第167回
433話~434話
2017.03.27更新
【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
433 国君の妻の呼び方
【現代語訳】
国君が妻のことを言われる時には「夫人(ふじん)」と言う。夫人が自らを言う時には「小童(しょうどう)」と言い、その国の人が言う時には「君夫人(くんふじん)」と言う。また、外国人に向かって言う時には、「寡少君(かしょうくん)」と言い、外国人が言う時には、その国の人と同じく「君夫人」と言う。
【読み下し文】
邦君(ほうくん)の妻(さい)は、君(きみ)之(これ)を称(しょう)して夫人(ふじん)と曰(い)う。夫人(ふじん)自(みずか)ら称(しょう)して小童(しょうどう)(※)と曰(い)う。邦人(ほうじん)之(これ)を称(しょう)して君夫人(くんふじん)と曰(い)う。諸(これ)を異邦(いほう)に称(しょう)して寡少君(かしょうくん)と曰(い)う。異邦人(いほうじん)が之(これ)を称(しょう)して、亦(ま)た君夫人(くんふじん)と曰(い)う。
(※)小童……謙遜の言葉。日本でも「わらわ」という。
【原文】
邦君之妻、君稱之曰夫人、夫人自稱曰小童、邦人稱之曰君夫人、稱諸異邦曰寡小君、異邦人稱之亦曰君夫人、
(※注)……この論語は、夫人の名称が乱れたのを孔子が正したのであるという説と、そもそも論語に入っている意味はわからないという説がある。どちらの説が正しいとは言えないが、本書では孔子が言ったことを弟子が記録していたものと解しておく。
陽貨(ようか)第十七
434 無礼な相手でも怒らせずに、うまく聞き流す
【現代語訳】
魯の季氏の家臣で権勢を持った陽貨(ようか)(※)は、孔子先生に会いたがったが、先生は会おうとしなかった。そこで陽貨は、先生がお礼に来なければならないように蒸した豚を贈った。先生は陽貨が留守の時を狙って答礼を済まそうとした。ところが途中の道で陽貨と会ってしまった。
陽貨は先生に言った。「家に来てください。あなたに話があるのです」。そして、次のような会話があった。
陽貨「宝を持っているのにそれを使わず、国を乱れたままにしておいて仁と言えますか」。
先生「言えません」。
陽貨「政治に関わりたいのに、何度もその機会を逃していて、知と言えますか」。
先生「言えません」。
陽貨「時のたつのは早く、歳月は私たちを待ってくれません」
先生「いずれ、そのうちに御奉公致しましょう」。
(※)陽貨……季氏の家臣の陽虎(ようこ)とされる。かつて季桓子(きかんし)を囚とらえて、魯の国政を専らにした。ただ、佐藤一斎などは、陽貨と陽虎は別人との説をとっている。陽貨がしきりに孔子を招き仕官させたがったのは、その教えを学ぼうとの考えからではなく、孔子を丸め込むことで批判を避け、国民の人気も上がることを期待したものである。
【読み下し文】
陽貨(ようか)、孔子(こうし)を見(み)んと欲(ほっ)す。孔子(こうし)見(みま)えず。孔子(こうし)に豚(ぶた)を帰(おく)(※)る。孔子(こうし)其(そ)の亡(な)(※)きを時(とき)として往(ゆ)きて之(これ)を拝(はい)す。諸(これ)に塗(みち)に遇(あ)う。孔子(こうし)に謂(い)いて曰(いわ)く、来(き)たれ、予(われ)爾(なんじ)と言(い)わん。曰(いわ)く、其(そ)の宝(たから)を懐(いだ)きて其(そ)の邦(くに)を迷(まよ)わすは、仁(じん)と謂(い)うべきか。曰(いわ)く、不可(ふか)なり。事(こと)に従(したが)う(※)を好(この)みて、亟〻(しばしば)時(とき)を失(うしな)うを、知(ち)(※)と謂(い)うべきか。曰(いわ)く、不可(ふか)なり。日月(じつげつ)は逝(ゆ)く、歳(とし)は我(われ)と与(とも)にせず、孔子(こうし)曰(いわ)く、諾(だく)、吾(われ)将(まさ)に仕(つか)えんとす。
(※)帰……贈る。なお、大夫から物を贈られた者は、大夫の家に行ってお礼を言うことになっていた。それを利用して陽虎は孔子に豚を贈った。
(※)亡……不在。
(※)事に従う……世を救うことにしたがう。政治にたずさわる。
(※)知……時をみて適応すること。
【原文】
陽貨欲見孔子、孔子不見、歸孔子豚、孔子時其兦也、而徃拜之、遇諸塗、謂孔子曰、來、予與爾言、曰、懷其寳而迷其邦、可謂仁乎、曰、不可、好從事而亟失時、可謂知乎、曰、不可、日月逝矣、歲不我與、孔子曰、諾、吾將仕矣、
*434話が長文のため、今回は2話のみの掲載となります。
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