018.08.03更新

読了時間

【この連載は…】めまぐるしくトレンドが変化する現代。改めて自分に必要なものは何かを見つめなおしてみませんか? 本連載では、作家・書評家の印南敦史さんが、大きなことから小さなことまで、日々の生活で気になった事柄をテーマに「なにが大切で、なにが大切でないか」を考えていきます。
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8月に入っても、あいかわらず暑い日が続いています。いやいや、こういう表現が、そもそもおかしいんですよね。

本来であれば、7月初旬あたりに梅雨が明け、だんだん気温が上昇してきて、8月に入ってから暑さのピークが訪れるはずなのですから。でも前回にも触れたとおり、今年は7月の時点ですでに「インドより暑い」状態でしたからなぁ。

いずれにしても、こう暑いとどうしても、シャキーンと冷えたアルコール飲料に頼りたくなるものです。

僕は家で飲む場合、まずは小さい135mlのビールを1缶飲み、そのあとワインに進みます。ワインは「絶対的赤派」で、しかも重くてクセのあるやつが好きなのですが、今年はちょっと気持ちに変化が生じてきてもいます。

というのも、こう暑いと好みの「重くてクセのある赤ワイン」はちっとも爽快じゃないんですよね。だから先日、いつもは買わない白の飲みやすいやつを1本買ってきたのですが、その飲み心地次第では、夏場限定で白も飲むことになるかもしれません。

ところで、こんなことばっかり考えている僕ですが、思い出すのはもう5年ほど前の話です。

健康診断のあと、「特定保健指導」というやつを受けたんですよ。これがどういうものかについては、パンフレットに書かれていた以下の文章をご確認ください。

検診の結果、生活習慣病のリスクがある方には、リスクに応じてレベルが分けられ「特定保健指導」が行われます。保健師や管理栄養士などの専門家から、生活改善のための支援を受けられるので、対象となった方は必ず受けましょう。

つまり、「生活習慣病のリスクがある方」と認定されてしまったわけだな。そんなわけで当時、保健師の人からアドバイスを受けたことがあるのです。

印象的だったのは、同世代か、あるいはちょっと年下くらいの保健師さんのアドバイスの仕方でした。そういう人って、飲酒そのものを全否定しそうじゃないですか。

でもその女性は「私は泡盛が好きで」、などと聞いてもいないことを話してくるのです。つまりは酒好きとしての立場から、「やっていいこと」と「避けるべきこと」をわかりやすく解説してくれたんですね。

頭ごなしに否定されるよりも、そういうアプローチのほうが記憶には強く残ることになりますから、それは正しいやり方だなと感じました。果たして、あの人がそこまで考えていたかどうかはわからないけれど。

でも、だからこそ強く響き、5年経ったいまでもはっきり覚えていることがあります。

「基本的にはなにをお飲みになってもかまいませんが、“ストロング系酎ハイ”と言われているものだけは避けてください。おいしいじゃないですか、ああいうのって。でもウォッカがベースになっていて、場合によってはいろんなアルコールを混ぜてあるので、すごくよくないんですよ。危険です」

たしかに飲みやすくておいしいし、僕も以前はしばしば飲んでいました。ふらっと入ったコンビニで簡単に買えますから、飲み会の帰りに買って帰ったりもしていました。

どんだけ飲むんだよって話ですが、つまりはそこまで身近なアルコール飲料だったわけです。でも、同じようなことを感じている人はたくさんいるはず。事実、ビールの出荷量が低迷するなかにあって、唯一右肩上がりで売れているのがストロング系酎ハイだという話も聞いたことがあります。

しかし、そんなに危険な飲料だという認識は、少なくとも特定保健指導を受けた5年前の時点では持っていなかったのです。

でも言われてみると、なるほど気になるところはあったのでした。ストロング系酎ハイについて、同じようなことを言う人が多いことに気づいたのです。

「すぐ酔えるから、コスパがいい」

僕は、「その酒が強いかどうか」ということがあまり気にならないタイプ(つまり鈍感)で、しかも「すぐ酔える」かどうかに重きを置いていなかったのですが、そこに魅力を感じてストロング系酎ハイを愛飲している人は意外に多かったのです。

でも、そんな事実と「ウォッカベースで混ぜ物たっぷりなので危険」という保健師さんの言葉は、残念ながら結びついてしまいます。

「ウォッカベース=すぐ酔える」

という図式が成り立ってしまうということ。だから驚いて原材料を調べてみた結果、それは本当の話でした(って、保健師が嘘をつくわけもないんですけど)。

キリン 氷結®ストロング シチリア産レモン:アルコール分:9%、原材料:レモン果汁、ウォッカ、酸味料、香料、甘味料(アセスルファムK)

