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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第67回

三寶第六十七

2019.03.12更新

読了時間

日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
「もくじ」はこちら

三寶第六十七

67 本当に立派な人間は愚か者に見える

【現代語訳】

天下の人々は皆、私のいう「道」を、大きいけれども、愚か者の在り方のように見えるという。そもそも大きいからこそ愚か者に見えるのだ。もし賢く見えているようだったら、とっくの昔にちっぽけな人物になっていたに違いない。
私には三つの宝があって、それをしっかりと保持している。第一は慈愛、第二は節倹、第三は天下の人々の先に立とうとはしない、ということである。
慈愛があるから勇敢であるし、節倹であるから広く施すことができるし、天下の人々の先に立とうとしないから人材の長になる。今、慈愛を捨てて勇敢であろうとし、節倹を捨てて広く施そうとし、人々の後になることを捨てて先に立とうとすれば、死があるのみだ。
そもそも慈愛があるから(人々は信頼し、ついていくから)戦えば勝ち、慈愛を持っているから守っていても(人々は協力し)守りは固い。天もそれを助けようとし、やはり慈愛を持って守ってくれるのだ。

【読み下し文】

天下(てんか)皆(みな)我(わ)が道(みち)(※)を大(だい)にして不肖(ふしょう)(※)に似(に)たりと謂(い)う。夫(そ)れ唯(ただ)大(だい)なり、故(ゆえ)に不肖(ふしょう)に似(に)たり。若(も)し肖(しょう)ならば、久(ひさ)しいかな其(そ)の細(さい)なるや。
我(わ)れに三宝(さんぽう)有(あ)り、持(じ)してこれを保(たも)つ。一(いち)に曰(いわ)く慈(じ)、二(に)に曰(いわ)く倹(けん)、三(さん)に曰(いわ)く敢(あ)えて天下(てんか)の先(さき)と為(な)らず。慈(じ)なるが故(ゆえ)に能(よ)く勇(ゆう)、倹(けん)なる故(ゆえ)に能(よ)く広(ひろ)く、敢(あ)えて天下(てんか)の先(さき)と為(な)らざるが故(ゆえ)に能(よ)く器(き)の長(ちょう)(※)を成(な)す。
今(いま)、慈(じ)を舍(す)てて且(まさ)に勇(ゆう)ならんとし、倹(けん)を舎(す)てて且(まさ)に広(ひろ)からんとし、後(ご)なるを舎(す)てて且(まさ)に先(せん)ならんとすれば、死(し)せん。
夫(そ)れ慈(じ)は、以(もっ)て戦(たたか)えば則(すなわ)ち勝(か)ち、以(もっ)て守(まも)れば則(すなわ)ち固(かた)し。天(てん)将(まさ)にこれを救(すく)わんとし、慈(じ)を以(もっ)てこれを衛(まも)る。

  • (※)我が道……私の「道」、老子の生き方。なお、原文の「我衟」の道をないものとする説もあり、『帛書』にもない。その立場だと「天下皆我れを大なるも」などと読むことになる。
  • (※)不肖……親に似ないこと。そこから愚か者を意味するようになった。
  • (※)器の長……「器」はうつわ、道具の意味からここでは転じて人材の意味。

【原文】

三寶第六十七

天下皆謂、我道大、似不肖。夫唯大、故似不肖。若肖、久矣其細也夫。
我有三寶、持而保之。一曰慈、二曰儉、三曰不敢爲天下先。慈故能勈、儉故能廣、不敢爲天下先、故能成器長。
今舎慈且勈、舍儉且廣、舍後且先、死矣。
夫慈以戰則勝、以守則固。天將救之、以慈衞之。

「目次」はこちら


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術-相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(共に誠文堂新光社)などがある。

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