第8回
旧約聖書のモチーフ 智天使(ケルビム)/魔女/悪魔
2018.04.03更新
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天使の階級のうち、最上級に位置する熾天使(してんし:セラフィム)の次に位が高いのが智天使ケルビムです。『創世記』の中でアダムとイヴを追放した神は、ケルビムに炎の剣を与えてエデンの園の門番としました。
旧約聖書に収められた預言者の書『エゼキエル書』の中では、4つの顔と4つの翼をもつ天使として登場します。想像をふくらませた画家の多くは、1~3対の翼をもった頭だけが浮かんだ姿でケルビムを表現しました。
6つの翼をもつセラフィムと混同されて描かれることもあり、ときには神のまわりを飛び回るように表現されることが多いのも特徴です。
旧約聖書の『出エジプト記』に、「女呪術師」として登場する魔女。中世後期以降、魔女は「悪魔に誘惑されて契約を結んだ者」として、ヨーロッパに広まりました。15~17世紀には魔女狩りが巻き起こり、この時期に魔女狩り関連の絵が多く描かれました。
背景にはキリスト教における女性嫌悪(ミソジニー)や、それに影響された悪魔学の成立があり、女性性を否定した姿や年老いたみにくい魔女像が目立ちます。一方で、デューラーの名作『4人の魔女』のような、豊満な肉体と美しく結い上げられた髪で女性性のプラスの側面を盛り込んだ魔女像も描かれています。
悪魔は神に反逆した元天使です。旧約聖書の『イザヤ書』の中で、神を裏切り、天から落ちた堕天使として語られています。この世界の諸悪の根源は天使の裏切りにあり、地上に悪を作り出したのは神ではないと説明をしているのです。
堕天使の長のルシファーは、元天使でありながら神の敵の親玉、魔王サタンとなり、堕天使たちはサタンの下僕となります。旧約聖書の中で示されたこうしたイメージは新約聖書に受け継がれ、広く世の中に浸透しました。やがて異教の神々も悪魔とみなされるようになります。
さらに画家たちは、古代神話や東方の伝説からもイメージを借りてきて、実にさまざまな姿かたちをした奇怪な悪魔を作り上げています。
回心、悪魔祓い、誘惑の克服、「最後の審判」、地獄などに関連して描かれることが多いモチーフです。
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