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第6回

本当に大事なのは「合わない人ともうまくつきあう」力

2020.09.02更新

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  不安になったら、落ち込んだら、「ひとりになる勇気」をもってみよう。友だち関係で悩む中高生に絶対読んでほしい本が誕生!齋藤孝先生が伝授する、一生使える無敵の人間関係術!
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本当に大事なのは「合わない人ともうまくつきあう」力

 

 二段がまえの「友だち力」。「気の合う友だちをつくる」力と、「気の合わない相手ともうまくつきあう」力。
 じつは、より大事なのは「合わない人ともうまくつきあう」力のほうなんです。
 これこそ学校生活のなかで身につけるべき能力です。
 きみたちには、教育を受ける権利があります。
 教育とは、大人になって強く賢く生き抜いていくための力を養うことです。
 授業で習う教科だけが勉強ではありません。
 人とうまくつきあうことのできる力も、「生きる力」として必要になるものです。
 ほかの人といい関係を築き、協力しあったり、助けてもらったりすれば、生きやすくなります。
 そのために、いろいろな人に触れ、いろいろな状況に直面して、人とのつきあい方の練習を重ねていく。
 好きでない人とも、ぶつかりあわず、傷つけあわず、なごやかに交流し、必要なときは協力しあうことができるようにする練習、それができるのが学校です。
 学校は、「人慣れ」の練習場。
 人との距離感や人間関係を勉強するところでもあるのです。
 なぜクラス替えがあるのか。
 環境が変わったときに、どうやって新しい環境になじむか、どうやって新しい友だちをつくっていくか、そういうことの練習をするためです。
 人間関係の機微を経験するための「プチ(小)社会」、学校生活にはそういう意味もあるのです。

 なぜ、ぼくが「だれとでもおだやかな関係を築こう」と強調するのか。
 ぼく自身が若いころ、それで手痛い失敗を経験しているからです。
 ぼくは高校を卒業するまで、友だちにめぐまれ、友だちづきあいで悩むことがありませんでした。
 育った家は、家族が多いうえに、よく人の出入りするにぎやかな環境で、つねにいろいろな人に囲まれていました。
 ところが、大学受験に失敗して浪人することになり、東京でひとり暮らしを始めたところ、環境の激変でノイローゼのようになってしまいました。
 そこで、ちょっとこじらせてしまったんですね。
 大学に入ってからも、きついことを言って人を批判したり、やりこめてしまうようになってしまったんです。
 歯に衣着せず、思ったことをズバズバ言うのが正しいことだと思い込んでいた。
 自分は正直に言っているだけ、悪いことはしていない、むしろ相手に対して誠実な態度をとっているんだと思っていたんです。

 その結果、どうなったか。
 まわりから人が遠ざかっていきました。
 みんなで集まるようなときにも、声をかけてもらえなくなりました。
 孤立を深め、だれからも助けてもらえない時代がつづきました。
 当時のぼくには、相手に不愉快な思いをさせないことが、人づきあいでは非常に大切なマナーだという意識が欠けていました。
 正直な意見でも、相手を傷つけないように、否定しないように配慮できていたらよかったのでしょうが、それができなかった。
 人とうまくつきあう力の欠如のため、痛恨の20代を経験したのです。
 人の気持ちをくみとって、人とおだやかな関係を築くことが人間関係にはなによりも必要です。
 その練習をしておかないと、自分に返ってきて、つらい思いをすることになるのです。

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著者

齋藤 孝

1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞。『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)などベストセラーも多数。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。

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