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よみものどっとこむ

小説『麻布ハレー』の作者・松久淳さんと田中渉さん、そして、小説にインスパイアされて誕生したCDアルバム『麻布ハレー』で「旅するすい星」という曲を歌った、歌手・MILLEAさんに、小説の監修をつとめた相馬充先生とともに東京・三鷹の国立天文台を巡りながら、作品について語ってもらいました。

2017.03.06更新

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ph03『麻布ハレー』の著者、松久淳さん(左)と田中渉さん(右)、小説にインスパイアされたCDアルバム『麻布ハレー』で「旅するすい星」を歌った、歌手・MILLEAさん(中央)。小説とCDアルバムの発売を記念して、特別対談が実現しました。

「麻布の天文台」と「ハレー彗星」


松久 今日は、監修の相馬 充先生に東京・三鷹市の国立天文台をご案内していただきましたが、前身の東京天文台はもともと東京の麻布にあったんですよね。

 ふとしたことで「昔、麻布に天文台があった」ということを知って強く興味を持ったんです。「あんな都会の真ん中に天文台があったんだ!」と、すごく驚いて。でも麻布に天文台があった、という事実が、素敵だなと思ったんですよ。

 東京天文台が麻布にあったのは明治の末期。調べてみると、1910年にハレー彗星が回帰したのと同時代だった、ということがわかって、麻布に天文台があった時代にハレー彗星が地球に近づいたとき、当時の人たちはどんな感じだったんだろう? と空想が膨らみ、小説のアイデアが生まれたんです。ところで、MILLEAさんはハレー彗星は知ってます? 1986年の回帰のときは、日本でも大きな話題になったんだけど…。


MILLEA もちろんハレー彗星の名前は知っていましたけど、そういうブームがあったというのは知らなかったです。そんなに大きな話題になったんですか?


田中 ブームになったとき、僕らは高校生から大学生くらい。そのときは一般の人たちもみんな騒いでいて。僕らの世代にとって「宇宙」って、熱心な天文ファンではない人たちにとってもすごく身近だったんだよね。当時、宇宙を舞台にした映画やアニメ作品がたくさん出てきたころで、みんな「宇宙への強い興味」を当然のように持っていた。僕らの世代はハレー彗星のブームをそういう流れの中で迎えたんです。


ph04東京・三鷹の国立天文台に残る、『麻布ハレー』の時代をイメージさせる観測施設を、小説の監修者・相馬充先生(右端)に案内していただきました。

松久 そのハレー彗星が、麻布の天文台があったころに地球に近づいた、ということを知って、一気に小説のプロットができあがっていったんです。それから、やはり同時代なのですが、柳田國男が書いた「遠野物語」という、岩手の民話を集めた作品が、大ブームになったんですね。これを組み合わせたらどうか、というアイデアが浮かんだ。伝承のような民話的なものと、彗星の観測という当時の最先端の科学が同時代にブームとなった。「これは何か理由があるんじゃないか?」って考えたら、作品に広がりが生まれていったんです。


田中 科学者のトップのアプローチと、文学者のトップのアプローチと、両者とも突き詰めていくと、何か重なる部分があるのかもしれない、と思えて。小説の背景となる“麻布に天文台があった”時代にそんなロマンを感じたんですよね。


『麻布ハレー』の人物にはモデルがいる?


松久 これはちょっとネタバレなんですが、実は今回、小説の登場人物たちには、モデルがいるんです。

作品を構想する段階で、実際の天文台の人々や文学関係者を調べていたんですけど、なにしろ当時の資料がない。だから登場人物たちは、ほとんど僕の空想で作り上げています。ですが、知っている人が読めば、「あ、これはあの人のことかな?」ということがわかるようなエピソードを入れています。


MILLEA 麻布の天文台という舞台だけじゃなくて、登場人物にもモデルがいたんですね! 私はまったく気づかず読んでいたので、今お話しを伺ってとても驚きました。でも、そうした予備知識がなくても、ストーリーを追いながら『麻布ハレー』の世界に自然と入っていけました。もう一度読んで「モデル探し」してみますね!


田中 モデル探しは『麻布ハレー』のもう一つの読み方。連載で読んでいた方にも、もう一度楽しんでもらえれば嬉しいです。


人々の想いと、再び巡り来る彗星


松久 当時の麻布天文台や、そこに携わった人々を調べて、そうやって調べたことを直接、小説で表現しているわけではないのですが、当時をよく知ることで、そこから生き生きとしたイメージを生み出すことができたと思っています。MILLEAさんも歌を歌うときに、こういうことってありませんか?


