第105回
286話~287話
2016.12.22更新
【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
286 外見と中身は別物ではなく一体である
【現代語訳】
衛の大夫である棘子成(きょくしせい)は言った。「君子というのは実質、中身が大事である。外面的に身を修めたようにし、飾る必要などない」。
これを聞いて子し 貢こうは言った。「惜しいことです。あなたの君子論は。『四頭立ての馬車でも舌には追いつけない』ということわざがあります。外面と中身は別なものではなく一体なのです。虎の皮や豹の皮が珍重されるのは、その毛がついているからです。もし、それが毛を取り去ったなめし皮であったとしたら、犬や羊のなめし皮と同じで区別がつきません。このように外面と学問や礼による飾りも重要なものです。外面と中身が一体となってこその君子と言えます」。
【読み下し文】
棘子成(きょくしせい)曰(いわ)く、君子(くんし)は質(しつ)のみなり。何(なん)ぞ文(ぶん)(※)を以(もっ)て為(な)さん。子貢(しこう)曰(いわ)く、惜(お)しいかな、夫子(ふうし) の君子(くんし)を説(と)くや。駟(し)も舌(した)に及(およ)ばず(※)。文(ぶん)は猶(な)お質(しつ)のごときなり、質(しつ)は猶(な)お文(ぶん)のごときなり。虎豹(こひょう)の鞟(かく)(※)は猶(な)お犬羊(けんよう)の鞟(かく)のごとし。
(※)文……かざる。外面。学問や礼で外面をかざること。
(※)駟も舌に及ばず……速い四頭立ての馬車でも、一度口にした言葉に追いつけないこと。
(※)鞟……犬や羊の毛を取った皮。なめし皮。
【原文】
棘子成曰、君子質而已矣、何以文爲矣、子貢曰、惜乎夫子之說君子也、駟不及舌、文猶質也、質猶文也、虎豹之鞟、猶犬羊之鞟、
287 国民が豊かになれば、君主も豊かになる
【現代語訳】
魯(ろ)の哀公(あいこう)が有若(ゆうじゃく)にたずねた。「今年は凶作で費用が足りない。どうしたらいいだろうか」。
有若は答えた。「税率を十分の一にする徹(※)の税法を用いたらいいと思います」。
哀公はびっくりして言った。「十分の二の税でも足りないというのに、どうして十分の一の税を採用できようか」。
有若が答えて言った。「国民が豊かになれば、君主も豊かになります。国民が豊かなのに、君主がどうして一人窮乏するというのですか。逆に国民が貧しい時に、君主がどうして自分だけ豊かになれるというのですか」。
(※)徹……周代の税法で、税率を十分の一にすること。
【読み下し文】
哀公(あいこう)、有若(ゆうじゃく)に問(と)うて曰(いわ)く、年(とし)饑(う)えて用(よう)足(た)らず。之(これ)を如何(いかん)せん。有若(ゆうじゃく)、対(こた)えて曰(いわ)く、盍(なん)ぞ徹(つて)せざるや。曰(いわ)く、二(に)なるも吾(われ)猶(な)お足(た)れりとせず。之(これ)を如何(いかん)ぞ其(そ)れ徹(てつ)せんや。対(こた)えて曰(いわ)く、百姓(ひゃくせい)足(た)らば、君(きみ)孰(たれ)と与(とも)にか足(た)らざらん。百姓(ひゃくせい)足(た)らずんば、君(きみ)孰(たれ)と与(とも)にか足(た)らん。
【原文】
哀公問於有若曰、年饑用不足、如之何、有若對曰、盍徹乎、曰、二吾猶不足、如之何其徹也、對曰、百姓足、君孰與不足、百姓不足、君孰與足、
*286話と287話が長文のため、今回は2話のみの掲載となります。
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