第73回
任爲第七十三
2019.03.20更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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任爲第七十三
73 天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず
【現代語訳】
何事も積極的にやっていけば、殺されることになり、積極的にならないように勇気を出して戒めていくと生かされる。この両者には、一方に利があり、一方に害がある。しかし、天が何を嫌うかについては、誰にそのわけがわかろうか。「道」と一体である聖人でさえ、それを知ることは難しいのである。
天の「道」は争わずにうまく勝つことができ、何も言わないのにうまく応答し、招かなくても自分から来させることができ、ゆったりとしていても、うまく謀ることができる。天の張った網はとても広大で、網の目は粗いように見えるが、何も漏らすことはないのである。
【読み下し文】
敢(あ)えてするに勇(ゆう)なれば、則(すなわ)ち殺(ころ)され、敢(あ)えてせざるに勇(ゆう)なれば、則(すなわ)ち活(い)く。此(こ)の両者(りょうしゃ)、或(ある)いは利(り)あり、或(ある)いは害(がい)あり。天(てん)の悪(にく)む所(ところ)、孰(たれ)か其(そ)の故(ゆえ)を知(し)らん。是(ここ)を以(もっ)て聖人(せいじん)すら猶(な)おこれを難(かた)しとす(※)。
天(てん)の道(みち)は、争(あらそ)わずして而(しか)も善(よ)く勝(か)ち、言(い)わずして而(しか)も善(よ)く応(おう)じ、召(まね)かずして而(しか)も自(おの)ずから来(き)たり、繟然(せんぜん)として(※)而(しか)も善(よ)く謀(はか)る。天網恢恢(てんもうかいかい)、踈(そ)にして而(しか)も失(うしな)わず(※)。
- (※)是を以て聖人すら猶おこれを難しとす……この部分は錯簡ではないかとし、省く説もある。
- (※)繟然として……「繟」は「坦」に通じるとされる。ゆったりとしているさま。
- (※)天網恢恢、踈にして而も失わず……「天網恢恢疎にして漏らさず」という故事成句として有名になっている。「天は見てないようで(その目は粗いように見える)、ちゃんとすべてお見通しであり、悪いことはできない。いずれ必ず罰が下される」の意味として用いられている。なお、「踈」は「疎」の異体字。
【原文】
任爲第七十三
勈於敢則殺、勈於不敢則活。此兩者、或利或害。天之所惡、孰知其故。是以聖人猶難之。
天之道、不爭而善勝、不言而善應、不召而自來、繟然而善謀。天網恢恢、踈而不失。
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