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第7回

【コラム】洛中洛外ヒエラルキー

2018.05.28更新

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元来、神社仏閣や日本庭園巡りは年齢層の高い人たちの趣味とされてきましたが、昨今ではSNSが身近になり幅広い世代が楽しんでいます。なかでも1200年の歴史がある京都はこの町でしか見ることのできない景色が残っており、そのひとつである日本庭園には様々な見どころがあります。本連載では、京都在住の庭園デザイナー・烏賀陽百合氏による、石組や植栽などの「しかけ」に注目して庭園を楽しむ方法を紹介します。
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 私の実家は金閣寺のすぐ近くにあった。有名な観光地の近くなので、自分は生粋の京都人だと思っていた。大学に入学した時、同じクラスに中京区の老舗のボン(お坊っちゃんのこと)がいた。お互い自己紹介などしていた時に、どちらのご出身ですか?と聞かれ、自信満々に「金閣寺のすぐ近くです」と答えた。すると彼から返って来た言葉は「あ〜洛外やね」。平成の時代に洛中洛外? それって冗談?とびっくりしたが、彼はいたって真面目。「それは不便なところやわ……」と言われたのだった。 中京区の町中に住む彼の意識では、金閣寺は洛外のとんでもない田舎。帰宅して母にそのことを話すと「そりゃ足利義満が別荘を建てた場所だから、中京区の人から見たら僻地も僻地よ」。大学生になって初めて、自分は京都人ではないことに気が付いた。

 洛中洛外という概念は、豊臣秀吉が「御土居(おどい)」と呼ばれる土塁を築いたことで出来た。敵からの攻撃と鴨川の氾濫から京都を守る堤防として、一五九一年(天正一九年)に完成。北は鷹ヶ峯、東は鴨川、西は紙屋川、南は九条辺りに築かれた。御土居の外の金閣寺周辺は洛外、という老舗のボンの概念は、一六世紀から続く京都人の価値観を表している。筋金入りなのだ。

 京都ではよくある話で、京都人に「京都出身です」と言うと、必ず「京都のどこ?」と聞かれる。ここで洛外、もしくは京都市外の名前を言うと、酷い場合は「あー、それは京都ちゃうね」と真顔で言われる。厳密に言うと、京都出身と言っていいのは洛中=上京、中京、下京だけなのだ(元々は上京区と下京区だけだったが、途中で中京と下京の二つに分かれた)。

 さらに、洛中でも上京vs中京・下京で攻防があるらしい。元々上京は北野天満宮の社領、中京と下京は八坂神社の社領。そして上京は西陣織などの職人が多く、中京・下京はその製品を売る商人の町。職人と商人のお互いのプライドがあり、仲が元々良くないとも言われてきた。

 歴史的、文化的なことも絡み、京都ヒエラルキーはなかなか根強い。

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著者

烏賀陽 百合

京都市生まれ。庭園デザイナー、庭園コーディネーター。同志社大学文学部日本文化史卒業。兵庫県立淡路景観園芸学校、園芸本課程卒業。カナダ・ナイアガラ園芸学校で3 年間学ぶ。イギリスの王立キューガーデンでインターンを経験。2017年3月にN Yのグランドセントラル駅構内に石庭を出現させ、プロデュースした。現在東京、大阪、広島など全国のNH K文化センターで庭園講座、京都、鎌倉でガーデニング教室を行う。また毎日新聞旅行で庭園ツアーも開催。著書に『一度は行ってみたい 京都絶景庭園』(光文社)がある。

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