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マンガでわかる「西洋絵画」のモチーフ

第3回

ざっくり紹介 旧約聖書のナカミ(下)

2018.02.27更新

読了時間

戦隊ヒーローのレッドはリーダーで、パンをくわえた女子学生は曲がり角で誰かとぶつかる……。そんなお約束は西洋絵画にも。単行本出版を記念して、書籍から厳選コンテンツを特別公開!
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神に信仰心を試されるイサクの犠牲

アブラハムがユダヤ民族の祖とされるのは、神から「カナンの地を与える」と啓示を受けたためです。このことは、現在のイスラエルがエルサレム周辺の土地は自分たちのものだと正統性を主張する根拠となっています。
旅の果てにカナンの地にたどり着いたアブラハムは、神と契約を結びそこへ住みつきます。しかし子どもに恵まれなかったため、妻付きの奴隷を側女(そばめ)にし、イシュマエルをもうけます。
その後、妻サラに子どもができるとイシュマエルを追い出します。アブラハムはサラとの間に生まれたイサクを生贄(いけにえ)にするよう神に命じられますが、寸前で天使に止められます。神に信仰心を試され、わが子を手にかけようとしたこの物語は、神の言いつけは絶対だというメッセージでもあります。

※1グエルチーノ『ハガルとイシュマエルを追放するアブラハム』1657年/ブレラ美術館(ミラノ)

※2ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『イサクの犠牲』1601年/ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

アブラハムの子孫たちの波乱に満ちた人生

イサクの息子ヤコブは、双子の兄との遺産相続争いに負けて逃亡。逃亡先から故郷に帰るときに天使と取っ組み合いをして勝ち、イスラエルの名を授かります。ヤコブの子ヨセフも、兄弟間の争いでエジプトへ亡命。エジプト王の夢を読みとき、特異な能力を見込まれて副王に出世します。
エジプト宮廷で育てられたモーセは、ある日神と、エジプトで虐げられていたユダヤ人をカナンに連れ戻す約束をします。エジプト王にユダヤ人の解放を要求しますが聞き入れられず、十の災いが現れると王はようやく説得に応じます。ところが王は、エジプトを去ったモーセの一行に軍隊を差し向けます。紅海へ追い詰められたモーセが海の上に手をかざすと、海が割れて脱出することができました。

※3ポール・ゴーギャン『説教のあとの幻影(ヤコブと天使の闘い)』1888年/スコットランド国立美術館(エディンバラ)

※4レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン『天使と格闘するヤコブ』1660年頃/ベルリン美術館(ベルリン)

※5ニコラ・プッサン『紅海を渡るモーセ』1632~34年/ヴィクトリア国立美術館(メルボルン)

過酷を極めたカナンへの旅 モーセ以降、士師の時代へ

ユダヤ人を救済したモーセは、旧約聖書の中でも最大級のヒーローとして描かれています。エジプトを脱出したモーセの一行は、神と約束したカナンの地を目指して旅を続けます。3カ月後、以前神の声を聞いたシナイ山のふもとにたどり着き、モーセは山に登って神の教えを記した石板の「十戒」を授かります。その後も過酷な旅は続き、モーセはカナンの地を踏むことなく死んでしまいます。
モーセの後継者ヨショアはカナンに攻め入り、カナンの各都市を陥落させます。しかし、先祖アブラハムが神からもらったカナンの周辺には敵も多く、勇敢な指導者(士師(しし):ヨシュアから預言者サムエルまで、すなわちサウルが即位してイスラエル王国が誕生するまでの間のユダヤ民族の指導者)が必要とされました。旧約聖書の『士師記』には、怪力で知られるサムソンの物語などが収録されています。

※1レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン『十戒の石版をたたき割るモーセ』1659年/ベルリン美術館(ベルリン)

士師から王の時代へ イスラエル王国の繁栄と衰退

やがて士師の時代が終わり、王を求める人々の声が強くなると神もそれを認め、農民の子サウルがユダヤ民族の最初の王として即位。2代目の王には竪琴の名手ダヴィデがつきます。ダヴィデは敵対するペリシテ軍の巨人兵士ゴリアテの首を落としたことで人気があり、その統治下で首都をエルサレムに移したイスラエル王国は栄えます。しかし部下の妻バテシバを奪ってからは不幸が続き、バテシバとの子ソロモンに王位を譲ることになります。バテシバの物語は、のちに多くの画家が裸婦像を描く口実のひとつとされました。
ソロモン王のもとでイスラエル王国は繁栄を極めますが、以降、分裂、衰退。やがてユダヤ民族の国も失われてしまいます。

※2レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン『ダヴィデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』1654年/ルーヴル美術館(パリ)

※3クロード・ロラン『シバの女王の乗船』1648年/ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

ソロモン王の死後預言者たちが民族の支えに

ソロモンの死後、王国は南北に分裂。ユダヤ民族が苦難の時代を迎えると、預言者が活躍し始めます。
北王国はアッシリア帝国に滅ぼされ、南のユダ王国は預言者イザヤの活躍でかろうじて救われます。しかしアッシリア帝国の次に強大となった新バビロニアに、ユダ王国の人々は連行されてしまいます。捕虜となった人々の中から現れた預言者エゼキエルは、人々を戒め、神の救いによって民族が復活することを説きます。このことはのちに、「最後の審判」における死者の復活の暗示ととらえられました。
預言者ヨナは神の命令を無視して逃げ出し、魚に呑み込まれてしまいますが、3日後に吐き出されて復活。ヨナのエピソードは、イエスの復活の予言(予型)ととらえられました。

※1ラファエッロ・サンツィオ『預言者エゼキエルの幻視』1518年/ピッティ美術館(フィレンツェ)

※2ミケランジェロ・ブオナローティ『預言者ヨナ』(『天地創造』より)1508~12年/システィーナ礼拝堂(ヴァチカン)

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著者

監修:池上英洋 イラスト:まつおかたかこ

監修:池上 英洋(いけがみ・ひでひろ) 美術史家。東京造形大学教授。東京藝術大学修士課程修了後、イタリア・ボローニャ大学などでの在外研究、恵泉女学園大学準教授、國學院大學準教授を経て現職。著書に、『ダ・ヴィンチの遺言』(河出書房新社)、『西洋美術史入門』(筑摩書房)、『ルネサンス 歴史と芸術の物語』(光文社)、『「失われた名画」の展覧会』(大和書房)、編著に『西洋美術史入門 絵画の見かた』(新星出版社あ9など。 イラスト:まつおかたかこ  イラストレーター。雑誌、広告、書籍をはじめ展覧会などでも幅広く活動中。活躍中。

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