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本当の「心の強さ」ってなんだろう?

第1回

はじめに

2021.07.30更新

読了時間

  勉強での失敗、友だちづきあい、コンプレックス、将来への不安・・・。学校では教えてくれない人生の逆境を乗り越える方法を伝授! 本書の刊行を記念して、本文の一部を公開いたします!
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 この本は、『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?』『友だちってなんだろう?』につづく、10代のための「一生役立つ考え方」シリーズ第3弾です。
 今回のテーマは「心の強さ」。
 メンタルを強くするためのものの考え方を、いろいろな角度から解説していきます。

 きみは、心の強さに自信がありますか?
 たとえば、こんな自分にモヤモヤすることはないですか?
「傷つきやすくて、ちょっとしたことですぐへこんでしまう」
「イヤなことがあるとクヨクヨして引きずりやすい」
「失敗するのが怖くて、積極的になれない」
「コンプレックスがあって、自分に自信がもてない」
「人の目や言葉を気にしすぎる」
「何かをやろうと決めても、途中でくじけてしまうことが多い」……

 メンタルの弱い人は、不快なできごとへの対応力が弱いのです。
 不安やストレスなどの「負の感情」に振りまわされているんですね。それだけに疲れますし、生きづらさも感じやすい。
 メンタルを強くするとは、感情に振りまわされなくなること。そういう状況に対処する能力を高めることです。
 傷つかなくていいことに傷つかなくなる。
 悩まなくていいことに悩まなくなる。
 いまよりも自信をもてるようになる。
 だから心がラクになり、楽しく、幸せに過ごせるようになります。

「でも、これは性格の問題だから仕方ない……」
 もしそう思っているとしたら、大きな勘違いです。
 メンタルの弱さは、性格のせいではありません。
 むしろ「自分はこういう性格だから」と決めつけてしまっている姿勢にこそ問題があります。
 メンタルの強さとは、生まれもった資質ではなく、自分で身につけていく「力」です。
 そして、自分を守るための武器でもある。

 人生という荒海を渡っていくために、ぜひとも身につけておきたい能力です。

 強い精神力があることを、よく「鋼のメンタル」と言います。頑丈でとても強そうですよね。
 しかし、ぼくがきみたちに身につけてほしいと考えている心の強さは、「鋼」のようなメンタルではありません。
 たとえるなら「柳のメンタル」
 柳の木、見たことありますか? 細い枝がたれ下がって揺れている姿は全然強そうには見えませんが、柳は台風で強風にあおられても、雪が降り積もっても、折れない。枝が柔軟にしなるので、激しい風にも雪の重さにも耐えられるのです。
 よく張る強靭な根をもっていて、幹が倒れても再びその周辺から芽吹いてくるたくましさもあります。
 しなやかで折れない、打たれ強い、再生力があってたくましい──。
 目指してほしいのは、そんな柳のようなメンタルです。

 ぼくは、心の強さにもっとも必要なものは「へこたれずに再起する力」だと思っています。
 頑としてブレない、失敗もしない、くじけることもない……そこまで強い姿勢は必要ありません。人間なんだから、揺れていいのです。
 弱気になってへこんでもいい。
 激しく落ち込むことがあってもいい。
 迷って、ブレて、間違えて、失敗して、挫折して……、だけどどんなにつまずいても、再び立ち上がる力さえあればいい。
「何度でも立ち直る力」があれば、未来は明るい。
 不快なできごと、困った事態、手痛い挫折、思いがけない逆境……どんなネガティブな状況になっても、柳のようにしなやかに立ち直れるようなメンタルを手に入れる。
 目指すのはそこ。それこそが強い心、折れない心
です。
 そのために何を心がければいいのか、ストレスをため込まないようにするには何をすればいいのか、へこんだ心、傷ついた心をどうリカバーすれば再び力が戻ってくるのか、心を強く保てるようにする方策を具体的に説明していきましょう。

 大ヒットしたマンガ『鬼滅の刃』の主人公、竈門炭治郎が、鬼狩りの剣士のひとりにこんな言葉をかけるシーンがあります。
「一番弱い人が一番可能性を持ってるんだよ」
 自分の弱さに悩み苦しんでいる人ほど、強くなる可能性を秘めているのです。
 本当の「心の強さ」は、自分の弱さを知ったうえでみがかれていきます。
 きみのなかの可能性、見つけて、みがいて、開花させようじゃありませんか!

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著者

齋藤 孝

1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞。『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)などベストセラーも多数。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。

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