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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第24回

苦恩第二十四

2019.01.08更新

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日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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苦恩第二十四

24 自らの才能を誇り自慢するような尊大な人は長続きしない

【現代語訳】

つま先で立つ者は、長く立っておられず、大股で速く歩こうとする者は、かえって遠くまで行けなくなる。自ら自身の能力をひけらかす者は、かえって世の中から遠ざけられる。自ら自分こそが正しいと言い回る者は、かえって世の中から正しいと思われなくなる。自分の功を誇る人は、かえって成功せず、自らの才能を誇り自慢するような尊大な人は、長続きしない。
これらのことは、根源的な「道」の考え方からすると、余分な食べもの、余計なふるまいである(余食贅行という)。これらは誰もが嫌う。だから「道」を身につけた者(「道」と一体の者)は、こういうことはしないのである。

【読み下し文】

企(つまだ)つ者(もの)は立(た)たず、跨(また)ぐ者(もの)は行(い)かず。自(みずか)ら見(あら)わす者(もの)(※)は明(あき)らかならず、自(みずか)ら是(ぜ)とする者(もの)は彰(あら)われず。自(みずか)ら伐(ほこ)る者(もの)は功(こう)無(な)く、自(みずか)ら矜(ほこ)る者(もの)は長(ひさ)しからず。
其(そ)の道(みち)に在(あ)る也(や)、余食贅行(よしょくぜいこう)(※)と曰(い)う。物(もの)(※)或(ある)いはこれを悪(にく)む。故(ゆえ)に有者道(ゆうどうしゃ)(※)は処(お)らず。

  • (※)自ら見わす者……自ら目立とうとする者。自ら自分の才能を見せびらかす者。これを「自ら見(み)る者」と読む説もある。また「自ら見(しめ)す者」と読む説もある。なお、以下四句は益謙第二十二にも出てくる。内容的には本章を益謙第二十二の前にもってきたほうがよいとする説もある。『帛書』も苦恩第二十四、益謙第二十二、虛無第二十三の順となっている。
  • (※)余食贅行……余分な食べもの、余計なふるまい。中国の古い文献によると、どんなにうまい食べものでも、たくさんの料理の後では捨てられ、いくら功績があろうと、自分でほめれば、いぼやこぶと同じになってしまう、とある。なお、「行」を「形」であるとする説もある。
  • (※)物……人を含めた万物のこと。なお、「或」は、「あるいは」または「つねに」と読む。
  • (※)有道者……「道」を身につけた人。「道」と一体の人。なお、同様の表現は第三十一章にもある。

【原文】

苦恩第二十四

企者不立、跨者不行。自見者不明、自是者不彰。自伐者無功、自矜者不長。
其在道也、曰餘食贅行。物或惡之、故有道者不處。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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