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孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第16回

43話~45話

2018.02.05更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

43 戦うべき場所と日時がわかれば勝てる

【現代語訳】

こうして戦う場所を知り、戦いの日時を知ったならば、千里離れたところ(遠い所)であっても戦うべきである。
戦う場所や戦う日時を知らなければ、左の部隊は右の部隊を救援できず、右の部隊は左の部隊を救援できず、前の部隊は後ろの部隊を救援できず、後ろの部隊は前の部隊を救援できない。
一つの軍においてもこうであるから、ましてや遠いところでは数十里、近いところでは数里の距離にいる味方を救援するなどとてもできないことになる。

【読み下し文】

故(ゆえ)に戦(たたか)いの地(ち)を知(し)り、戦(たたか)いの日(ひ)を知(し)れば(※)、則(すなわ)ち千里(せんり)にして会戦(かいせん)すべし。戦(たたか)いの地(ち)を知(し)らず、戦(たたか)いの日(ひ)を知(し)らざれば、則(すなわ)ち左(ひだり)は右(みぎ)を救(すく)うこと能(あた)わず、右(みぎ)は左(ひだり)を救(すく)うこと能(あた)わず、前(まえ)は後(うしろ)を救(すく)うこと能(あた)わず、後(うしろ)は前(まえ)を救(すく)うこと能(あた)わず。而(しか)るを況(いわ)んや遠(とお)き者(もの)は数十里(すうじゅうり)、近(ちか)き者(もの)は数里(すうり)なるをや。

(※)戦いの日を知れば……単に「日」でなく、「戦う日時」と解してよいだろう。

【原文】

故知戰之地、知戰之日、則可千里而會戰、不知戰地、不知戰日、則左不能救右、右不能救左、歬不能救後、後不能救歬、而況遠者數十里、近者數里乎、

44 敵の状況を把握するための工夫

【現代語訳】

私が考えてみるに、越の国の兵がいかに多くても、それが必ずしも勝敗において有利とはいえない。
というのも勝利というのは、積極的につくり出していくべきものだからだ。敵が多くいようとも、それを分散させて戦えないようにすればいいのである。
そのために敵の状況を知り、こちらとの利害得失を計算して作戦を決め、敵を挑発して動かすことで、その行動の基準を知り、敵の態勢を把握して敗れる地と敗れない地を知り、小規模の衝突をしてみて、敵の余裕のある場所や不足の場所を知るのである。

【読み下し文】

吾(わ)れを以(もっ)てこれを度(はか)るに、越(えつ)(※)人(ひと)の兵(へい)多(おお)しと雖(いえど)も、亦(また)奚(なん)ぞ勝敗(しょうはい)に益(えき)あらん。故(ゆえ)に曰(いわ)く、勝(かち)は為(な)す可(べ)きなり(※)。敵(てき)衆(おお)しと雖(いえど)も、闘(たたか)い無(な)からしむ可(べ)し、と。故(ゆえ)にこれを策(はか)りて得失(とくしつ)の計(けい)(※)を知(し)り、これを作(おこ)して(※)動静(どうせい)の理(り)(※)を知(し)り、これを形(あらわ)して死生(しせい)の地(ち)を知(し)り、これに角(ふ)れて(※)有余(ゆうよ)不足(ふそく)の処(ところ)を知(し)る。

  • (※)越……春秋時代の国名。現在の浙江省のあたり。孫子の仕えた呉の隣国。
  • (※)勝は為す可きなり……原文の「為」は「擅(せん)」であるとし、「擅(ほしい)ままにすべきなり」と読む説もある。その説の場合、現代語訳は「思いのままに」となる。
  • (※)得失の計……利害得失の計算。
  • (※)作して……「敵を挑発して」の意味。なお、一九七二年に発見された竹簡本では「作」が「績」となっていた。これは「蹟」の借字であると見る説もある。そうすると「敵の跡をつけて」と訳することになる。
  • (※)理……ここでは、「(行動の)基準」「法則」の意味。
  • (※)角れて……「触れて」の意味。小規模の衝突をしてみること。

【原文】

以吾度之、越人之兵雖多、亦奚益於勝敗哉、故曰、勝可爲也、敵雖衆、可使無鬭、故策之而知得失之計、作之而知動靜之理、形之而知死生之地、角之而知有餘不足之處、

45 理想の極地は無形の軍

【現代語訳】

軍の形を取るにおいて理想の極地は、無形すなわち見た目の形をなくしてしまうことである。
無形であれば、こちら側に深く潜入している間諜(かんちょう)でもその作戦を探り出すことができず、敵の智謀に優れた者でも、こちらの形、態勢を読むことができない。
敵の形がわかれば、その形に応じて多数の敵からでも勝利を得ることになるが、一般の人にはその理由がわからない。
人は皆、我が軍が勝った形を知ることはできようが、いかにしてそのような形にもっていったかについてはわからない。こうして、その勝った形は繰り返されることなく、敵の状況によって常に変わっていくのである。

【読み下し文】

故(ゆえ)に兵(へい)を形(あらわ)すの極(きょく)は、無形(むけい)に至(いた)る。無形(むけい)なれば、則(すなわ)ち深間(しんかん)(※)も窺(うかが)うこと能(あた)わず、智者(ちしゃ)も謀(はか)ること能(あた)わず。形(かたち)に因(よ)りて勝(かち)を衆(しゅう)(※)に錯(お)くも、衆(しゅう)知(し)ること能(あた)わず。人(ひと)(※)皆(みな)我(わ)が勝(かち)の所以(ゆえん)の形(かたち)を知(し)るも、吾(わ)が勝(かち)を制(せい)する所以(ゆえん)の形(かたち)を知(し)ること莫(な)し。故(ゆえ)に其(そ)の戦(たたか)い勝(か)つや復(ふたた)びせずして、形(かたち)に無窮(むきゅう)に応(おう)ず。

  • (※)深間……「間」は「間諜」「スパイ」の意。深く入り込んだ間諜のこと。
  • (※)衆……一般の人、多くの人。なお、これを「敵人」と解する説、「味方の人」と解する説もある。
  • (※)人……普通の人。なお、これを「敵人」と解する説、「味方の人」と解する説もある。

【原文】

故形兵之極、至於無形、無形、則深閒不能窺、智者不能謀、因形而錯勝於衆、衆不能知、人皆知我所以勝之形、而莫知吾所以制勝之形、故其戰勝不復、而應形於無窮、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術-相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(共に誠文堂新光社)などがある。

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