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よみものどっとこむ

第14回

なぜ老け顔になるの?

2017.08.15更新

読了時間

【 この連載は… 】 テレビ、雑誌などでお馴染みの「姿勢」の第一人者が、疲れない体をつくる知識とメソッドを徹底紹介。医学的理論に基づいた「全身のつながり」を意識した姿勢改善エクササイズで、腰痛や肩こり、慢性疲労などの不調を劇的に改善します。


 私たちは、人の顔や姿勢から、その人の年齢をなんとなく想像してしまいます。根拠はなくても、髪の色や表情、姿勢などから、なんとなくわかる気がします。でも、実際には、年を聞いてびっくりすることもあります。「え~? 本当はそんなに若かったの?」というときもよくあります。

 実際の年齢よりも老けて見えたり、逆に若く見える人がいるというのはどうしてでしょう。自分自身でも、疲れやすさや息切れ、鏡を見たときの皮膚の「たるみ」や「シワ」を通じて、自らの体の衰えを感じとっていきます。

 そんなとき、若い頃の自分を取り戻したい、いつまでも若々しく美しくありたいというのは誰しもが感じることではないでしょうか? そんな、アンチエイジング(加齢への抵抗)はすべての人の望みでもあります。

 美容産業や医療従事者たちも、皮膚を若く保たせるために様々な手段を提供してきました。そして、私たち自身も多くの方法や手段を求め、高いお金を払ってきました。でも、それは、ほとんどが受け身の方法や手段だったのではないでしょうか?

 もちろん、他人に「してもらう」というのも必要なときもありますが、エステやマッサージなどで、気になる箇所をほぐしてもらっても、それは一時的な改善にしかならず、また元の状態に戻ってしまうことがほとんどです。原因がそこにはないことが多いので、対処療法にしかならないのです。しかも、自分自身で筋肉を動かした方が、1.5倍も血行が良くなるのです。

 「いえいえ、私はちゃんと自分で顔を若返らせるエクササイズをやっていますから、大丈夫ですよ」というあなた。もしかして、あなたのエクササイズはこういったものですか?

○眉上げエクササイズ

 眉をぐっぐっと上に引き上げるエクササイズ。眉は引き上げても、たるみに関連する顔の筋肉を刺激していないので、リフトアップ効果はありません。それどころか、猫背であごを突き出した悪い姿勢でこの動きを行うと、顔の表面を引き伸ばして額のシワを深くしてしまいます。

○ほうれい線消しストレッチ

 ほうれい線に沿って皮膚を引っ張るストレッチ。ほうれい線ができる原因となる筋肉のたるみを強調する動きなので、このように引っ張ると、かえってシワが深く刻まれてしまうことに。皮膚はデリケートで、刺激に反応しやすいので、間違った刺激を習慣にすると、それだけでシワができる原因になるので気をつけて。

○舌だしエクササイズ

 舌を前に出すエクササイズ。これも、猫背であごを突き出した悪い姿勢で行ってしまうと、あごの皮膚がさらに引き伸ばされてしまいます。あごのたるみが加速し、首のシワも深くなるので、避けたほうがよい動きです。

 これらは顔のたるみリセットに効果はないものばかりです。

 正しい方法というのは、医学的な知識に基づくものであり、素人が雑誌やテレビで紹介している体操は間違いだらけです。

 まずは、なぜそこが「たるんだのか」、その元々の原因を知ることが大切なのです。それは、老化現象だけでは解決できない要素が何重にも重なり合っているのです。

 特に「不良姿勢」は「老け顔」を生んでしまいます。

 人は年を重ねるにつれ、顔だけでなく、首、胸、二の腕、おなかなどにも、たるみが目立ってきます。皮膚の張りが無くなり、重力に負けて垂れ下がってきたように感じます。

 たるみチェック表で、まずは鏡の前で顔のたるみをチェックしてみましょう。

目元 目尻が昔よりも下がってきた 目の下のくぼみが目立つ 目尻の周りにシワがある 目を大きく見開こうとすると、額にばかりシワができる まぶたが下垂して、目が小さく見える 口元 頬の一番外に出っ張る部分が、頬骨と下あごを結ぶ線の真ん中より下にある 唇の左右の口角が唇の中心よりも下がっている 笑ったときに口角が上がりにくい ほうれい線がくっきりと目立つ 口角の周りに細かなシワがある あごまわり 真横から見ると、あごが身体よりも前に出ている あごのラインの輪郭が丸くてぼんやりする あごを引くと二重あごになる 首のシワが目立つ うなずくときにのどにむかってあごを引けない

