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第1回

小さいほど家計がラクになる

2016.08.05更新

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【 この連載は… 】 住まいを工夫すると、ライフスタイルが変わる。小さくてもゆとりある暮らしのキーワードは「ミニマムライフ」そして「自由」。時間と共に変化していく空間やモノと長く付き合う、心地よい住まいづくりの方法を紹介します。

■「広いほうが良い」は幻想


 家は広いほうがいい。

 広いほうが、住みやすく、すっきりきれいに片付く。

 家を持つことはステータス。

 家が広ければ、ゆったり暮らせる。

 大きな収納があれば、家がすっきり片付く。


 経済は成長し続けると思われていた時代に育ちました。大企業でも、過去の遺産となりつつある年功序列、終身雇用がまだ存在していた時代。一人暮らしの小さなアパートから、結婚して小さなマンションに移り、子どもができたらより大きな住まい、転校をさけるために、子どもが小学校に上がるまでには家を購入したい。そして最後は願わくば大きな戸建。


 すごろくや人生ゲームのように、年を重ねるにつれて、家もだんだん大きくなるもの、そうした幻想がありました。


 長い将来を見越して、「子どもが増えたら」「子どもが大きくなったら」と考えると、大きな家を希望するのは当然のことかもしれません。住まいを購入するのは、一生涯に何度もない。「大は小を兼ねる」から、小さすぎて後悔しないよう、より大きな家を選ぶことは安心につながると考えられがちです。


 1人目の子どもが小学校に上がる前、我が家もマンションを購入しました。3LDKの90㎡弱の集合住宅。購入時には子どもが1人だった我が家も、子どもが3人になり、少しずつ手狭になってきました。たくさんのモノを、多くの労力で管理することに限界を感じ、モノを少しずつ減らし、暮らしをシンプルにしていきました。不要なものを整理した後では、あれほど手狭だった同じ部屋で、すっきりと余裕を持って暮らすことができました。1部屋は、たまの泊まりの来客時以外は、ほとんど空のまま、使われることはありませんでした。


 我が家の例は特別ではありません。大きい収納には、たいていガラクタが詰め込まれています。ご依頼をいただいて整理のお手伝いに行く家では、1部屋が丸ごと「魔窟」のように、ガラクタ置き場になっている家もかなりの数見かけます。「広ければ広いほど良い」と思っても、その広さを十分に活かしきれない場合が多いのです。



■広さに比例して高くなる住宅購入コスト


 マンションの建て替えに伴い、新しい住まい探しが始まった時、広い家や小さい家、新築や中古、多くの物件を見て回りました。広い家は、販売価格が高いのは当然です。多くの物件を見て回った時、広さ単位で物件価格を計算すると、広さに比例して販売価格も高くなっていました。


 とある物件の2つの部屋。部屋の位置や方角によって、条件は多少異なるものの、ほとんどの場合、単位面積当たりの価格はあまり変わりません。広さによって、価格も正比例します。1㎡でも広ければ、それだけ価格も高くなります。


 日本の新築マンションの平均単位価格は、1㎡あたり75万円。押し入れ1間分の価格は、123万円です。90㎡の物件と、70㎡の物件を選ぶのとでは、その差20㎡分、購入価格が1500万円変わってきます。

戸建の場合も同様です。中には「1㎡当たり○○万円」という単位当たりの価格を設定しているメーカーもあります。広ければ広いほど、何もかも高くつくわけです。


 中古物件では、部屋の状態によって価格が変わってくるものの、やはり広い部屋のほうが高いのは同じ。住居の購入時は、別途不動産業者に支払う手数料や、不動産取得税もかかり、それらも物件価格に比例します。


■成長や成功のシナリオを前提に、マキシマムなローンを組むのは危険


 資金的に十分余裕があれば別ですが、何十年ものローンを組む場合、果たしてそれだけの無理な設計をしてまで高い買い物をする必要があるのか、考えてみる必要があります。


 不動産業者、マンションのデベロッパーなど、家の売り手側は、「これぐらいの収入ならこれだけの家が買える」「収入の1/3までならローンが組める」などの営業トークで、買える最大限の住まいを提示してきます。「広ければ広いほどよい」と考えていると、家の売り手に言われるがまま、実は不必要だったり、身の丈以上の高い買い物をしてしまいます。


