第5回
「予言する妖怪にがっかり」な妖怪図鑑:【アマビエ】【件】
2021.07.28更新
「妖怪は怖い」だけじゃない! 古くから語り継がれてきた妖怪たちの「弱いところ」「人間臭いところ」「ダメなところ」を楽しく学べる本『がっかり妖怪大図鑑』刊行を記念して、全5回にわたってゆかいで楽しい妖怪を紹介します。
「目次」はこちら
アマビエをはじめ、日本には病気、災害、農作物のできなどを予言する妖怪がいます。
調べてみると、みんなにたりよったりで、がっかりします。
第8章「予言する妖怪にがっかり」より、2体を紹介します。
新型コロナで有名に
【アマビエ】
イラスト:今井美保
アマビエは、江戸時代、熊本の海に出現して、ある役人に病気の流行と農作物のできを予言して伝えると、「病気が流行ったら、自分の姿を描き写したものを見せればよい」といって海に消えた─などと、瓦版に書かれています。
瓦版は、江戸時代の新聞のようなものですが、風変わりな情報でたくさん売ろうとしたのか、フェイクニュースが多くありました。
このアマビエのニュースも、例外ではないようです。
三本足の猿のような姿をしたアマビコは、江戸時代に刷り物などで知られた予言獣で、漢字では尼彦とか天彦と書かれました。
熊本の海にあらわれて、病気の流行と農作物の豊作を予言し、自分の姿を描き写して見せれば、病気よけになるといって消えたそうです。
アマビエとそっくりな話ですが、それもそのはず、アマビエはアマビコの“コ”の字をまちがえたものという説があるのでした。
明治時代の熊本の海に出現し、夜の町を歩きまわったというアリエは、元武士だった男に、自分は海の生物の親分だと身分を明かします。そして、今後はコロリに似た病気が流行るので、そうなったら自分の絵姿を朝と夕方におがめば病気にならずにすむ─と告げて、海に帰っていったそうです。
アマビコと同じように、アリエの絵姿は病気よけのお守りになるとウワサされ、広く信じられていたようです。
【がっかりポイント】
姿の写しを見ても病気が治るとはいっていなくてがっかり!
【データ】
出没地域:熊本県とされる
出現時代:江戸時代とされる
参考資料:『日本の幻獣図譜』
メモ:フェイクニュースとは、テレビや新聞、またはSNSなどで発信される、うそのニュースのことです。
予言獣の代表といえば!
【件(くだん)】
イラスト:今井美保
流行病や戦争など、社会に大きなわざわいがおきそうになると、どこかの牛小屋で人の顔をした牛が生まれます。これが予言獣の件です。
生まれてすぐに、「今年は豊作だが、悪い病気が流行るだろう」などと、人の言葉で予言をして、そのまま死んでしまいます。
件の予言はぜったいにはずれないといわれ、どこかで件が生まれると、その予言の内容はウワサで広まりました。
江戸時代には、件が描かれた瓦版が、病気よけのお札の代わりにもなったそうです。
【がっかりポイント】
生まれてもすぐに死んでがっかり!
【データ】
出没地域:西日本各地
出現時代:江戸〜昭和時代
参考資料:『民間伝承』2巻6号
メモ:件は戦争前にあらわれることが多く、昭和時代には太平洋戦争に関係した予言をしたそうです。
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