第7回
いまがすべてじゃない、友だちとは流動的なもの
2020.09.07更新
不安になったら、落ち込んだら、「ひとりになる勇気」をもってみよう。友だち関係で悩む中高生に絶対読んでほしい本が誕生!齋藤孝先生が伝授する、一生使える無敵の人間関係術!
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「また会いたい」「もっと話したい」人になるために
人と人がどうしてつながっていたいと思うか。
人間関係をシンプルに考えると、そのキモになるのは「もっと話したいかどうか」「もっと一緒にいたいと思うかどうか」なんですね。
そのためには、たとえ自分と合わない人とでも、いがみ合わずにつきあえるようにすることがいちばん大事なのです。
とくに、大人になって仕事がらみで出会った人に、初対面で議論をふっかけて相手をやりこめてしまったら、その瞬間に、「はい、さようなら」です。
「この人と一緒に仕事をしよう」とも思ってもらえない、「だれかに紹介してやろう」とも思ってもらえません。
大人になってから求められるコミュニケーション力とは、仲のよい友だちをたくさんつくる能力ではなく、いろいろな人がいるなかで、どんな相手ともうまくつきあっていける能力です。
人とおだやかにつきあっていくという資質は、一生必要とされます。
仕事関係の人とのつきあいも、恋愛関係も、結婚して家族をもつようになるのも、すべて自分以外の他者とのかかわりです。
どんな仕事につき、どういう生き方をするにしても、人とかかわる力は必要になります。
現実社会では、つきあいにくい人は敬遠されます。
友だち関係も同じです。
「また話したい」と思ってもらえることが大事。
そうでないと、次につながらない。
深い話ができるかとか、打ちとけて話せるかというのは、その先のこと。
「また会いたい」「もっと話したい」と思ってもらえないと、関係が進まないのです。
大事なのは、だれとでもおだやかにつきあう力。このことを忘れてはいけません。
きみたちには、早くからそのことをしっかり知っておいてほしい。
友だちとは、素の自分をさらけ出してつきあうのではありません。
「どうしたら、一緒にいたいと思ってもらえるか」を考えて、そういう自分であろうとすることが大切なのです。
いまがすべてじゃない、友だちとは流動的なもの
友だち関係というのは、とても流動的です。
環境や状況が変われば、友だちとの関係も変わります。
「ずっと友だちでいよう」
と言っていても、クラス替えで別々のクラスになったら、いままでと同じようには一緒にいられません。
進学した学校が別々だったら、会う機会も少なくなります。
それぞれの置かれた環境のなかで、新しい友だちができるのが自然なこと。
そのときどきで、友だちは変わっていっていいのです。
ぼく自身振り返ってみると、中学時代はそれほど親しくなかったけれど、大人になってからウマが合い、よく会うようになった友人もいます。
大人になると、どういう仕事をしているか、独身なのか結婚して家族がいるのかといったことも、友だちになりやすさに影響してきます。
中高生の時期は、いまの自分にとってどうなのかということに意識が集中しがちですが、友だち関係というものは、いまがすべてではありません。
ですから、いま、友だちとうまくいかなくてつらい思いをかかえている人も、友だちがなかなかできないと悩んでいる人も、この状態が永遠につづくわけではない、ということを心にとめておいてください。
たとえば、狭い人間関係のなかで意地悪をしたり、仲間はずれにしたりするというケースは中学生がもっとも多く、高校生になるとグッと減ります。
大学生になると、受講科目もそれぞれバラバラですから、つねに同じメンバーで行動するという固着した友だち関係もなくなっていき、いろいろな人に囲まれるようになります。
環境が変わるときは、新たな人間関係を築くチャンスです。
ただ、友だち関係で傷ついた経験をもつ人は、「人づきあいがうまくできない」「また、イヤな思いをすることになるのではないか」という不安が強く、対人関係に自信をもてなくなってしまうことがあります。
その自信のなさが、ネガティブなものを引き寄せて、また同じようなことがくり返されてしまいやすくなります。
だから、人づきあいを自分の弱点にしておかないほうがいいのです。
自分に自信をもてるようにするにはどうしたらいいのか。
ぼくが勧めたいのは、「好きなものにハマる」ことです。
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