第46回
儉欲第四十六
2019.02.08更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
「もくじ」はこちら
儉欲第四十六
46 「足るを知る」の足るは、常に足る
【現代語訳】
天下で「道」にのっとった政治が行われていれば戦争はなく、馬も軍用に使われることなく畑の耕作に従事する。天下に「道」がなくなり乱れたときには、軍馬は、町の郊外で戦争に用いられる。
欲望をたくましくするのが最大の罪である。なぜこうした禍いが起きるのかというと、それは足るを知らない(欲深い)心があるためであり、なぜこうした過ちを犯すのかというと、それはあくなき欲深さが起きているためである。
こうして、足るを知るの足るは、常に足るであることを忘れてはならない(何かを得てそれぞれに満足することでなく、現実を愛し、いつも永遠に満足していることなのである)。
【読み下し文】
天下(てんか)に道(みち)あれば、走馬(そうば)(※)を却(しりぞ)けて以(もっ)て糞(ふん)(※)す。天下(てんか)に道(みち)無(な)ければ、戎馬(じゅうば)(※)郊(こう)に生(しょう)ず(※)。
罪(つみ)は欲(ほっ)すべきより大(だい)なるは莫(な)く。禍(わざわ)いは足(た)るを知(し)らざるより大(だい)は莫(な)く、咎(とが)は得(う)るを欲(ほっ)するより大(だい)なるは莫(な)し。
故(ゆえ)に足(た)るを知(し)る(※)の足(た)るは、常(つね)に足(た)る。
- (※)走馬……軍馬、伝令馬のこと。
- (※)糞……耕作のこと。「播(たねまき)」の借字。
- (※)戎馬……軍馬のこと。
- (※)郊に生ず……「郊」は郊外のこと。「生ず」を「仔馬を産む」と解する説もあるが、本書では起きること、すなわち戦争に用いられることと解した。
- (※)足るを知る……辯德第三十三、立戒第四十四参照。
【原文】
儉欲第四十六
天下有道、却走馬以糞。天下無道、戎馬生於郊。
罪莫大於可欲、禍莫大於不知足、咎莫大於欲得。
故知足之足、常足矣。
【単行本好評発売中!】
この本を購入する
感想を書く