 ローン完済というゴールまでに、収入の減少、解雇、病気、離婚、災害など、マイナスのハプニングがあれば、最大限のローンを組んでいる場合は、支払い計画が破綻する可能性もゼロではありません。


■大きい家は維持費も高くつく


 広いとより多くのお金が必要になるのは、購入時だけではありません。家を維持するには、他にもコストがかかります。住居を購入すると、毎年払う固定資産税があります。集合住宅でも、毎月支払う管理費や修繕積立金は、所有する広さに応じて価格が設定されます。同じマンションでも、広い部屋に住んでいる人が、より多く管理費等を負担します。賃貸の場合は、賃料という形でダイレクトに金額に反映されます。


 家計の出費には、毎月、一定額の支払いが生じる「固定費」と、購入量によって価格が変わる「変動費」があります。「固定費」には、家賃や管理費、修繕積立金などの家の維持にかかる費用のほか、通信費、車の維持費、水道光熱費、保険などが含まれます。「変動費」は、食費や衣服費、交際費、娯楽費などです。


 節約というと、食費を○○万円に抑える、レジャーを控える、などと思われがちですが、食費や娯楽費のような変動費を無理に節約しようとすると、ストレスが生じ、反動で「ストレス買い」などをしてしまい、効果的に節約できないと言われています。一方、固定費を見直すと、節約効果が長続きするため、効果的だとされています。


 ラクに家計の負担を軽くする要所は、固定費の節約。そして、固定費のなかでも、大きな割合を占める住居費を低く抑えることが、無理をせずラクに家計の負担を軽くするキモとなります。


 小さな部屋を選べば、家賃や管理費、修繕積立金などの家の維持にかかる住居費を低く抑えることができるだけでなく、光熱費も安くなる可能性が高くなります。部屋の容積が小さくなれば、その空気の量の冷暖房にかかる電気代やガス代が安くなります。これら光熱費も、固定費に含まれます。光熱費を抑えるために、寒すぎる部屋や、暑すぎる部屋で冷暖房を我慢するなど、小技を駆使するより、小さい部屋で効率的に冷暖房するほうが、快適だし、特別な技も必要とせず、無理が生じません。


 家は、一度購入したら終わりではありません。ライフステージの変化に伴い、家もリフォームすることが、快適に住まい続けるポイントです。家族構成に変化がなくても、家の外装や内装は劣化するので、一定の期間で壁紙の張り替えや畳の入れ替え、設備のリニューアルは必須になります。リフォームを請け負う工務店では、リフォームの材料の見積もりを単位あたりの価格に設定しています。広ければ広いほど、何もかも高くつくわけです。


■メインテナンスにもコストがかかる


 小さい暮らしは家事の労力も減らせるというのも、利点です。

我が家は、小さい部屋に引っ越す前、1部屋はたまの来客時以外にはほとんど使われることがありませんでした。部屋は使っていなくても、埃は溜まります。使われていない部屋の掃除をするのは、ほんとうに苦痛でした。


 使っていない空き部屋や、ガラクタ置き場を管理、メインテナンスする家事労力を、コストとして換算してみましょう。コンパクトな住まいのほうが、ムダなコストを削減し、少ない労力で家じゅうをきれいにすることが可能です。


■買い物の失敗が減る


 欲しいものがあっても、ちょっと待って。

 それは、必要なものですか?

 それは、あなたの生活を豊かにしてくれるものですか?

 それは、今持っているなにかで代用できませんか?

 それは、長く愛着を持って使えるものですか?

 それは、不要になったとき、どこにいきますか?


