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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第57回

淳風第五十七

2019.02.26更新

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日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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淳風第五十七

57 便利な物や技術が多く出てくると、世のなかに変なことがよく起きる

【現代語訳】

国を治めるには正しいやり方で行い、戦争をするときには奇策で行うことが肝心だが、天下を取るためには(世の中をうまく治めるためには)、何も余計なことをせず、あるがままにすることが肝心である。私が何によってそのことを知っているかというとそれは次の通りである。
天下(世の中)に禁令が多くなればなるほど、人々はますます貧しくなる。人々の間に便利な道具が多くなっていくと、国家はいよいよ混乱しておかしいことが起きる。人々の間で技術が進み、多くなればなるほどいよいよ悪事や変なものも登場してくる。法令がいよいよ細かく整備されてくると、盗賊がたくさん増えてくる。だから「道」と一体となっている聖人は言っている。「私が無為にするので(余計なことは何もしないので)、人々は自ずと感化される。私が静かにしているのを好むと、人々は自然と正しくなる。私が何もしなければ、人々は自然と豊かになってくる。私が無欲であれば、人々も自然とまだ手を加えていないあら木のように純朴となる」。

【読み下し文】

正(せい)を以(もっ)て国(くに)を治(おさ)め、奇(き)を以(もっ)て兵(へい)を用(もち)い、無事(むじ)を以(もっ)て天下(てんか)を取(と)る。吾(わ)れ何(なに)を以(もっ)て其(そ)の然(しか)るを知(し)るや、此(こ)れを以(もっ)てなり。
夫(そ)れ天下(てんか)に忌諱(きき)(※)多(おお)くして、民(たみ)弥〻(いよいよ)貧(まず)し。民(たみ)に利器(りき)(※)多(おお)くして、国家(こっか)滋〻(ますます)昏(くら)し(※)。人(ひと)に技巧(ぎこう)多(おお)くして、奇物(きぶつ)(※)滋〻(ますます)起(お)こり、法令(ほうれい)滋〻(ますます)彰(あき)らかにして、盗賊(とうぞく)多(おお)く有(あ)り。故(ゆえ)に聖人(せいじん)は云(い)う、我(わ)れ無為(むい)にして民(たみ)自(おの)ずから化(か)し、我(わ)れ静(せい)を好(この)みて民(たみ)自(おの)ずから正(ただ)しく、我(わ)れ無事(むじ)にして民(たみ)自(おの)ずから富(と)み、我(わ)れ無欲(むよく)にして民(たみ)自(おの)ずから樸(ぼく)なりと。

  • (※)忌諱……禁令のこと。
  • (※)利器……便利な道具、知恵。微明第三十六参照。
  • (※)昏し……暗い。混乱しておかしくない。
  • (※)奇物……奇怪なもの。変なもの。

【原文】

淳風第五十七

以正治國、以奇用兵、以無事取天下。吾何以知其然哉、以此。
夫天下多忌諱、而民彌貧。民多利器、國家滋昏。人多伎巧、奇物滋起。法令滋彰、盜賊多有。故聖人云、我無爲而民自化、我好靜而民自正、我無事而民自富、我無欲而民自樸。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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