第15回
ネガティブな「外部の言葉」には、耳を貸さない
2019.05.23更新
臆病、意地っ張り、せっかち…。あなたは自分の「性格」に苦労していませんか? 性格は変えられないというのはじつはウソ。性格とは、人が生きていく上で身に付けた「対人戦略」なのです。気鋭の認知科学者である苫米地英人博士が、性格の成り立ちや仕組み、変え方などを詳しく解説します。
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ただ、ここで一つ、気をつけなければならないものがあります。
それは「外部の言葉」です。
私たちは親、教師、上司、同僚、取引先、友人、配偶者、子ども、そしてメディアなど、日々外部からの言葉を受け取っています。
そうした外部の言葉も、自分がそれを受け入れればブリーフとなり、自己対話と同じ効果をもたらします。
特に、同じことを何度も繰り返し聞かされると、それが事実や自分の認識とは異なる内容であっても、「たしかにそうかもしれない」という自己対話を生み、自己イメージを上書きしてしまうのです。
自分では、「すぐにくよくよするのをやめたい」と思っていても、他者から「あなたはすぐくよくよする性格だから」と何度も言われれば、過去のくよくよした記憶が蘇り、「たしかにそうかもしれない」と思ってしまうでしょう。
逆に「あなたは、過去をひきずらない性格だよね」と何度も言われれば、過去の「くよくよしなかった」記憶の方がクローズアップされ、「たしかにそうかもしれない」と思うようになるかもしれません。
そして残念ながら、外部の言葉は、ポジティブな内容よりも、ネガティブな内容であることが多いのです。
たとえ愛情からくるものであっても、他者から言われた「バカだな」「弱いね」「何をやってもダメじゃない?」といった言葉は、知らず知らずのうちに、マイナスの自己イメージを作り、自己評価を下げてしまいます。
しかし、あなたが変わろうとしている今、そうした言葉に、まったく意味はありません。
ネガティブな言葉を投げつけてくる他者は、「過去のあなたの、認識や行動のパターン」を評価しているにすぎないからです。
しかも、過去のあなたの選択や行動を決定してきたのは、他者からの摺り込みによってできたブリーフシステムであり、それらは「本当はこうしたい」「本当はこういう人間でありたい」というあなたの本心や願望とは、まったく関係がないのです。
過去の遺物に基づいて、あなたにマイナスの自己イメージを植えつけ、あなたのエフィカシーを下げる相手のことを、「ドリーム・キラー」(夢をつぶす人)といいます。
ドリーム・キラーは、あなたが「こういう自分になりたい」「こういうことがしたい」と口に出そうものなら、すかさず「性格なんて、簡単に変えられない」「そんなの無理」「あなたに、できるわけがない」などと発言するでしょう。
彼らの影響を受けないようにするためには、まず「こういう自分になりたい」「こういうことがしたい」といった「夢」を、他人にあまり話さないことです。
「本当にできるのだろうか」という不安感や「誰かに背中を押してもらいたい」という依存心から、つい話したくなってしまうかもしれませんが、期待通りの反応が返ってくる保証はなく、かえってエフィカシーを下げられてしまうおそれがあります。
とにかく、「今、ここにいる自分自身」を信じ、よりどころとしましょう。
また、これからのあなたは、誰のどんな言葉を聞き、誰のどんな言葉に耳をふさぐかを、自分で決めていく必要があります。
メディアから垂れ流される情報も含め、他人の言葉が、「なりたい自分」にふさわしいかどうかを選別し、ふさわしくない言葉は無視するのです。
たとえ、ネガティブな言葉に耳を傾けることがあったとしても、「たしかにそうかもしれない」などと思わず、決して受け入れないようにしましょう。
■ ポイント
・同じことを繰り返し聞かされていると、自己イメージが上書きされてしまう。
・他者からの言葉は過去のあなたの評価でしなかく、まったく意味はない。
・他者からのネガティブな言葉に影響されないために、夢を安易に周囲に話さないこと。
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