第16回
歸根第十六
2018.12.26更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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歸根第十六
16 道と一体となれば生涯危ういことはなくなる
【現代語訳】
心をまったく空虚にし、静かな(無心な)気持ちをよく守る。すると、万物は生まれ育っていくものの、私にはそれがもとに(根源に)返ってくるのが見えてくる。万物は生まれて盛んに広がるが、いずれはその根元(ねもと)に帰ってくるものだ。
根元に帰ってくることを「静」といい、これを「命に復る」(未来の運命、根元に帰る)という。命に帰ることを「常」(恒常の不変の真理)といい、その常を知ることを「明」という。この常を知らないでいると、いい加減な行動をして、凶を招くことになる。
常を知っていれば、どんなことでも包容できる。すべてを包容できれば、公平となる。公平となれば王者である。王者であれば天と同じとなる。天と同じであれば、「道」と一体となる。「道」と一体となれば、それは永久である。そうなれば、生涯、危ういことはなくなる。
【読み下し文】
虚(きょ)(※)を致(いた)すこと極(きわ)まり、静(せい)を守(まも)ること篤(あつ)し。万物(ばんぶつ)は並(なら)び作(おこ)り、吾(わ)れ以(もっ)て其(そ)の復(かえ)るを観(み)る。夫(そ)れ物(もの)の芸芸(うんうん)(※)たる、各〻(おのおの)其(そ)の根(こん)に復帰(ふっき)す。
根(こん)に帰(かえ)るを静(せい)と曰(い)い、是(こ)れを命(めい)に復(かえ)ると謂(い)う。命(めい)に復(かえ)るを常(じょう)(※)と曰(い)い、常(じょう)を知(し)るを明(めい)と曰(い)う。常(じょう)を知(し)らざれば、妄作(もうさく)して凶(きょう)なり。
常(じょう)を知(し)れば容(よう)なり、容(よう)は乃(すなわ)ち公(こう)なり、公(こう)は乃(すなわ)ち王(おう)なり、王(おう)は乃(すなわ)ち天(てん)なり、天(てん)は乃(すなわ)ち道(みち)なり、道(みち)は乃(すなわ)ち久(ひさ)し。身(み)を没(ぼっ)するまで殆(あや)うからず。
- (※)虚……心を空っぽに(空虚)にすること。雑念を払うこと。
- (※)芸芸……盛んに生い繁るさま。広がる。
- (※)常……恒常不変であること。
【原文】
歸根第十六
致虛極、守靜篤。萬物竝作、吾以觀其復。夫物芸芸、各復歸其根。
歸根曰靜、是謂復命。復命曰常、知常曰明。不知常、妄作凶。
知常容、容乃公、公乃王、王乃天、天乃道、道乃久。沒身不殆。
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