第1回
フクとタラの出会い
2016.08.04更新
【 この連載は… 】 ブログやFacebookなどのSNSで人気の「柴犬フクと猫のタラ。」が、本になりました。2匹ののんびりな毎日を、四季のうつろいとともに切り取りました。今回は本の中から、2匹の出会いについてのページをご紹介します。
3年前のある日、いつものようにフクとお散歩から帰ってくると、駐車場の車の下で、チョロチョロッと、なにやら小さな生き物が動いているのが見えました。フクもすぐさま気がついて、「なんだなんだ?」と、車の下に鼻先を突っ込んだ瞬間、ぴょこんぴょこん! と仔猫が2匹飛び出してきたのです「はっ! 猫っ!」と驚く私とフクを見て、仔猫たちはその何倍も驚いた様子で「逃げろ~!」と、一目散にどこかへ走って行ってしまいました。それが、タラとの出会いです。
私は、2匹を保護しようと決め、名前をつけて見守ることにしました。いつも先に顔を出してくる、やんちゃな茶トラの子を「ちくわ」。怖がりなキジシロの子は「タラ」。お魚のタラの切り身のような色合いなのと、サザエさんのタラちゃんのかわいらしさから、そう名づけ「ちくわちゃ~ん、タラちゃ~ん、ごはんおいとくよー」と見守る日々。しかし、2匹はなついてくれる気配はなく、触れることすらできなくて……。
そのまま、2カ月近くが経っていたある日。ごはんを持って外へ出ると、おなかがすいていたのか、ちくわがチョコチョコ……と自分から近づいてきて、私の足にスリ~っとしてくれたのです。「うわぁ! お出迎えにきてくれたのぉ? 嬉しいなぁ~! ありがとう!」あぁよかった! これでやっと2匹をうちの子にできる。そう喜んでいた矢先、わんぱくなちくわは、大きな道路へ出てしまい、突然、虹の橋を渡ってしまったのです。
いつも、ちくわのうしろに隠れてばかりだったタラ。頼りになる兄弟を失い、さぞかし不安だったことでしょう。そんなことがあって、やっとタラを我が家に迎え、フクとタラはひとつ屋根の下、暮らしはじめることに。
今となっては、まあまあ仲よしなふたりですが、なんせ気の強いじゃじゃ犬フクと、猫一倍臆病なタラのこと。はじめのうちは、毎日がドタバタの嵐。「あの子、なんなのーっ!」と、フクはひたすらタラを追い回し、追われるタラはあっちへ登りこっちに隠れ。磁石の同じ極同士をくっつけようとすると、反発しあってヒューッと勢いよく離れていきますよね? ふたりはまさにそれでした。そんな様子を見ながら「あぁ、もしやこの子たち、永遠に無理なのかしら」と頭を抱える日々だったのです。
けれども、1ヶ月が過ぎ、半年が過ぎ。少しずつ、本当に少しずつ、ドタバタの嵐は収束していきました。お互いに、S極とS極、N極とN極を突き出さなければ、案外平和に過ごせることに気がついたのかもしれません。
そうやって、薄皮を剥がすように距離を縮めていくふたりの様子は、なんとも微笑ましく、たまらなく愛しいものでした。
そんな、何てことない日常のひとコマに、お散歩でフクと見ている身近な自然の風景をプラスして、1冊の本にまとめました。ちょっとひと息入れたい時、お菓子を食べたりコーヒーを淹れたりするように、この本をパラパラッと開いて、お気に入りのページで心をゆるめていただけたら嬉しいです。
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