第15回
コミュニケーションとコラボレーション
2018.07.19更新
【 この連載は… 】 「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という難病をご存知ですか? 意識や五感は正常のまま身体が動かなくなり、やがて呼吸困難を引き起こす指定難病です。2014年の「アイスバケツ・チャレンジ」というパフォーマンスで目にした方も多いでしょう。あれから約4年経過した現在、まだ具体的な解決法はありません。本連載では、27歳でALSを発症した武藤将胤さんの「限界を作らない生き方」を紹介します。日々、身体が動かなくなる制約を受け入れ、前に進み続ける武藤さん。この困難とどう向き合っていくのか、こうご期待!
「目次」はこちら
ラジオナビゲーター/DJとして、さまざまなゲストとトークセッション
J–WAVEで、「WITH」というレギュラー番組(毎週金曜日26:30~27:00)のナビゲーターを務めています。
016年10月にスタートしたときは、滑舌にそれほど違和感がありませんでしたが、徐々に声が出しにくくなり、ろれつも回らなくなってきました。それでも僕に番組ナビゲートを続けさせてくれているJ–WAVEの関係者の方たち、そして聞き取りにくいところが多々あるにもかかわらず番組を聴き、コメントを寄せてくださるリスナーの方たちに、心から感謝しています。
この番組「WITH」では、僕がスローガンとして掲げている「NO LIMIT, YOUR LIFE.」をキーメッセージとして、各界で活躍されている方たちをゲストにお招きしていろいろお話をしていただいています。
番組スタートからの約1年半の間に、50人近い方々をお迎えしてきました。ミュージシャン、アスリート、テクノロジスト、クリエイター、社会活動家……多種多彩な方々が出てくださっています。みなさんご自分の信念のもと、熱い気持ちで何かをやり続けている方々ばかり。魂が揺さぶられるトークセッションをすることができ、僕にとって本当に楽しい時間です。
みなさんやっていらっしゃることは違うのに、なぜか共通していることがあるんです。それは、めちゃくちゃ行動力があること。発想力も確かにすごいんですが、それ以上に思いついたことを行動に移す力が桁違いにすごいんです。
何かアイディアを思いついたら、とにかくやってみるんだと異口同音におっしゃるんです。「こんなの無理かな」とか「いろいろむずかしそうだな」とか、四の五の考えたりしない。「やるか、やらないかだ」「ここはやるしかない」という心意気で行動していく。そういうバイタリティをもっていらっしゃるのです。
「ああ、やっぱりこういう人たちが社会を変えていくんだなあ」と感じ、僕もいつも発奮させられます。
力強い言葉からパワーをもらう
行動力のある人は、たくさん結果を出してきていますから、桁違いの説得力があります。その分、言葉も力強いんですよね。いろいろな方とお話しすることで、僕は毎回、勇気や刺激、たくさんのエネルギーをもらい、自分自身が内側からどんどんパワーアップしているような感じがしています。
たとえば、石井竜也さんの言葉で印象深く心に残っているのが、
「大きな夢や野望にしても、どうやってかなえていくかといえば、今、できることを全力でやり続けることの連続なんだ」
「逆に言えば、今できないことは考えてもしょうがないよ」
これは、背中を押していただいたような気がするうれしい言葉でした。
筑波大学准教授でメディアアーティストの落合陽一さんも、ゲストで出てくださったおひとりです。健常者と障害者という垣根を取り払いたいという僕の言葉に対して、
「健常者用という概念があるから、障害者用という概念がある、それは近代の発想です。みんながパーソナルモビリティを使う時代になったら、全員が車いすに乗っているようなものですから、もう関係なくなります」
と語ってくれました。それを聞いて、パーソナライズ化していくこれからの社会に明るい希望が湧いてきました。
まざまな分野で活躍している方たちと直に対話する機会を重ねるたびに、僕は自分の視野や発想がより拡がっていっている実感があります。
コミュニケーションとコラボレーション
番組での出会いがきっかけとなり、コラボレーションさせていただくことになった方たちもたくさんいます。
僕は、コミュニケーションとコラボレーションというのは地続きのものだと思っています。コミュニケーションとは、意思や感情、意見、考え方などを相手と通い合わせることです。つまり、相手と円滑なコミュニケーションをとるとは、相手が自分に投げかけてくれた言葉や知識、情報などをただ受け取ることではなくて、「自分はそれに対してどう感じ、どう関わることができるか」を考えて投げ返すことだと思うのです。
相手が求めているのはどんなことなんだろうと想像を巡らし、
「それだったら、こんなこともできますね」
「僕は、こういうかたちで協力できるんじゃないかと思います」
そんなふうに提案できれば、両者は一方向の関係ではなく、双方向の関係になることができます。それがコミュニケーションをとり、コラボレーションへとつなげていくことだと思うんですね。
いいコミュニケーションとは、コラボレーションにつなげられることだと考えると、「それに対して自分はいったい何ができるか」ということをシンプルに考えられます。
僕はそうやってコミュニケーションすることが大好きなんです。「すごいな」と思ったら、その人とコラボレーションしたくなる。自分だけではできないことも、一緒にチームを組んでやったらできる。そうやって誰も創ったことのないものを生み出す挑戦ができたらどんなに楽しいだろう、と思っちゃうんです。
「WITH ALS」というコンセプトもそうです。「誰か」と「何かのテクノロジー」を協働することで、ALSという病気と向き合いたいのです。
もし僕に医療関係の専門知識があったなら、僕はALSを治すための薬や治療法の研究分野で協働したいと考えたと思います。しかし残念ながら、僕にはその知識はないので、この病気にかかった人たちのためのさまざまな環境の改善、社会意識の変革という面で協働して力を尽くしたいと考えたのです。
もともとチームでやることが好きなんですね。中学時代はバスケット、高校時代はバレーボール、大学時代にはアルティメット、チームでやるスポーツに燃えるタイプの人間でした。
誰かと一緒に現実を動かしていく―。これこそコミュニケーションの醍醐味だと僕は思っているのです。
【単行本好評発売中!】
この本を購入する『KEEP MOVING 限界を作らない生き方』特設サイトはこちら
一般社団法人WITH ALS
ホームページ http://withals.com/
facebook https://www.facebook.com/project.withals/
Instagram https://www.instagram.com/withals_masa/
感想を書く