第113回
277〜278話
2021.09.02更新
「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孟子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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2‐7 耕作をする者(庶民)の収入
【現代語訳】
〈前項から続いて孟子は言った〉。「耕作をする者(庶民)の収入は、農夫一人で百畝の田である。百畝の田の世話をするといっても、実際の収入は人のはたらきや地質、田の世話などで差が生じる。上農夫は、九人の家族を養うことができ、上の次の農夫は八人を養い、中農夫は七人を養い、中の次の農夫は六人を養い、下農夫は五人を養うことができる。庶民出身の役人は、農夫に五段階あるように、俸禄に五通りの差をつけることができる」。
【読み下し文】
耕(たがや)す者(もの)の獲(う)る所(ところ)は、一夫(いっぷ)百畝(ひゃっぽ)なり。百畝(ひゃっぽ)の糞(ふん)(※)、上農夫(じょうのうふ)は九人(きゅうにん)を食(やしな)い、上(じょう)の次(つぎ)は八人(はちにん)を食(やしな)い、中(ちゅう)は七人(しちにん)を食(やしな)い、中(ちゅう)の次(つぎ)は六人(ろくにん)を食(やしな)い、下(げ)は五人(ごにん)を食(やしな)う。庶人(しょじん)の官(かん)に在(あ)る者(もの)は、其(そ)の禄(ろく)是(これ)を以(もっ)て差(さ)と為(な)す。
(※)百畝の糞……百畝の田の世話をする。「糞」は、ここでは、肥料をやることから、かんがい、除草など、土地の世話をすることを意味する。
【原文】
耕者之所獲、一夫百畝、百畝之糞、上農夫食九人、上次食八人、中食七人、中次食六人、下食五人、庶人在官者其祿以是爲差。
3‐1 友は、その人の徳をもって友とする
【現代語訳】
万章が問うて言った。「友と交わる道を教えてもらえませんか」。孟子は答えた。「自分が年上であること、身分が高いこと、兄弟に立派な人がいることなどを自慢し、かさにきたりしてはならない。しかし、友なのである(こうすることが友と交わる道なのである)。友は、その人の徳をもって友とするものである。だから自慢したり、かさにきたりしてはならないのだ。(昔、魯の賢人の)孟献子は、兵車百乗を持つ大夫の家柄であった。そして五人の友がいた。楽正裘と牧仲と、あとの三人は名を忘れてしまった。孟献子はこの五人を友として交わったが、自分の家柄を忘れて交わった。また、この五人も孟献子の家柄は眼中になかった。もしこの五人が、孟献子の家柄を気にしていたなら、孟献子も彼らを友としなかったであろう」。
【読み下し文】
万章(ばんしょう)問(と)うて曰(いわ)く、敢(あえ)て友(とも)を問(と)う。孟子(もうし)曰(いわ)く、長(ちょう)を挟(さしはさ)まず、貴(き)を挟(さしはさ)まず、兄弟(けいてい)を挟(さしはさ)まず、而(しか)して友(とも)たり。友(とも)なる者(もの)は其(そ)の徳(とく)を友(とも)とするなり。以(もっ)て挟(さしはさ)むこと有(あ)るべからざるなり。孟献子(もうけんし)は百乗(ひゃくじょう)の家(いえ)(※)なり。友(とも)五人(ごにん)有(あ)り。楽正裘(がくせいきゅう)・牧仲(ぼくちゅう)、其(そ)の三人(さんにん)は則(すなわ)ち予(われ)之(これ)を忘(わす)れたり。献子(けんし)の此(こ)の五人(ごにん)の者(もの)と友(とも)たるや、献子(けんし)の家(いえ)を無(な)しとする者(もの)なり。此(こ)の五人(ごにん)の者(もの)も亦(また)献子(けんし)の家(いえ)を有(あ)りとせば、則(すなわ)ち之(これ)と友(とも)たらず(※)。
(※)百乗の家……兵車百乗を持っている家柄(梁恵王(上)第一章二参照)。諸侯の大夫の家柄。
(※)之と友たらず……孟献子も彼らを友としなかった。以上のように解するのが通説だが、これに対し、この五人の者が、孟献子の家柄を気にするようなら、孟献子を友としなかったとする説や孟献子が家柄を誇りとし鼻にかけるようなら、孟献子を友としなかったとする説もある。
【原文】
萬章問曰、敢問友、孟子曰、不挾長、不挾貴、不挾兄弟、而友、友也者友其德也、不可以有挾也、孟獻子百乘之家也、有友五人焉、樂正裘・牧仲、其三人則予忘之矣、獻子之與此五人者友也、無獻子之家者也、此五人者亦有獻子之家、則不與之友矣。
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