第1回
雲龍院での出会いと庭園デザイナーの未来
2018.10.25更新
『しかけに感動する「京都名庭園」』の著者・烏賀陽百合さんと、華道家・書芸家・写真家でもある清水南龍さんによるトークイベントをもとに再構成したものです。日本庭園に携わるおふたりが語る室外の世界をお楽しみください。
(このトークイベントは、2018年8月28日に銀座蔦屋書店にて行われました。)
烏賀陽 お久しぶりです。最後にお会いしたのは、私が雲龍院にお客さまをご案内したときですか? 普通に清水さんが雲龍院いらっしゃって「あ!」って感じでしたね。ちょくちょく会っているようで、なかなか会えない方なので(笑)。
清水 ハハハ。偶然会うことも多いですからね。今日はみなさんよろしくお願いします。京都でお花をやっていると紹介されると、堅苦しい人間をイメージされると思いますけど、そんなことはありませんからね。今日は普段着のお話をしたいと思いますので、気楽に聞いてください。
烏賀陽 最初に清水さんとお会いしたのは、白龍園ですよね?
清水 そう。あのときはじめて会ったわけだけど、私と目指しているところが同じじゃないかと感じたんですよ。
烏賀陽 え? そうだったんですか?
清水 私は日頃から、庭師やフラワーデザイナーの方と会う機会が多いんだけど、この人はどこを見ているのだろうということを考えるんです。烏賀陽さんと最初に会ったときも烏賀陽さんの視点に興味があってずっとそこを見ていました。あのとき烏賀陽さんは私に対して「好きなようにやってはるんですね」って言ってくれたでしょ?
烏賀陽 はい。それはずっと感じていることです。はじめて雲龍院に伺ったときにいちばんそう感じました。アポイントも取らずに私がふらっと雲龍院を訪れたら、ちょうど清水さんが生けておられるときで。
清水 ああ、私が寝てたとき?
烏賀陽 そうです。びっくりしました。清水さんが生けている花の前でごろ~んと寝てらしたんですよ(笑)。かと思ったら急に起き上がって花を見て、またごろ~んとされる。それを見て自由な方だと確信しました。
清水 なんか、すいませんね。
烏賀陽 私がそれまでに思っていた生け花の世界とは逸脱していて、びっくりしちゃいました(笑)。
清水 逸脱してるのは確かです。
烏賀陽 あとで伺ったらアイデアがわかないときは無理やりださないんだと。一旦、寝転がる、寝る。そうして降りてきたときにしゃかりきにやると。自分の本能に真っ直ぐってところも共感を覚えました。私もやらないときはだらだらしていますから。
清水 似ているやろ(笑)。烏賀陽さんが作庭をしたいのであれば、他のことでも表現してみるといいと思いますよ。
烏賀陽 庭のデザイン以外ということですか?
清水 そうや。才能っていうのはそうやって出していくんだと思うんです。ピカソが活躍したキュビズムの時代にジョルジュ・ブラックって画家がいたんですけど、彼は分解と再構成をどんどんやった。今って写真がどんどん進化しているから、絵とかスケッチが必要じゃなくなっているんですよね。リアリズムがいらなくなっているんです。そうすると逆をやるしかなくなってきますから、抽象的なものを書いたり、立体物を作ったり。そういうことが世界中で起こっていく。ジョルジュ・ブラックは絵の世界でそれをやったキュビズムの創始者ひとりですけど、烏賀陽さんもそうやったらええと思うんです。
烏賀陽 立体ですか?
清水 これからはアーティストが灯籠を作ったり、宝飾を作ったりする時代がくると思うんです。だから烏賀陽さんも宝飾のデザインとかしたらどうですか?
烏賀陽 宝飾? 灯籠とか作りますか? 大丈夫ですか(笑)。
清水 いいと思いますよ。お花ってこういうもんだ、灯籠ってこういうもんだって固定概念は大事ですけど、それに縛られることはないんですから。才能ってそうやって出していくんだと思うんですよ。ひとつのコンテンツから横に広がっていくことはもっともっとあってもいいと思いますよ。私はもうそれなりの年になっちゃったけど、烏賀陽さんはまだ若いからね。
烏賀陽 がんばります(笑)。
(第2回につづく)
関連書籍
『しかけに感動する「京都名庭園」』 著者:烏賀陽 百合
誠文堂新光社 定価:1,600円(+税)
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