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「感情」の解剖図鑑 仕事もプライベートも充実させる、心の操り方 苫米地英人

第5回

「喜び」の解剖図鑑

2017.03.28更新

読了時間

【 この連載は… 】 悲しみ、怒り、喜び、名誉心……「感情」の成り立ち、脳内作用、操り方を苫米地博士が徹底解剖! 単行本出版を記念して、書籍の厳選コンテンツを特別公開いたします。
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【喜び】yorokobi


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「喜び」とは……


良いことが起こり、嬉しく思う気持ち。心が高揚し、喜びの度合いによっては、「笑いがこみあげる」「意欲や行動力、運動力が向上する」「動悸が激しくなる」「涙が出る」などの身体的反応が起こることもある。

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■喜びは、何らかの欲求が満たされたときに生じる


 たとえば、おいしいものを食べたとき、会いたかった人に会えたとき、欲しかったものが手に入ったとき、試合に勝ったときなどに、人は喜びを感じます。

 欲求が満たされると、その刺激が脳に伝わり、ドーパミンやエンドルフィンが放出されます。それによって中枢神経が興奮し、喜びや嬉しさといった感情が生まれるのです。

 なお、人が「自分はいま、喜んでいる」と感じるころには、すでに幸福感や満足感を作り出すセロトニンが分泌されています。


■喜びは、社会的行為の結果として生まれるもの


 ほかの動物と違い、人間が欲求を満たす際には、必ず社会的な行動を伴います。たとえば、食欲のような、本能に基づいた欲求を満たすときでさえ、食材を買う、外食するなど、「お金を払う」という社会的な行動が必要となります。

 つまり、人間の喜びの感情は、社会的行為の結果として生まれるものだといえます。

 また、喜びの度合いは、欲求の満たされ方が大きければ大きいほど、そして意外性があればあるほど、高まります。たとえば、空腹を我慢していて、ようやく食べものにありつけたとき、量が多ければ多いほど、おいしければおいしいほど、人は喜びを感じるでしょう。あるいは、空腹なのに、家に食べものがない……と思った矢先に、買い置きしていたパンを発見した場合は、もともとパンがあることがわかっていたとき以上に、喜びを感じるでしょう。誕生日などをサプライズで祝うのも、相手の喜びをより大きくするための演出であるといえます。

 喜びの感情自体には、基本的には何の問題もありません。あえてコントロールしようとしたり、乗り越えようとしたりする必要はないでしょう。ただ、次に述べるように、どのような行為によって欲求を満たし、喜びを得たのかは、注意する必要があります。


■喜びをコントロールする方法


 ここでは、喜びをコントロールする方法を2 つ、紹介しましょう。


1 想定外の喜びには、注意が必要


 もしも、度を超えた喜びを感じたときは、社会的なルールに反した行為をしている可能性が高いといえます。

 たとえば、少しの労力で、思いがけず多額の報酬を手にした場合。おそらく大きな喜びを感じるでしょうが、その仕事は法に反していたり、違法スレスレだったり、誰かの大きな犠牲のうえに成り立っていたりするかもしれません。

 あるいは、不倫や浮気の恋は、配偶者やパートナーとの安定した関係からは得られないような、大きな喜びをもたらすかもしれません。しかし、やはり社会的なルールに反しており、非難されることもあるでしょう。

 また、ドラッグをやったりすると、ものを食べる、性行為をするなど、普通に欲求を満たしたときとは比べものにならないほど、大量のドーパミンが分泌され、人は大きな喜びを感じます。しかしドラッグをやるという行為が社会のルールに反していることは、言うまでもありません。

 このように、想定外の喜びには、何らかのリスクがつきまといがちです。くれぐれも注意しましょう。


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著者

苫米地 英人

1959年、東京都生まれ。認知科学者、計算機科学者、カーネギーメロン大学博士(Ph.D)、カーネギーメロン大学CyLab兼任フェロー。マサチューセッツ大学コミュニケーション学部を経て上智大学外国語学部卒業後、三菱地所にて2年間勤務し、イェール大学大学院計算機科学科並びに人工知能研究所にフルブライト留学。その後、コンピュータ科学の世界最高峰として知られるカーネギーメロン大学大学院に転入。哲学科計算言語学研究所並びに計算機科学部に所属。計算言語学で博士を取得。徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、通商産業省情報処理振興審議会専門委員などを歴任。

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