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庭園デザイナーから教わる日本庭園の楽しみ方 烏賀陽百合✕清水南龍

第2回

一回、生けたら絶対に変えない。

2018.11.01更新

読了時間

『しかけに感動する「京都名庭園」』の著者・烏賀陽百合さんと、華道家・書芸家・写真家でもある清水南龍さんによるトークイベントをもとに再構成したものです。日本庭園に携わるおふたりが語る室外の世界をお楽しみください。
(このトークイベントは、2018年8月28日に銀座蔦屋書店にて行われました。)

烏賀陽 清水さんは「ぼーっ」とするのもいいとおっしゃられていますよね? 花を生けるときにはとても大切なことだと。

清水 寝転んだり、「ぼーっ」とするのも大切。根を詰めていて閃くはずがないんですよ。

烏賀陽 なるほど。雲龍院は、もともと歴代の皇族の方に愛された寺院で、建物のなかから庭園を楽しめる場所が多いのも特徴ですよね。写経道場でもあるので、いろいろな方が集まる「サロン」でもありますよね?

清水 僕が最初に雲龍院に伺ったのは30年位前かな。その頃は今ほど写経で有名じゃなかったから、まだのどかでね、みなさん写経が終わったら、疲れて寝てはりましたよ。

烏賀陽 龍華殿でですか?

清水 寝てはるというか、横たわるというかね。だから、烏賀陽さんが来ているときも僕は全然気づかなかった。なぜなら目の前にある花をどう生けるかしか考えていなかったから。華道は、花器の幅に花を生けていくわけですが、いちばん位が高いと言われているのは、竹の幅で生けるというものです。立っているだけなのに、そのなかに微妙な線を出す。これを実存の花といいますが、僕は天の邪鬼なので、そこに虚構の花を入れていくわけです。そのなかの空間の部分だけを反転させて、生けてるんです。

烏賀陽 へえ。

清水 極端に言うと、この幅のなかだけで生けなきゃいけないんです。空間だけを取り出して生けようとするから疲れちゃうんですよ。

烏賀陽 あれは疲れて寝てしまっていたわけじゃなくて……ずっと考えられていたんですね。

清水 ちゃんと理由があるんです。1センチ、5ミリ、1ミリ、それくらいこだわっていく。ずっと考えている。本当に疲れます。

烏賀陽 降りてくるのを待つわけですね。

清水 住職さんが「これでいいか?」と言うから、「ええことない。また明日、来ますわ」と言って、一杯の花を生けるのに3日かかったこともありますよ。生けた花は3本だけですけど、とことんニュートラルにしたときにフッと見えるときがくる。そのときが来るまでは絶対に生けません。

烏賀陽 トランス状態に入るということですね。天才の域にいくわけですね。

清水 そんなに煽ててもコーヒーくらしか奢りませんよ(笑)。

烏賀陽 庭師さんもそういうことがあって、石を据えるときってみなさん、数ミリの世界で石を据えていくんですよね。本当に凄い方は一回組んだら絶対に変えないそうです。

清水 私もそうですよ。一回、生けたら絶対に変えない。

烏賀陽 自分のなかで練り上がっているものが頭のなかにあって、それを最後の最後にアウトプットするだけなんですね。

清水 抜きたいなと思うくらいなら、据えないほうがいいんですよ。私らだったら、生けないほうがいい。花にも失礼です。花を切るということは「陰と陽」で言うと、「陰」にするわけやから。生かさないと失礼だし、いずれそれは自分自身に返ってきます。今日は、“室礼の生けかえ”をしましたけど、出来上がったものは何も捨てずに雲龍院に持っていきますよ。

烏賀陽 え? これをそのまま雲龍院に持っていかれるんですか?

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清水 もちろんそうです。だって可哀相でしょ? 持ってきたものは全部、持って帰ります。捨てません。残したら華道家の母から辞めろっていわれますね(笑)。

烏賀陽 清水さんは、室礼で使う素材はすべてご自身で山に入られて採集されるんですよね? いつもとてもいい素材を手に入れられている。山に入られるときは水を浴びて、身を清められてからじゃないと山には入らないということを伺って、だからこそ素晴らしい素材と出会えるんだなと思いました。

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清水 滑って転んで、川に落ちてずぶ濡れになりますけどね(笑)。だけど、そんなんどうでもいいんですよ。花や木っ端のほうから、私を呼ぶわけ。出会えるわけです。もう、私としては「ありがとう」ですよね。見つけたときは光って見えていますから! 感謝の気持ちだけは一生通していきたいですよ。ただし、家に帰ってきたら全身、切り傷だらけでびっくりしますけどね(笑)。

烏賀陽 それだけ集中してらっしゃるんですね。

(第3回につづく)

関連書籍

『しかけに感動する「京都名庭園」』 著者:烏賀陽 百合
誠文堂新光社 定価:1,600円(+税)

garden_talk_book
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著者

烏賀陽百合✕ 清水南龍

烏賀陽百合(うがや・ゆり):京都市生まれ。庭園デザイナー。同志社大学文学部日本文化史卒業。兵庫県立淡路景観園芸学校、園芸本課程卒業、カナダ・ナイアガラ園芸学校で3年間学ぶ。イギリスの王立キューガーデンでインターンを経験。2017年にはNYのグランドセントラル駅構内にて石庭を出現させ、プロデュースした。著書に、『一度は行ってみたい 京都絶景庭園』(光文社)がある。/清水南龍(しみず・なんりゅう):愛知県生まれ。雲龍院・客殿挿花担当の室礼師。室町時代の文化大名「佐々木道誉の婆娑羅のエネルギー」を研究テーマとし、奇想天外な発想で華のある人生を楽しんでいる。華道家であり、書芸家・写真家でもある。雲の上に棲むが如く。ライフスタイル「雲棲」を提唱している。

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