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新作歌舞伎「ワンピース」から古典歌舞伎へ

第1回

歌舞伎はむずかしくない

2018.04.20更新

読了時間

【 この連載は… 】『スーパー歌舞伎II ワンピース』出演中の歌舞伎役者・坂東新悟さん×「マンガでわかる歌舞伎」監修・漆澤その子先生のトークイベントをもとに再構成。初心者でも楽しめる古典歌舞伎と新作歌舞伎の世界を紹介します。(このトークイベントは2018年3月6日にアーツ千代田3331にて行われました)

漆澤 歌舞伎は敷居が高くて、わかりにくいと思われている方が多いのではないでしょうか?私は長く歌舞伎の研究をしていますが、多くの方に思われているよりずっと気軽に楽しめるものです。今回のイベントを通して歌舞伎をもっと身近に感じてほしいと思います。

坂東 はい。よろしくおねがいします。

漆澤 難しそうというイメージがありますけど、ここ5年くらいでカラフルな歌舞伎の入門書が書店に並び始め、生活の中で歌舞伎は以前よりも身近なものになってきているのかなと思います。その背景には、新悟さんをはじめとする若い役者さんたちが、『ワンピース』のような新作歌舞伎を上演してくださることが大きいと思います。若い世代が共感できる内容を上演されることで、歌舞伎を身近なものにしていると思います。『ワンピース』は役者のセリフも現代語ですし、ストーリー展開もスピード感がある。他にもプロジェクションマッピングを多用した演出があったりと、普段歌舞伎を観ない方も楽しめる演目だと思います。実際に出演されていかがでしたか?

坂東 私は再演版『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』に出演させていただいております。昨年東京公演にお勤めしまして、4月は大阪松竹座、5月に名古屋御園座の公演に出演させていただく予定です。『ワンピース』はご存知の通り漫画が原作です。原作を好きな方が劇場に足を運んでくださる機会も多く、嬉しく思っています。そして『ワンピース』をきっかけにして、古典歌舞伎を観に来てくださるようになればいいな、と思っております。

漆澤 古典歌舞伎と『ワンピース』では、お客さんの反応は違いますか?

坂東 反応は明らかに違います。『ワンピース』はショーのようなお芝居ですので、お客さんも一体になって楽しんでくださいます。ライブのような場面もあるのですが、そこではみなさん立って、本当のライブのように盛り上がってくださいます。

漆澤 お客さんと舞台が一体になるというのは、演劇において一番の醍醐味ですね。

坂東 映画やテレビと違う点ですね。お客さんと同じ空間にいるというのは、生の醍醐味だと思います。

漆澤 観客と舞台が一体となるのは、江戸から続く歌舞伎の本来のかたちだと、研究者として私は思います。新悟さんにとって、『ワンピース』で一番印象的なことは何でしょうか?

坂東 やはり客層ですね。先程もお話しましたが、漫画が原作なので、『ワンピース』だから観てみよう、と足を運んでくださった方が大勢いらっしゃいました。なかには歌舞伎も『ワンピース』も知らないけど楽しそうだから来てみた、という方もいらして、今までとは違う客層の方たちに来て頂けたと思います。

漆澤 私は、これまで歌舞伎に縁のなかった人たちのことを“未だ歌舞伎に目覚めていない方”と認識しています。そんな方が、『ワンピース』をきっかけに劇場に足を運んでいるということは、これまでの「格調が高い」「綺麗な着物を着ている人だけが観に行くもの」といった印象ではなくなりつつあるときが遂に来た!ということではないでしょうか。敷居が高いという印象を変えるのが、まさに“今”じゃないかと思います。

坂東 はい(笑)。

漆澤 そこで、今の歌舞伎のムーブメントのようなものを一時的な流行にせず、歌舞伎の面白さを知って貰いたいと思うのですが、その鍵となるのは“わかりやすさ”じゃないかと思います。その点、『ワンピース』はとてもわかりやすかった。ただ、『ワンピース』は面白かったけど、他のは難しそうだから観に行かないわ、となるのは残念です。週末の歌舞伎座に行っても『ワンピース』はやっていませんしね。じゃあ週末の歌舞伎座では何をやっているか?と言いますと、古典歌舞伎が上演されています。そこで、私は『ワンピース』を面白かったという方に、是非古典歌舞伎の面白さを知ってほしいと思っているのです。

(次回は、4月27日(金)22:00頃に更新予定です)

関連書籍

『マンガでわかる歌舞伎』 監修:漆澤その子
誠文堂新光社 定価:1,600円(+税)

この本を購入する

坂東新悟さん 公演情報

平成30年 4月 スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」ナミ/サンダーソニア/サディちゃん 松竹座(詳細:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/osaka/play/538

平成30年 5月 スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」ナミ/サンダーソニア/サディちゃん 御園座(詳細:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/539

平成30年 六月大歌舞伎 「妹背山女庭訓 三笠山御殿」(昼の部) 歌舞伎座(詳細:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/567

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著者

漆澤その子× 坂東新悟

漆澤 その子(うるしざわ・そのこ):1970年東京都生まれ。1993年筑波大学第一学群人文学類卒業。1999年筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。2001年博士(文学)。現在、武蔵大学人文学部教授。主な著書『歌舞伎の衣装鑑賞入門』(共著・東京美術)、『明治歌舞伎の成立と展開』(慶友社)など。/坂東 新悟(ばんどう・しんご):平成2年12月5日生まれ。坂東彌十郎の長男。平成7年7月歌舞伎座「景清」の敦盛嫡子保童丸で初代坂東新悟を名のり初舞台。平成24年12月南座「佐々木高綱」の高綱娘薄衣ほかで名題昇進。女方として古典作品から新作歌舞伎まで幅広く演じる他、立役にも積極的に取り組み、多様な役を確実にものにしている。

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