第6回
眼でできることで楽しめる世界を拡げたい
2018.06.19更新
【 この連載は… 】 「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という難病をご存知ですか? 意識や五感は正常のまま身体が動かなくなり、やがて呼吸困難を引き起こす指定難病です。2014年の「アイスバケツ・チャレンジ」というパフォーマンスで目にした方も多いでしょう。あれから約4年経過した現在、まだ具体的な解決法はありません。本連載では、27歳でALSを発症した武藤将胤さんの「限界を作らない生き方」を紹介します。日々、身体が動かなくなる制約を受け入れ、前に進み続ける武藤さん。この困難とどう向き合っていくのか、こうご期待!
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眼でできることで楽しめる世界を拡げたい
昔から僕は、写真や映像を撮ることが好きでした。今はもう、カメラを構えて手でシャッターをきることができなくなってしまいましたが、「JINS MEME BRIDGE」のアプリを使うことで、この目で見ている景色を、瞬きひとつで再び写真や映像として撮ることができたらと考えると、ワクワクします。
また、僕がEYE VDJをやり、楽器演奏者の人やラッパーの人とセッションできたら、すごく楽しいだろうな、とも思います。
あるいは、視線で絵が描けるようになったりするのも、とても楽しいことでしょう。
障害者のためのツールを見ていると、日常生活の中の支障を減らせればいいだろう、最低限のことができればいいだろう、といった視点で考えられていることが多いのです。
疾患や障害を抱えた人は、「とりあえず日常生活を無事に送れることだけでありがたい」と思っていなければいけないのでしょうか。それ以上のこと、好きなことをやることを我慢したり、表現活動をあきらめたりしなければならないものでしょうか。
ALSに限らずさまざまなハンディを抱えた人も、それぞれの制約を超えて「好きなこと」がもっといろいろできるようになったら、前向きにイキイキと生きていく意欲をかきたてられるようになると思います。
僕は、ハンディがある人ができること、その可能性を拡げたいのです。
© 阪本勇
「すべての人に表現の自由を」
それが、このプロジェクトで、僕が社会にもっとも発信したいメッセージでした。
その最初のアプローチが、僕にとっては眼でできることを増やすことでした。
僕たちは「オープン・イノベーション」の姿勢で、開発してきたソフトウェアの軌跡を、無償で世界中の開発者に公開しています。このアプリの機能がいっそう飛躍的に充実していってほしいと願っているからです。
機能が増えていくことで、1人でも多くの人の表現の自由を叶えられるように。
僕の「EYE VDJ」というアイディアは、僕自身が制約のある生活を余儀なくされたからこそ、思いついたものでした。普通の健常者として生きていたら、こんな発想は出てこなかったと思います。
そういう意味では、僕は健常者であったときよりも今のほうが、発想が豊かで柔軟になっている、といえます。
制約が、今の僕を羽ばたかせてくれているのだと思います。けっして負け惜しみなんかじゃなくて―。
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一般社団法人WITH ALS
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