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それはきっと必要ない 曇った思考がクリアになる”絞り込む”技術 印南敦

第46回

自動車は必要ない

2018.10.17更新

読了時間

めまぐるしくトレンドが変化する現代。改めて自分に必要なものは何かを見つめなおしてみませんか? 本連載では、作家・書評家の印南敦史さんが、大きなことから小さなことまで、日々の生活で気になった事柄をテーマに「なにが大切で、なにが大切でないか」を考えていきます。
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今回のテーマは、自動車(以下、クルマ)です。実を言うと以前から、「クルマのことはいずれ取り上げる必要があるんだろうな」と思っていたのです。

なにしろ、カーシェアリングもすっかり浸透している時代です。かつてはステイタスであった「クルマを所有する」という価値観は、もはや過去のものになろうとしています。

つまり、クルマを所有することは「必要か?」と問われれば、おそらく「必要ない」のです。今後、その傾向はさらに大きくなっていくことでしょう。しかし、だからこそ常々、この問題を自分のなかでどう処理すべきかと悩んでいたのです。

なぜ、そんなに大ごとのように考えてしまうのか?

簡単な話です。クルマを所有する時代ではないとわかっていつつ、個人的にはクルマが大好きだからです。時代がどう変化しようと、好きなものは好きなので、「もうクルマを持つ必要はありませんよ〜」と単純化することが、なかなか難しいわけです。

僕が免許を持ったのは20代半ばのころのことでした。つまり、ちょっと遅かったのですが、そんなせいもあってか、以後はクルマの魅力にどっぷりハマりました。ですから、すぐに安い中古車を買い、以来ほぼ毎日クルマに乗っていました。

ただし、それも10数年前までの話です。2008年に起きたリーマン・ショックの余波がこちらにも襲ってきて、仕事が激減。収入も減りに減ってしまったため、クルマを手放すしかなくなってしまったのです。

あれから10年が経ち、幸いにもどん底の状態からは抜け出すことができましたが、だからといって「さぁ、また新しいクルマを買おう!」というわけにはいかないのがつらいところ。住宅ローンもあるし、娘の学費もあるからなぁ……。

って、別に愚痴が言いたいわけでもないのですが、つまりは時代の流れとともに、クルマはいつしか縁遠い存在になっていったということ。それだけの話。

だからこの10年は、クルマが必要になったらレンタカーを借りています。しかも数年前からは、メーカー系などの大手レンタカー会社を利用する機会も減っています。というのも、友人に教えてもらった「中古車を利用したレンタカー」を利用することが増えたから。

ガソリンスタンドとフランチャイズ提携して、ちょっと型の古いクルマを低価格で貸してくれるアレです。

初めてその話を聞いたときには、「中古車でしょ」と気乗りしなかった部分もあったのですが、ぶっちゃけ型が古いか新しいかの違いだけ。

「だから、ヘンなこだわりがないんでしたら、絶対に得ですって」

そう言われて「なるほど」と思い、借りてみたのが3年近く前だったかな? たしかに、メーカー系大手が貸してくれる新しめのクルマにくらべれば、少しばかり使用感はあります。ですから最初のうちは、それが不満でもありました。

ところが定期的に利用するようになると、少しずつ、違うことを感じるようになっていったのです。メリットとしては、こんな感じ。

1:きちんと整備してあるので、メンテナンスの手間がかからず、いつもベストなコンディションのクルマに乗れる
2:中古車利用のレンタカーの場合は特に、スタッフと仲よくなれる
3:過度なストレスがかからない

まず、1に関しては言わずもがな。クルマを所有するとしたら、メンテナンスは不可欠です。半年ごとにオイル交換は必要ですし、オイルフィルターも1年に1度くらいは交換しなければなりません。バッテリーは5年もすれば(あるいはもっと短期間で)寿命がくるし、他にもスパークプラグだタイヤだなんだと、交換しなければならない消耗品はいくらでもあります。

