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よみものどっとこむ

新作歌舞伎「ワンピース」から古典歌舞伎へ

第3回

現代語にするとわかりやすい

2018.05.02更新

読了時間

【 この連載は… 】『スーパー歌舞伎II ワンピース』出演中の歌舞伎役者・坂東新悟さん×「マンガでわかる歌舞伎」監修・漆澤その子先生のトークイベントをもとに再構成。初心者でも楽しめる古典歌舞伎と新作歌舞伎の世界を紹介します。(このトークイベントは2018年3月6日にアーツ千代田3331にて行われました)

学生からの質問でよくあるのが、「歌舞伎ってストーリーが難しそうで、セリフで何を言っているのかわからない」というものです。確かに、言葉がわからないと面白さは伝わりづらいと思います。ここでは、歌舞伎のなかでもよく上演される『助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』を例にして、解説したいと思います。

【登場人物】
粋ないい男の“助六”
遊女の“揚巻”
白髪のお大尽の“意休”

【ストーリー】
父の仇を討つのに必要な刀を探すため、遊郭に出入りしていた助六は、遊女の最高位である傾城の揚巻と恋仲になる。一方、羽振りはいいがモテない意休は、揚巻に熱を上げていたが、実はこの意休こそ、助六の探す刀を持つ男だった……。

場面は、遊女の“揚巻”が、“助六”の悪口ばかりを言う“意休”に対して、啖呵を切るシーン。

「お前の目を忍んで助六さんに逢うからは、客さん方の間中で、悪態口はまだな事。叩かりょうがぶたりょうが、手にかけて殺さりょうが、それが怖うて間夫狂いがなるものかいな」

これを現代語に訳してみると、

「あなたに内緒で助六さんに会うんだから、他のお客さんの前で悪口を言うくらい言わせてあげる。でも、叩かれようが、手にかかって殺されそうが、助六さんに会うのを辞めたりはしないんだからね!

(出典:『助六由縁江戸桜 寿曽我対面 (歌舞伎オン・ステージ (17)) 』(諏訪春雄編 白水社)より。
以下同様)
(編集部注:ピンク文字は、講演で特に強調されたセリフです。)

ということを言っているわけです。「間夫狂いがなるものかいな」とありんす言葉で言われるとやんわり聞こえますが、実際は「助六さんに会うのを辞めたりはしないんだからね!」と堂々と彼氏に会うことを宣言しているわけですから、揚巻さんはかなりストレートにものを言っているんですね。

更に揚巻さんの啖呵は続きます。

「助六さんと意休さんを並べて見ると、こちらは立派な男振り、こちらは意地の悪そうな男つき。たとえようなら、雪と墨、硯の海もなるとの海も、うみという字に2つはなけれど、深いと浅いが間夫と客。間夫がなければ女郎は暗闇。くらがりで見ても、助六さんと意休さんを取り違えてよいものかいなあ」

これを現代語にすると、

「助六さんと意休さんを並べてみると、助六さんは立派なイケメン、意休さんは見た目から性格が悪そう。例えるなら、雪と墨!小さな硯の海も鳴門の海も、どちらも「海」ではあるけれど、カレシとお客さんでは思いの深さが違うのよ。カレシがいなかったら遊女の仕事はつらすぎて……。どんなに暗いところでだって、助六さんと意休さんを間違えたりなんかしないわ!

ここでも、揚巻さんははっきり言います。「どんな暗いところにいたって、助六さんと意休さんを間違えるわけないでしょ!」というわけです。ここまで言いたいことが言えるというのはカッコいいですよね。「よいものかいなあ」とありんす言葉でやんわり言うので、音のニュアンスとしては強い口調ではありませんが、内容としてはこう、ストレートパンチを相手に食らわしているんですよね。古典歌舞伎に出てくる揚巻のカッコよさが、セリフからも伝わるんじゃないかなと思います。

さて、いかがでしょうか?

古典歌舞伎は敷居が高いと思われている方も、実は現代語に訳してみると現代の私たちでも充分に感情移入できるのではないでしょうか?

共感できたり、スカッとしたりする部分もあって、実は歌舞伎の登場人物って観ている私たちなのかも、と思ったりします。

ぜひ、週末は歌舞伎へ!もっともっと歌舞伎を楽しんで貰えたらと思います。

坂東さん、今日はありがとうございました。

(終わり)

関連書籍

『マンガでわかる歌舞伎』 監修:漆澤その子
誠文堂新光社 定価:1,600円(+税)

この本を購入する

坂東新悟さん 公演情報

平成30年 4月 スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」ナミ/サンダーソニア/サディちゃん 松竹座(詳細:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/osaka/play/538

平成30年 5月 スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」ナミ/サンダーソニア/サディちゃん 御園座(詳細:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/539

平成30年 六月大歌舞伎 「妹背山女庭訓 三笠山御殿」(昼の部) 歌舞伎座(詳細:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/567

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著者

漆澤その子× 坂東新悟

漆澤 その子(うるしざわ・そのこ):1970年東京都生まれ。1993年筑波大学第一学群人文学類卒業。1999年筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。2001年博士(文学)。現在、武蔵大学人文学部教授。主な著書『歌舞伎の衣装鑑賞入門』(共著・東京美術)、『明治歌舞伎の成立と展開』(慶友社)など。/坂東 新悟(ばんどう・しんご):平成2年12月5日生まれ。坂東彌十郎の長男。平成7年7月歌舞伎座「景清」の敦盛嫡子保童丸で初代坂東新悟を名のり初舞台。平成24年12月南座「佐々木高綱」の高綱娘薄衣ほかで名題昇進。女方として古典作品から新作歌舞伎まで幅広く演じる他、立役にも積極的に取り組み、多様な役を確実にものにしている。

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