 いくつあてはまりましたか? 目もと、口もと、あごまわりで、それぞれ2つ以上チェックがついた人は要注意です。多ければ多いほど、たるみが進行しています。

 次に生活習慣をチェックしてみましょう。

姿勢 浅く腰掛けて背もたれによりかかる「仙骨座り」を、ついやってしまう テレビを観たり、ごはんを食べたりするときに、背中を丸めて前屈みになりやすい 背中が丸くなってきた バストが下がってきた 気がつくと口がポカンと半開きになっている くせ ほおづえをつく 歯ぎしりをする みけんにシワを寄せる 眉を持ち上げる 物を食べるときに、片側だけでかむ 日常生活 運動はあまりしない 座っての作業(パソコンなど)が多い 肩や首がこる 人と会話する機会が少ない 大口を開けて笑ったり、しゃべったりしない 硬い物はあまり食べない 日焼けをする機会が多い 就寝時間が夜中を過ぎる 入浴よりもシャワーで済ませることがほとんどだ なにかとストレスが多い

 実は生活習慣も顔のたるみに影響しているのです。姿勢とくせで2つ以上、日常生活で4つ以上チェックがついた人は要注意です。

 たるみの原因にもいろいろありますが、4大原因は以下のとおりです。

  1. (1)加齢による皮膚の衰え
  2. (2)不良姿勢(下の写真)
  3. (3)筋膜のよじれ
  4. (4)筋肉のバランス不良

 皮膚は、体重の16%を占め、畳1畳ぐらいの面積があります。通常、肌と呼んでいる皮膚は一番表面の表皮と、すぐ下の真皮の部分です。

 表皮はさらに角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4つの層に分かれています。人の目に触れるのは角質層ですから、肌のきれいな人とは、角質層の状態がいい人ということになります。

 角質層の状態を良好に保つには、新陳代謝が活発でなければなりません。表皮細胞は通常約4週間かけて角化し、やがてケラチンになり、最後にふけや垢としてはがれていきます。この代謝サイクルは年齢とともに長くなり、表皮の層も薄くなっていきます。

 肌の老化、くすみや小じわは、新陳代謝が悪くなってターンオーバーの周期が長くなり、古い細胞が長く表皮にとどまることによって起こります。

 皮膚中の「コラーゲン」量は、加齢に伴って、35歳をピークに年齢と共に低下します。特にコラーゲンは皮膚の真皮の約70%を占めているので、コラーゲンが減少すると、組織の弾力性が失われ、肌にシワやたるみができてしまいます。目尻や口元などの深いシワ(老け顔)もコラーゲンの減少が原因です。

 コラーゲンは線維芽細胞というところで作られますが、古くなり劣化したものは酵素によって分解されます。しかし、この代謝が35歳以降は低下し、古いコラーゲンが居座ることにもなります。つまり、代謝スピードが遅くなって分解できなかった古いコラーゲンが真皮層に残ってしまうのです。コラーゲンなどの線維組織は古くなると硬くなってしまう性質があるため、古いコラーゲンが増えると皮膚に弾力や柔軟性が無くなってシワやたるみができやすくなります。

 若い間は、コラーゲンが劣化しても、正常な新コラーゲンと入れ替わる代謝がスムーズに行われます。しかし、35歳以降は劣化したコラーゲンが処理しきれずに残り、結果的に正常な新コラーゲンの割合が減ってしまいます。

 コラーゲンの入れ替えには、古くなったコラーゲンが一掃されたうえで、新たに産生されたコラーゲンと置き換わる必要がありますが、年齢とともにこの両方が衰えてしまうのです。つまり、作られる量が減る一方で、古いコラーゲンは居座ったままの状態にもなってしまいます。

 代謝が悪くなったコラーゲンはそのまま長期間体内にとどまり、その間に紫外線を浴びたり、活性酸素などの攻撃を受けたりして変性してしまいます。するとコラーゲンは、サビついたスプリングのようになり、弾力性を失い硬くなります。コラーゲンが硬くなると分解されづらくなり、ますます代謝のスピードが落ち、さらに新しいコラーゲンが作られなくなるという悪循環を引き起こすことになるのです。

 さらに、肌の「エラスチン」量も、30歳を過ぎると低下してきます。

 全体量としてコラーゲンは減少し、さらにエラスチンの減少も合わさって、コラーゲンとエラスチンとのバランスもが崩れ、線維同士のネットワークが減少してしまいます。

 結果として、残念ながら、肌の弾力やハリが失われたり、たるみやシワができたり、関節が動きにくくなったりするのです。

 コラーゲンとエラスチンの生成や代謝が低下すると、肌に酸素や栄養が行き渡らなくなり、みずみずしさも失われてしまいます。さらには、老廃物が排出されにくくなるので、肌に負担もかかります。

