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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第75回

貪損第七十五

2019.03.25更新

読了時間

日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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貪損第七十五

75 税を多く取りすぎてはいけない

【現代語訳】

人々が飢えに苦しむことになるのは、上に立つ者が税を多く取りすぎるからで、そのために飢えるようになるのだ。人々を治めにくくなるのは、上に立つ者があれこれと余計な政策を行って私生活に介入するからで、そのために治めにくくなるのだ。人々が死を軽んじるのは、上に立つ者が自分の生活を厚くすることばかりを考えるためで、そのために死を軽んじるようになるのだ。
そもそも自分の生きることについて執着しない者こそ、生きることを貴ぶ者よりまさっている。

【読み下し文】

民(たみ)の饑(う)うる(※)は、其(そ)の上(かみ)の税(ぜい)を食(は)むことの多(おお)きを以(もっ)て、是(ここ)を以(もっ)て饑(う)う。民(たみ)の治(おさ)め難(がた)きは、其(そ)の上(かみ)の為(な)すこと有(あ)るを以(もっ)て、是(ここ)を以(もっ)て治(おさ)め難(がた)し。民(たみ)の死(し)を軽(かろ)んずるは、其(そ)の上(かみ)の生(せい)を求(もと)むることの厚(あつ)きを以(もっ)て(※)、是(ここ)を以(もっ)て死(し)を軽(かろ)んず。
夫(そ)れ唯(た)だ生(せい)を以(もっ)て為(な)すこと無(な)き者(もの)は、是(こ)れ生(せい)を貴(たっと)ぶより賢(まさ)る。

  • (※)饑うる……飢えに苦しむ。「饑」は「飢」の借字。
  • (※)其の上の生を求むることの厚きを以て……原文は「以其上求生之厚」であるが、「上」の字を取る説もある。『帛書』にも「上」はない。その説によると「其の生を求むることの厚きを以て」と読み、「人々自身が生きることを求めすぎてしまうことから」などと訳することになる。「上」の字を入れて解釈するほうが筋が通っていると解する。

【原文】

貪損第七十五

民之饑、以其上食稅之多、是以饑。民之難治、以其上之有爲、是以難治。民之輕死、以其上求生之厚。是以輕死。
夫唯無以生爲者、是賢於貴生。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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