第2回
「下品すぎてがっかり」な妖怪図鑑:【大風呂敷】【シタガラゴンボコ】
2021.07.07更新
「妖怪は怖い」だけじゃない! 古くから語り継がれてきた妖怪たちの「弱いところ」「人間臭いところ」「ダメなところ」を楽しく学べる本『がっかり妖怪大図鑑』刊行を記念して、全5回にわたってゆかいで楽しい妖怪を紹介します。
「目次」はこちら
妖怪には、エッチで下品なヤツらが少なくありません。
趣味なのか、あるいは人間がいやがるのが楽しいのか、とにかくヒドくてがっかりです。
第3章「下品すぎてがっかり」より、2体を紹介します。
必殺技は金玉くるみ!
【大風呂敷】
イラスト:しげおか秀満
山にかこまれた香川県まんのう町の琴南地区では、昔は山で炭焼きの仕事をする人が少なくありませんでした。山小屋で何日も寝泊まりをして、作業をするのです。
そんな炭焼き小屋で、一人で夜を過ごしていると、ふらりと変な男がやってくることがありました。それが大風呂敷という妖怪なのです。
はじめはおとなしく火に当たっているのですが、そのうちあぐらをかいた股ぐらから金玉を出して、火にあぶりはじめます。あぶっては広げをくりかえすたびに、金玉の袋はどんどん広がって、大きな風呂敷のようになります。
そうやって広げた金玉袋に人間をくるんでおそうのが、大風呂敷の必殺技なのでした。
これに出会った人は、火のついた木や炭を金玉袋に投げつけて、退散させることが多かったようです。
同じような妖怪は、徳島県三好市池田町に、金玉広げという名前で伝わります。
どちらも正体については語られていませんが、金玉の袋を自由に広げるというとくちょうから、狸が化けている可能性が高そうです。
【がっかりポイント】
金玉袋を武器にする下品さにがっかり!
【データ】
出没地域:香川県仲多度郡まんのう町琴南地区
出現時代:昭和のはじめごろまで?
参考資料:『琴南町誌』
メモ:琴南地区には、蛇が狒々猿という妖怪に化け、金玉の袋を広げて人をおそおうとする話もあります。
エッチなおさわり妖怪
【シタガラゴンボコ】
イラスト:しげおか秀満
岩手県二戸市の白鳥川に、岩谷橋という橋があります。江戸時代のはじめごろには、橋の近くにシタガラゴンボコという妖怪が出現したそうで、こんな伝説があります。
ある夜、与三郎という武士が、ウワサの化け物を退治しようと、夜の橋で待ち伏せをしていました。
ところが、与三郎はとちゅうでおしっこがしたくなり、がまんできずに、川に向かってしはじめたのです。
すると、とつぜん暗がりから手が出てきて、与三郎の大事な部分をまさぐりはじめるではありませんか!
さすがにびっくりした与三郎ですが、すぐに気を取り直すと、刀でエッチなことをしてくる手首を切り落としました。
何者かは悲鳴をあげて逃げていったのですが……。
その日の夜中、手首を切られた化け物は、老婆に化けて与三郎の家をたずねました。
そして、「手を返してくれれば、礼として切り傷に効く妙薬の製法を教えよう」というので、与三郎は手を返してやったのでした。
与三郎は薬を売り、大金持ちになったということです。
話は以上ですが、この変態的なイタズラをする化け物こそ、シタガラゴンボコなのです。正体は古狸で、名前のシタガラゴンボコは、“下河原のろくでなし”という意味があるそうですよ。
【がっかりポイント】
エッチな妖怪にがっかり!
【データ】
出没地域:岩手県二戸市福岡岩谷橋
出現時代:江戸時代
参考資料:『岩手の伝説』
メモ:切られた手と引き換えに狸が薬の製法を教える話は、江戸時代の『宿直草』という本にものっています。
【単行本予約受付中!】
この本を購入する
感想を書く