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よみものどっとこむ

第2回

家を小さくすると変わる、家族との過ごし方

2016.08.25更新

読了時間

■成熟する家庭内の「プライバシー」観念


 住宅供給が逼迫していた戦後の民家。特に都市部では小屋のような住宅が主流でした。そもそも、個室という概念がなく、男女別はあっても、同じ一部屋に雑魚寝する家がほとんどでした。


 1960年代、住都公団が都市近郊に、5階建の鉄筋コンクリート型の団地を大規模に開発。初期の典型的な2DKの間取りは、寝食分離を叶えました。今まで茶の間にちゃぶ台を置き、寝る時はちゃぶ台を折りたたんで布団を敷いていたのが、その煩わしさがなくなりました。ダイニングキッチンは、台所から食事をする部屋までお皿を上げ下げする主婦の仕事を大幅に軽減。モダンな生活に憧れを抱く中流家庭の応募が殺到したといわれます。


 団地の間取りは1970年代、さらに進化し、3DKが主流になりました。寝食分離から、個室の登場です。夫婦と子ども2人という家族構成を想定すると、リビング(茶の間)以外に、夫婦の寝室、子ども部屋を分けることができます。経済成長とともに、間取りはさらに進化し、現在の3LDK=典型的なファミリーの間取りが出来上がりました。LDKという共有スペース以外に、夫婦の寝室と、子ども1人ずつに個室が与えられます。


 西欧的な個のプライバシーの重要性を住宅に取り入れた結果、子どもが個室にこもったり、家庭内でのコミュニケーションの断絶が問題視されるケースも目立ってきました。近年では、家族の気配がわかるよう、あえて個室を設けなかったり、ゆるやかに個室を仕切る間取りも良い、という意見もみかけます。


 ただ、忘れてはならないのは、プライバシーも家庭内の団欒と同じぐらい尊重されるべき、ということです。子どもが小さいうちは、個室を設けない、壁は作らない間取りでも、子どもが成長して、思春期になったら、成長に応じた個室があったほうが望ましい場合もあります。


 プライバシーを保ちつつ、コミュニケーションが成り立つのが、最も望ましい形です。どちらかに偏りすぎても住みにくくなり、また子どもの成長によって変化できる住まいが理想的です。


■小さな家と個人のプライバシー


 家が小さければ、それだけ個人のプライバシーが守りにくくなります。会話や聞いている音楽、リビングのテレビの音も聞こえやすくなります。キッチンで料理をしている夕食のにおいが個室に漂うこともあるかもしれません。そういう家は、個人の自由だけを尊重するなら、とても住みにくい家なのかもしれません。


 子どもの個室は、思春期にはあったほうが望ましいけれど、要塞のように堅固にする必要はなく、ゆるやかに子どもを見守れる程度に気配がわかるほうが良いと考えます。家族は小さな社会の縮図、と捉えるなら、家でのちょっとした不自由さが、子どもの他者を配慮する心を養うこともありえます。音楽やテレビを楽しむ時は、家族を気にして小さな音にしたり、ヘッドホンをしたり。配慮して家の中の他者(家族)を気遣う心は、他者と交流する中で、自然と養われます。


 LDKや水回りのスペースが共有しやすく、家族のコミュニケーションが取りやすい家の例はいくつかあります。必然的に顔を合わすような、個室がリビングアクセス型の間取りだったり、少し居心地の悪い子ども部屋だったり。


 その一例として、小さい家というのもあります。


■小さな家と家族の距離


 小さな家の物理的な狭さは、家族の距離を、より近くしてくれます。

家庭は社会の最小単位と考えるなら、そして、子どもの教育の1つの目的が「自立」とするなら、小さな家で、ある程度のルールがある家は、社会に出てからのルールを自然に学びやすい環境であるともいえます。


■小さな家はモノの管理がラク


小さな家は、家中を最小限の労力でメインテナンスすることが可能です。

家が片付かないのは、収納が少ないせい、家が狭いせい、と考えている人がいます。本当に片付かない理由は、狭さではなく、モノが多すぎるから。収納するスペースが多ければ多いほど、モノがたくさん増えがちになり、管理できないほど物を持ちすぎ、溢れさせてしまいます。