クルマを所有したことのある、あるいはしている方ならおわかりだろうと思いますが、こういうことがとても面倒。なにかと手間もお金もかかるわけです。

しかしレンタカーの場合は、それらすべてをやってもらえます。事実、僕が利用しているガソリンスタンドでは、貸している中古レンタカーを常にメンテナンスしています。つまり、クルマは多少古かったとしても、常にベストなコンディションのクルマに乗れるというわけ。それだけのことで、とても気が楽になるのです。使ってみて強く実感しました。

2に関しては、メーカー系などの大手では難しいかもしれません。彼らはサービス業としての緊張感を崩さないので、ある程度の壁があるのは仕方がないのです。まぁ別に、仲よくなることが目的ではないのですからかまわないのですが、中古レンタカーを扱うガソリンスタンドの場合、何度も使っていると顔見知りになり、自然と親しくなっていきます。

たまたま僕が利用している店がよかったのかもしれませんが、みんなフレンドリーなので、利用する際には雑談すら楽しみになっているのです。だから、また利用しようという気持ちになれますし、そうすれば、さらに親しくなれます。最近では特に仲のいいやつと「今度、飲みに行こうか」なんて話もしていて、そういう関係が心地よいのです。

クルマ本体とは別の話ではありますが、こういうオマケがついてくるところも、中古レンタカーのお店の魅力。そして、それが3につながります。中古レンタカーのお店はゆるく、貸してくれるときにも「まぁ、多少の傷がついたとしても、別にかまいません」と声をかけてくれるのです。もちろん中古車だからなのですが、これは大手レンタカー会社にはない魅力だといえます。傷をつけたことはありませんが、「傷がついても別に」と言ってもらえれば、余計なストレスを抱えなくてすむということ。

そんなわけで、気がつけば中古車系のレンタカーは、僕の生活に欠かせないものになっています。デメリットがあるとすれば、人気があるためすぐにクルマが埋まってしまうこと。そこで、そんなときには大手レンタカー会社を使ったりと、フレキシブルに利用しているのです。

ちなみに僕は、別にカーマニアでも走り屋でもありません。メカニックには無知なので、壊れたら自分で修理するなんてことができるはずもなく、ましてや改造にも興味なし。トラブルがあったとしても、修理は工場任せです。

つまり、いじったりすることに惹かれるわけではなく、単純に運転が好きなだけ。「走ればいい」という気持ちでレンタカーを利用してみると、自分がそういう人間であることを改めて実感します。

かつては大きなクルマに憧れていたため、アメリカ製の大型SUV車に乗っていた時期もありました。めちゃめちゃパワーがあったし乗り心地も最高だったのですが、半年に一回はコンピュータ系が故障するので辟易したのも事実。最終的には運転席側のウィンドウがストンと落ちてもとに戻らなくなり、「さすがにこれじゃ乗れないよなぁ」と手放すことにしたのでした。

だいいち、ガソリンはハイオクで、リッター4キロくらいしか走ってくれない大型SUVは、実用性という観点からすれば完全にアウト。あれは完全に趣味のクルマだったなぁと、いま振り返ってみれば思えます。

で、国産中古車数台、アメリカ製小型車、アメリカ製大型SUV、ドイツ製ステーションワゴンと乗り継いできて、現在は中古車レンタカーを利用している立場から客観的に考えてみると、やはり「クルマを所有する必要はない」ということになるのです。コスト、手間、使用頻度などいろいろなことを鑑みると、やはりレンタカーやカーシェアで十分だという結論に達するからです。

僕はまだカーシェアを利用したことはありませんが、そう感じるからこそ、ああいったビジネスが成り立つことも理解できます。

ただし、ここで話を終えることができないのがつらいところでもあるのです。つまり、そういった時代の変化や、それに伴う利便性がどうであれ、「クルマを持ちたい」という気持ちまでは消すことができないということ。

だから、ここまできてもなお、「いつの日か、トヨタのFJクルーザーを手に入れたい」などと夢は見てしまうのです。ここに書いてきたことと大きく矛盾するかもしれませんが、それがクルマ好きの気持ちってやつ。だから、冒頭で触れたような苦悩がついて回るわけです。

FJクルーザーを所有することが、夢のままで終わりませんように。

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著者

印南 敦史

作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。ウェブ媒体「ライフハッカー(日本版)」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。以後、驚異的な読書量を実現する。著書に『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フローリーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)ほか多数。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)

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