第5回
忠臣蔵(上)
2017.10.31更新
歌舞伎を見る前に知っておきたい基礎知識として演目の種類や独特な演出の仕方から、上演頻度の高い人気演目のあらすじと鑑賞ポイントを、マンガでじっくりと解説します。
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※3回に分けて連載します
- 作者
- 竹田出雲(たけだいずも)、三好松洛(みよししょうらく)、並木千柳(なみきせんりゅう)による合作
- 初演
- 人形浄瑠璃で一七四八(寛延元年)八月、大坂・竹本座。歌舞伎では同年十二月、大坂・嵐座。翌年に江戸三座でも上演される。
- 概要
- 義太夫狂言三大名作の一つ。
南北朝時代が舞台の時代物。全十一段だが、二段目・十段目は通し上演でもほとんど上演されない。
四十七士にちなんだ決まり事
幕が開くときの柝(き)を打つ回数は四十七回。タイトルの「仮名手本」は、赤穂の四十七士を「いろは」の四十七文字にたとえている。ちなみに『忠臣蔵』は、忠臣の内蔵助(くらのすけ)の略。
内容は江戸時代!?
一七〇三(元禄十五)年十二月十四日に起こった有名な赤穂浪士の討ち入り事件を、南北朝時代の古典文学作品『太平記(たいへいき)』に移している。
とはいえ幕府に対する建前なので、『太平記』らしいのは鶴岡八幡宮を舞台に設定しているところくらい。話が進むにつれ江戸風俗になっていく。
物語は三つに大別
仇討ち事件を軸に、周辺の人々の人間ドラマを描いているのが特徴。内容は大きく三つに分けられ、大序から四段目は、刀傷事件から塩谷家断絶まで。
五・六段目は討入りに加わることを願う勘平とおかるの悲劇。
七段目から十一段目は大星由良之助を中心に討ち入りを計画・決行するまでの話という構成。
口上人形(こうじょうにんぎょう)※1と大序の人形身(にんぎょうみ)※2
かつては原作が人形浄瑠璃の作品を上演する際、人形浄瑠璃にならって、上演に先立ち太夫連名と役割を披露する口上があった。開幕前の口上人形と、大序の冒頭の人形身がそれにあたる。人形身では、まず人形遣いから命を吹き込まれる前の人形を表す。義太夫が登場人物を紹介する文句を順番に語ると、それに伴い役者も一人ずつ袖をひるがえして順番に人に戻る動きをする。
前半のクライマックス 四段目は途中入場不可
塩谷判官が切腹する厳粛(げんしゅく)な場面。そのため、幕が開いたら観客の途中入場はできないという決まりになっている。
四段目の後に上演される舞踊は 道行(みちゆき)の名作
『落人(おちうど)』(『道行旅路(みちゆきたびじ) の花聟(はなむこ)』)は、歌舞伎では清元の舞踊に改変されたもの。黒紋付き姿の勘平とおかるの美男美女カップルが、富士を背景にした舞台を行く道行は、独立した一幕としても上演される。語り出しが「落人も、見るかや野辺に若草の」と始まることから、『落人』の通称で呼ばれる。
道行とは?
旅する人物の心情を描く舞踊のこと。道行で有名なのが、前出の『落人』。登場人物は勘平とおかるのような恋愛関係にある男女が多いが、親子や主従の場合もある。
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