 家が小さいと、管理する場所が少ないから目が届きやすい。一目で在庫管理できると「あれあったかな?」と、買い物の時に迷ったり、無駄買いすることが減ります。


 管理する場所が少なく、モノの置き場所がわかりやすいのは、家族にとっても同じ。家を小さくしてから、「あれどこ?」と、家族から聞かれることが格段に減りました。 聞かれても、収納している箇所が少ないので、説明もしやすい。モノが少なければ、難しい「収納テクニック」を使わなくてもキチンと収まります。


 ほとんど使わないモノを大量に買い込み、使わないモノのために、大きな収納を作り、大きな家に住み、大きな家を買うために、長時間労働する。それが正しいと思われていた「豊かさ」の基準は、時代とともに変化しています。


■小さな家は掃除がラク


 家を小さくすると、格段に掃除がラクになります。

掃除機がけの時間が家の広さと比例するのは、わかりやすい例です。私は、毎朝、リビング、ダイニング、キッチン、洗面所、廊下、クローゼットルーム、寝室に掃除機をかけますが、5分で終わります。


 さっと掃除が終わるので、「すぐ終わるから今やっちゃおう」と、掃除を始めるハードルが下がります。掃除道具は、取り出しやすいところにスタンバイしておくとよいですね。


 簡単に終わる家事なら、家族の協力も得られやすいです。5分で気軽にできるお手伝いなら、子どもたちにも頼みやすい。この夏は、次男の夏休みの毎日のお手伝いに、この5分掃除をお願いしています。


 年末の忙しい時期に時間を捻出し、大掃除でしかできなかったところが、普段から掃除できるようになりました。冷蔵庫の上、キッチンの収納庫の上、窓ガラスなど。1年に1回の大掃除なら、蓄積した汚れを落とすのに強力な洗剤や労力が必要です。でも、毎週なら、さっと水拭きするだけ。


 私は、掃除が嫌いですが、きれいになった部屋は好き。掃除が嫌いな理由は、洗剤で手が荒れたり、ベトベトになった汚れを見ないといけなかったりすることです。なかなか落ちない汚れをこすったりするのが、とくに嫌いだということがわかりました。

水拭きだけできれいになり、ベトベトを見ることがなくなったので、私の掃除嫌いも少しは軽減されたように思います。


■豊かな家時間が増える


 片付いていない、落ち着かない部屋から、逃げるように外出、旅行。帰宅後は、現実に戻り、片付いていない部屋にゲンナリ……。そんな経験はありませんか。


 部屋がキレイだと、家にいる時間が心地よい。家にいるだけで豊かさを感じることができます。カフェでお茶するより、美味しいお菓子を買ってきて、家でゆったりくつろぐ。お代わりも自由です。好きな姿勢で心ゆくまでくつろげます。


 部屋がキレイだと、くつろぐために、旅行をする必要はありません。家が世界中で最もくつろげる場所だからです。旅行から帰宅後、扉を開けて、家族はこう声をあげます。「あ~!家がやっぱりいちばん落ち着く~!」


 部屋がキレイだと、いつでも人を呼ぶことができます。外で会うより、くつろげるし、出費も抑えられます。気取った場所や改まった場所には、乳幼児は連れて行きにくく、落ち着きません。自宅なら、おもちゃもあるし、他のお客さんに気を使うこともなく、ママ同士で子どもを遊ばせながらゆっくりおしゃべりできます。


 部屋がキレイだと、家族の笑顔が増えます。とくに、家事を担っているお母さんのイライラが減ると、家族もハッピーになるのは実証済み。


 部屋をキレイにするのに、雑貨を並べたり、高級な家具を買う必要はありません。掃除で清潔を保ち、余分なものを置かず、片付いているだけでキレイにすることはできます。家具や雑貨を揃えるのは、掃除と片付けができてからです。ただし、家具や雑貨を増やしすぎると、清潔にするための労力が増えることを忘れずに。


 家をキレイに保つということは、自分や家族の暮らしを大切にすることにつながります。そして、小さな家は、より少ない労力で、暮らしを豊かにすることができるのです。

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著者

尾崎 友吏子

ブログ「cozy‐nest小さく整う暮らし」主宰。にほんブログ村「シンプルライフ」「ミニマリスト」「ワーキングマザー育児」カテゴリーで上位人気を誇る。1970年生まれ。ニューヨーク州立大卒。不動産業などを経て、現在は建設業に従事。二級建築士、インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー1級。著書に『3人子持ち働く母のモノを減らして家事や家計をラクにする方法』(KADOKAWA)がある。

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