第22回
20年後に向けた未来予想図
2018.08.14更新
【 この連載は… 】 「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という難病をご存知ですか? 意識や五感は正常のまま身体が動かなくなり、やがて呼吸困難を引き起こす指定難病です。2014年の「アイスバケツ・チャレンジ」というパフォーマンスで目にした方も多いでしょう。あれから約4年経過した現在、まだ具体的な解決法はありません。本連載では、27歳でALSを発症した武藤将胤さんの「限界を作らない生き方」を紹介します。日々、身体が動かなくなる制約を受け入れ、前に進み続ける武藤さん。この困難とどう向き合っていくのか、こうご期待!
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20年後に向けた未来予想図
6月21日は「世界ALSデイ」です。
僕らは毎年、「WITH ALS」としての新たな活動を、世界ALSデイに発表してきました。
今年は、「20年後の未来、必ずALSは治る病気に」というコンセプトで、眼で奏でる世界初のMUSIC FILMを制作、発信したいと考えています。
20年後の2038年、ALSという病気はどうなっているか、どんな社会ができているか、僕らなりの熱いメッセージをこめたものになる予定です。
ALSに苦しむ患者さんは、現在、世界中に約35万人いるといわれています。僕らは、日本国内だけでなく、世界に向けて広くこのメッセージを発信したいと考え、アメリカを拠点として映像制作の分野で優れた才能を発揮している集団「Cutters Studios(カッターズスタジオ)」をはじめ、世界最高峰のチームとタッグを組んで、制作に取り組んでいきます。
僕たちだけの力では実現が難しいので、クラウドファンディングによってみなさんのご支援をいただくことにしました。みなさんからのあたたかなご支援のおかげで、目標金額に到達し、鋭意制作を進めています。
完成後は、YouTubeやSNSで日本中、世界中に発信していきますが、まずは2018年の世界ALSデイに先駆け、「WITH ALS」が主催するALS啓発音楽フェス「MOVE FES. 2018(ムーブフェス2018)」で公開し、実際に会場で僕がEYE VDJのライブをやろうと計画しています。
「MOVE FES.」とは、「WITH ALS」に賛同し、サポートしてくれるアーティストが集い、明日への「MOVE」のきっかけを創る音楽フェスです。
2018年6月、東京の会場で、あるいはYouTubeで、ぜひ僕らの思い描く20年後に向けての未来予想図に触れていただければと思います
世界初「眼で奏でるMUSIC FIM」。“20年後の未来の東京”を舞台に、ALSが治る病気になっている未来を描いた。
もうひとつの夢、垣根のない社会
「ALSが治る病気になる社会」と共に、僕が夢見ているのが、「健常者と障害者という垣根のない、BORDERLESSな社会」です。
ラジオで、パラアイスホッケー選手の上原大祐さんにゲスト出演していただいたことがあります。
「パラアイスホッケーというのは、障害者だけのスポーツではないんです。みんなが脚を使わない、すなわち脚をオフにした『オフスポーツ』なんです」
上原さんはそう言い続けて、健常者向けのパラスポーツ体験会をいろいろやっているそうです。
ハンディがあるのは不利なことではない、かわいそうなことでもない、という認識を拡げていくには、そういった「心のバリアフリー」化を進めていくことが僕は大切だと思います。
パラリンピックなどを見ていると、障害者の記録が健常者の記録を塗り替えるといったことが起きていますね。
義足などの性能が上がったことも関係しているでしょうが、決してそれだけの問題ではないと僕は思います。ハンディがあるからこそ、今使えている筋肉がより発達して、健常者のもつ力以上のものが発揮できるといったことがあるのだと思うのです。
ハンディがあることが、アドバンテージになることもある。こういう認識を多くの人がもっともてるようになれば、やがては、ハンディがあること自体がひとつのブランドになる、といったことも起きてくるでしょう。リブランディングです。
スポーツの世界だけでなく、エンターテインメントでもそういうことはいろいろできるんじゃないかと思います。
ダイバーシティという言葉をあちこちで見かけるようになりましたが、理想とはまだまだ距離があります。本当のダイバーシティというのは、健常者だ、障害者だという文脈を超えた社会だと思うんです。
その垣根を越える挑戦を僕はしたい、そのために「KEEP MOVING」を続けていきます。
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一般社団法人WITH ALS
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