 家のガラクタを整理し、必要で、大切にしているものとだけの生活。不用品を整理する過程では、それが暮らしに必要か、不必要かの選択を繰り返します。それによって、自分や家族は、何を大切にして生活しているのかが見えてきます。自分軸での要不要の選択眼が養われます。「欲しい」「安い」「かわいい」「便利そう」「皆が持っているから」。今まで、なんとなく安易に買っていたものは、あっと言う間にガラクタになっていたことに気がつきます。


 ガラクタが家に1つもない、快適な生活に慣れてくると、家のなかに再度ガラクタをもちこみたくなくなります。なんとなくした買い物は、買い物欲を満たさないばかりか、長い目でみれば大きな出費となります。必要で愛着のある大切なものとだけの暮らしは、不用品を家に入れない習慣が身につき、ムダな出費が減ります。


■さらに、買い物のロスがなくなる


 大きすぎ、持ちすぎは、所持品の全量を把握するのが困難になります。家にあるものと、同じものをまた買ってしまうことも。不用品がない暮らしは、収納にゆとりが生まれて、ストックが把握しやすくなります。服や日用品、食材のムダ買い、買いすぎを減らすことができます。

必要最小限の機能的なツールに囲まれたキッチンは、調理がはかどります。「忙しいから」「面倒だから」というネガティブな理由で、仕方なくする外食の回数を減らせます。


 足りないところばかりに目がいくと、いつも心のどこかで欠乏感が残るもの。その欠乏感が、「足りない」「ストックを切らしてしまう」「今買わねば」「より多く持たねば」という買い物の衝動を掻き立てます。より少なく、小さく暮らす心がけをすることで、今あるもので十分、というゆとりが生まれてきます。


「貧乏な人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」ウルグアイの「世界一貧しい大統領」と言われる、ホセ・ムヒカ氏の言葉です。


■「買えない」と「買わない」は違う


 我が家では、徹底的にモノを減らしたことによって、それほど広い住居が不要になりました。


「結局、広い家を買えなかったんでしょ」とお思いになる方もいるでしょう。半分当たっていて、半分当たっていません。


 生涯得られる収入は限られています。その、限られた収入を、なにに優先順位をつけてお金を使いたいか、自分軸で選んだら、「今買う家は小さくていい」という選択になりました。


・自由に使える限られたお金を、100パーセント住宅購入に費やす。

・住宅購入には、70パーセントに抑え、30パーセントは将来ライフスタイルが変わった時や老朽化のためのリフォームや住み替えのために。

・住宅購入には、60パーセントに抑え、10パーセントは将来のリフォームのために、残り30パーセントは追加の教育資金として。

・住宅は購入せず、賃貸で自由な場所に住まう。


 いろいろな優先順位があります。


お金の使い方の「正解」はありません。でも、結果的に本人が満足すれば、それでいいのではないでしょうか。逆に、結果的に本人の満足度が低い場合は、「不正解」なのかもしれません。

・ローンが重すぎて、必要な子どもの教育費が十分に出せない。

・ローン返済のために、ムリに仕事をしなければならない。

・ローン返済のため、勤務時間が長すぎて家の手入れが行き届かなくなり、家が心地よい空間でなくなる。

・返済の見通しが甘すぎて、結局家を手放すことになる。

・売値より、ローン残高が多すぎて、売りたくても売れない。


■なぜ、広い家が「必要」なのか


「家でヨガ教室を開きたい」「家の中でテニスラケットの素振りをしたい」 。そういう理由があるなら、広くする理由があります。でも、そのような「広くなくてはならない」理由がなければ、「広ければ広いほどよい」というのは、思いこみの場合もあります。

 広さが「欲しい」だけで、「必要」ではないのかもしれません。家は、大きい買い物ですから、「欲しい」だけで「必要」なかった他のもののように、安易に失敗できません。
「広ければ広いほど良い」は、何を基準に「良い」のか、考え直してみても良いかもしれません。



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著者

尾崎 友吏子

ブログ「cozy‐nest小さく整う暮らし」主宰。にほんブログ村「シンプルライフ」「ミニマリスト」「ワーキングマザー育児」カテゴリーで上位人気を誇る。1970年生まれ。ニューヨーク州立大卒。不動産業などを経て、現在は建設業に従事。二級建築士、インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー1級。著書に『3人子持ち働く母のモノを減らして家事や家計をラクにする方法』(KADOKAWA)がある。

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