サントリー マイナス196℃ストロングゼロ<DRY>:アルコール分:9%、原材料:レモン、グレープフルーツ、ライム、ウォッカ、スピリッツ、香料、酸味料、炭酸ガス含有

アサヒ もぎたてまるごと搾りレモン:アルコール分:9%、原材料:ウオッカ、レモン果汁、オリーブ果実エキス、マルトデキストリン、酸味料、香料、ビタミンC、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)

サッポロ 超男梅サワー:アルコール分:9%、原材料:梅、梅干エキス、スピリッツ、糖類、酸味料、香料、果実色素、ビタミンC、カラメル色素、甘味料(スクラロース)

なるほど、たしかに「超男梅サワー」以外は、すべてウォッカベースですね。「ストロングゼロ」に至っては、ウォッカとスピリッツを混ぜています。しかも、どの商品も香料や甘味料、酸味料などががっちり入ってます。

ここで違和感を覚えたのは、「ストロング系酎ハイ」という名称です。そもそも「酎ハイ」とは、「焼酎ハイボール」の略称だからです。焼酎の老舗メーカーである宝酒造の「タカラ焼酎ハイボール倶楽部」というサイトには、このような解説が掲載されています。

戦後まもない昭和20年代。東京の墨田区・葛飾区を中心とする下町の大衆酒場の店主らにより「焼酎ハイボール」は産声をあげたといわれています。
当時まだ飲みにくかった焼酎を少しでも飲みやすくしようと工夫したところから生まれたそのレシピは、店それぞれのもので門外不出。
“ウィスキー・ジンなどをソーダ水で薄めた飲料”である「ハイボール」から、焼酎をソーダ水などで薄めた飲料「焼酎ハイボール」と呼び、その略称が「チューハイ」になったといわれています。

これ、最後の部分がちょっとわかりにくいんですが、つまり、「“ウィスキー・ジンなどをソーダ水で薄めた飲料”を『ハイボール』と読んだことにならって、焼酎をソーダ水などで薄めた飲料を『焼酎ハイボール』と呼び、その略称が『チューハイ』になった」ということ。

だとすると、原材料にウォッカやスピリッツを使用し、焼酎が加えられていない商品を「酎ハイ」と呼ぶことはおかしいということになります。

単なる推測にすぎませんが、「ウォッカやスピリッツ、添加物をガンガン入れたヤバいアルコール飲料」という実態を少しでも見えにくくするため、あえて「酎ハイ」と謳っていると考えることもできるのではないでしょうか?

しかも、「ストロング系酎ハイ」の矛盾は他にもあります。「ウォッカやスピリッツ、添加物をガンガン使用」していることについてはスペックの部分でサラリと触れているだけなのですが(そりゃまあそうでしょうけどね)、その一方で「プリン体ゼロ」「糖分ゼロ」という部分だけを強く押し出していること。

蒸留酒なのですからそれは事実だと思いますが、表示の仕方としてバランスが悪いことは否めません。しかも低価格となると、「安くて健康的で、しかもすぐ酔える」という誤った情報が刷り込まれたとしても不思議はないと思うのです。

端的にいえば、「売れるから(多少ヤバくても)売る」という流れができあがっているわけですが、これはいろんな意味でよくない気がします。

売れればなんでもいいわけではないし、むしろ、危険なものは避けるべき。でも、目先の利益を追求するから、「ストロング系酎ハイ」がどんどん発売される。

事実、少し前には某メーカーがアルコール度数12%の「超コスパチューハイ」なんてものが発売されたと報道がありました。「コスパ」を言い訳にエスカレートしてどうする?

しかし、この傾向が進めば将来的に、「安いから」「酔えるから」という理由でこれらを飲んでいる層、特に若年層の健康への影響は出てくる気がします。

ですから、そうなる前に、企業側はなにか手を打つべきなのではないのでしょうか? そう感じるのですが、良くも悪くもビジネスである以上、現実的にそれは難しいことでもあるでしょう。

だとしたら、われわれ消費者が意識を変える必要があるかもしれません。

もちろん、買うか買わないかは個人の自由です。でも、「酔えるからという理由で飲み続けていいのか?」とか、「もう少し安全に酔える飲み方はないだろうか?」とか、ちょっとした疑問を抱き、考えてみることも大切ではないかと思うのです。

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著者

印南 敦史

作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。ウェブ媒体「ライフハッカー(日本版)」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。以後、驚異的な読書量を実現する。著書に『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フローリーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)ほか多数。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)

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