 これらの加齢による皮膚の衰えに拍車をかけるのが、「不良姿勢」です。特に、猫背。しかも頭が体の真上に乗らず、前に出て、あごも上がる。これらの姿勢が顔に影響を与えるのです。

頭が体の前に出る ストレートネック 猫背 あごが突き出る 肩が前に出る

 正しい姿勢であれば、顔が下に引っ張らせることもなくなり、顔自体が様々な方向に自由に動けます。でも不良姿勢があると、顔の筋肉は重力に引かれて老けて見えてくるのです。

 猫背があると、顔全体の皮膚に「下方向に引っ張る力」が加わり、モダイオラス(車軸点)が下がることでたるんでいくのです。猫背姿勢では、あごから首にかけての皮膚も不自然に引き伸ばされるので、あごを引いたときに首のシワがくっきり。第一印象で老けて見られやすくなってしまうのです。

 つまり、前後の筋肉、左右の筋肉のバランスが狂ってきてしまいます。そして、筋膜が自由に動けなくなります。筋膜のコラーゲンとエラスチンは、基質という半流動状のゾル状の透明な液体の中にあります。毛細血管も基質の中に存在します。細胞が活動するためには、酸素と栄養とが絶えず補給されなければなりませんし、老廃物などの不用物はすみやかに排出されなければなりません。これらの働きは毛細血管によって行われます。したがって、基質の老化は、直接、細胞の活動に重大な影響を与えることになります。

 外傷や運動不足、長期間にわたる不良姿勢などは、コラーゲンのねじれによって、基質に最終的に脱水を生じさせて、ゲル状(ゼラチン状)に硬くしてしまいます。コラーゲンとエラスチンが高密度化し、基質をゲル状にかためてしまう。これが筋膜の異常なのです。

 筋膜は筋肉以上に広い範囲に異常を生じさせます。この理由として、筋膜は頭部から足先に至るまで全身を鞘状あるいは筒状に包み込み、かつ表層から深層にいたるまで連続した組織であることを理解する必要があります。ある部分の筋膜の制限は他の部分にも影響を与え、異常な運動パターンの原因にもなります。つまりは筋肉の表面に筋膜というセーターを着ているようなものです。セーターの一部分によじれが生じると、そのよじれは他にも波及します。

 結果的に筋膜がよじれたまま癒着が進むにつれて、個々の筋肉の活動まで妨げられることにもなります。また、筋膜がねじれたりすると、そこを通っている血管、リンパ、神経なども影響を受け、結果として、むくみや感覚異常がでることすらあるのです。

 筋膜がよじれると筋肉がうまく使えなくなり、一部の筋肉にばかり負担がかかると、そこに関係する筋膜の動きも悪くなってしまうのです。

 前かがみの姿勢をとることが多かったり、いつもパソコンばかり使っていたり、ほおづえをつくくせがあったり、物を食べるときにテーブルに顔を近づけて食べるくせがあったり、テレビ見るときや携帯を使うときに猫背になっていたり、座っているときにどちらかの足ばかりを組むくせがあったり……。

 そうなると、ふだんの姿勢の悪さなどで筋肉のバランスが崩れ、縮んで短くなった筋肉は硬くなり柔軟性がなくなり、正常の長さよりも伸びてしまった筋肉は、まるで伸びたゴムのようになり、力を発揮しづらくなって筋力が低下してしまいます。

 正しい姿勢で、バランスの取れた効率よい筋肉の使い方をすることが、たるみやシワの防止にもつながります。

 人は、楽な姿勢や生活に慣れたり、年だからとあきらめると運動をしなくなります。運動をしないと、老化にともなって筋肉量が減少して筋が萎えて皮膚のたるみもでてきます。

 逆に、運動により筋線維は肥厚し、加齢にともなう筋量の減少がとまるか、あるいは一次的にでも筋量の増加をきたします。若い人ならなおさら運動は必要です。偏った使い方ではなく、正しい姿勢で正しく筋肉を使うことで、バランスよいからだ作りをすることが、たるみやシワを減らすことにもつながります。

 これらの不良姿勢を改善するためには、「第5回 猫背は万病の元」、「第6回 巻き込み肩」の回を参考にしてください。

 姿勢を正すことで、顔の筋肉が綺麗に使えるようになり、表情が明るくなり、若返ることにつながります。

 姿勢を治しつつ、老け顔を解消する方法について次回説明しましょう。

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著者

竹井 仁

首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授。医学博士、理学療法士、OMT。教育機関で学生教育を実践するかたわら、病院と整形外科クリニックにおいて臨床も実践。各種講習会も全国で展開。専門は運動学・神経筋骨関節系理学療法・徒手療法。解剖学にて医学博士取得。「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」「林修の今でしょ!講座」など多数のメディアに出演。著書多数。 

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