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第5回

楽しくて、笑顔になれる、元気になれる──それが友だち

2020.08.26更新

読了時間

  不安になったら、落ち込んだら、「ひとりになる勇気」をもってみよう。友だち関係で悩む中高生に絶対読んでほしい本が誕生!齋藤孝先生が伝授する、一生使える無敵の人間関係術!
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楽しくて、笑顔になれる、元気になれる──それが友だち

 

「友だち」という言葉のまわりにある漠然としたイメージに、まどわされないでほしいと思います。
「友だちは多いほうがいい」と思い込んでしまうと、「友だちが多いことはうらやましい」ことになりますし、「友だちが少ないと恥ずかしい」ことになってしまいます。
 さらには、「友だちがいないとみじめ」「友だちがいないなんて人に知られたくない」ということになっていってしまいます。
 これでは、「友だちがいないこと」「いつもひとりでいること」が怖くなってしまいますね。
 それほど仲のいい友だちでなくても、つながっていたいと考える人が多いのは、こういう発想に毒されてしまっているんじゃないかな。

 友だち関係が不安で仕方ない人たちを、ぼくは「友だちいないと不安だ症候群」と呼んでいます。
 友だちがいなくなることを怖がり、心配しすぎてしまう「心のクセ」のことです。
 友だちいないと不安だ症候群の人は、
「つながっていないと不安」
「嫌われたくない」
「ひとりぼっちになってしまうのは怖い」
 という思いから離れられません。
 だから、SNSを頻繁にチェックし、やりとりをしつづける。
 グループの一員でありつづけようと、何をするにも、どこに行くにも一緒に行動しようとする。
 でも、それは楽しい友だち関係なのかな?
「友だちはいなくちゃいけないもの」「友だちがいなくなったら、自分は居場所を失ってしまう」という強迫観念のようなものに取りつかれて、本来の友だち関係の意味を忘れてしまっているように見えます。

「友だちとは──一緒にいて楽しくて、笑顔になれる、元気になれる存在」
 それだけでいいんじゃないかな?
 気楽に、シンプルに、友だちをそう定義づけてみてはどうでしょう。
 一緒にいて、素直に楽しいと思えない相手だったら、笑顔になれないような関係だったら、自分のなかの活力がしぼんでしまうような関係だったら、それは友だちじゃないということ。
 そういう相手と、無理して友だちでありつづけようとする必要はないということ。
 べつにその人と縁を切り、絶交しなくていいんですよ。
 先ほど、友だちのあり方を二段がまえに切り替えてみようという話をしました。

・気持ちの通じ合う相手と、濃い友だち関係を築く
・友だちになれそうにない人とも、おだやかな関係を築く


 気の合う友だちとしてつきあうことはできなくても、「知り合い以上友だち未満」くらいの距離感で、薄く浅くつきあっていけばいいのです。
 つきあい方の濃度を変えるだけですが、「友だちでいなきゃいけない」という思い込みにしばられているときとは気持ちがガラッと変わると思います。

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著者

齋藤 孝

1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞。『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)などベストセラーも多数。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。

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