MILLEA 私はシンガーなので、作っていただいた歌を歌うわけですが、曲の歌詞やその意味をよく考えますね。自分の中で咀嚼してイメージを作り上げていきます。今回、『麻布ハレー』というCDアルバムの中で、「旅するすい星」という曲を歌わせていただきました。『麻布ハレー』という小説は彗星の話ではあるけれど、恋人たちの想いや、恩師への想いなどが、76年で回帰する彗星に乗るようにして、次の時代に伝わっていく、というところに私は感動しました。この歌は「君とならまた歩き出せる」という歌詞から始まるんですが、自分の人生をかえるほどの出会いがあって、でもそれは失われるものでもある、そういう尊さや切なさを表現したいなと思いました。そこから、曲を聴いた人がまた新たなものを感じてもらえたらいいですね。


田中 ハレー彗星の周期は76年。この小説はさまざまな時代の人物たちが登場しますが、彼らは、次に再びやってくる彗星を見ることはできない。人々の想いと、それを超越するかのような彗星には永遠性がありますが、この小説を読んだ方が、そこから、新たに思い思いの何かを感じてもらえたら、作者としてはうれしいですね。


(2017年2月 国立天文台 三鷹キャンパスにて)


ph08_00写真:井川俊彦

松久 淳+田中 渉(まつひさあつし+たなかわたる)

コンビ作家として、映画化もされた『天国の本屋』(新潮文庫)で2000年にデビュー。小説『麻布ハレー』を月刊天文ガイドにて2015年11月号~2017年1月号に連載。『麻布ハレー』は月刊天文ガイドで初めての連載小説となった。


MILLEA(ミレア)

北海道札幌市出身のヴォーカリスト。2015年「虹色のアーチ」でデビュー。2016年にファーストミニアルバム『星の詩』をリリース。収録曲の「星の詩」は長野県阿智村の「天空の楽園 日本一の星空ナイトツアー」の2016テーマソングとなり、イメージアーティストとして活動。星空を表現したその音楽が大きな話題をよんでいる。


*本対談記事は、雑誌「月刊天文ガイド」2017年4月号に掲載されたものの再掲です。
月刊天文ガイドHP http://www.seibundo-shinkosha.net/tenmon/


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CDアルバム『麻布ハレー』
単行本と同時発売!


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小説『麻布ハレー』にインスパイアされた3人の女性アーティストによる音楽作品。MILLEA「旅するすい星」、mayo(岡本真夜)「ほうき星」、Ayasa「麻布ハレー」の3曲のオリジナルソングを収録したCDアルバム。


■CDアルバム『麻布ハレー』

1,389円+税 発売中

MUCD-1379 発売:株式会社ドリーミュージック

■「麻布ハレー」公式ページ
http://dreamusic.co.jp/sp/azabu_halley/


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CDアルバム『麻布ハレー』
発売記念ライブ開催!


楽曲を提供したMILLEA、mayo、Ayasa、3人のアーティストによるインストアライブが開催。『麻布ハレー』の世界をイメージした音楽をライブで体験できます。


■日時 : 3月8日(水) OPEN 18時/START 18時30分

■場所 : 銀座山野楽器本店 7F イベントスペース JamSpot(東京都中央区銀座4-5-6)

■出演者 : Ayasa、mayo(岡本真夜)、MILLEA

■問い合わせ : 株式会社ドリーミュージック 電話03-5775-7480

■ライブ公式ページ : http://dreamusic.co.jp/artist/millea/27520.html


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小説『麻布ハレー』は、全国書店もしくはインターネット書店にてご購入ください。


ph01『麻布ハレー』
松久淳+田中渉 著
四六版 224ページ 本体1,300円+税
誠文堂新光社刊 発売中

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※コメントは承認制となっておりますので、反映されるまでに時間がかかります。

著者 松久淳+田中渉

コンビ作家として『天国の本屋』(新潮文庫)で2000年デビュー。著作に、映画化もされた『天国の本屋恋火』(竹内結子主演/新潮文庫)、『ラブコメ』(香里奈主演/小学館文庫)、他に『白いお別れ』(幻冬舎文庫)、『ウォーターマン』(講談社)などがある。近刊は『かみつき』(扶桑社)。

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