第107回
290話~292話
2016.12.27更新
【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
290 訴訟ごとは早く解決すべきだ
【現代語訳】
孔子先生は言われた。「ただ一言で、訴訟事件を裁決して、当事者を納得させることができるのは由(子路)(※)ぐらいだろう」。
子路は、一度引き受けたら、すぐに一生懸命仕事をして、期日を延ばしたりしない勇断、正義の人なので、みんな納得した。【読み下し文】
子(し)曰(いわ)く、片言(へんげん)、以(もっ)て獄(うった)えを折(さだ)む(※)べき者(もの)は、其(そ)れ由(ゆう)なるか、と。子路(しろ)は宿諾(しゅくだく)(※)無(な)かりき。
(※)獄えを折む……裁判をして判決を下すこと。
(※)宿諾……承諾後にぐずぐずすること。
【原文】
子曰、片言可以折獄者、其由也與、子路無宿諾、
(※)子路の人物評……子路は孔子の門人の第一の人である。早くに死んだ顔淵などのように学識が一番優れているのではなく、そそっかしいところもあったが、孔子が身近に感じ、かわいく思っていた弟子である。正直、誠実であるが、少々勇が勝ち過ぎるところもあった(105話参照)。孔子と子路は、丈夫で立派な体形だったという。中島敦の名作『弟子』は、子路と孔子を描いたものだ。
291 世の中から訴訟ごとをなくしたい
【現代語訳】
孔子先生は言われた。「訴訟ごとを聴いて、判決を出すことは、私も人並みにできるとは思う。しかし、私の願いとするところは、この世の中から訴訟ごとをなくしたいということなのである」。
【読み下し文】
子(し)曰(いわ)く、訟(うった)えを聴(き)くは、吾(われ)は猶(な)お人(ひと)のごときなり。必(かなら)ずや、訟(うった)え無(な)からしめんか。
【原文】
子曰、聽訟吾猶人也、必也使無訟乎、
292 政治は熱意を持って誠実に行うべきだ
【現代語訳】
子張が政治にたずさわる時の心がけをたずねた。孔子先生は言われた。「その立場についたなら、やりがいを持ち、あきることなく熱意を持ってあたることだ。また、事にあたる時は、まごころを持って忠実に行うことだ」。
【読み下し文】
子張(しちょう)、政(まつりごと)を問(と)う。子(し)曰(いわ)く、之(これ)に居(お)りて(※)倦(う)むこと無(な)かれ。之(これ)を行(おこな)うに忠(ちゅう)を以(もっ)てせよ。
(※)之に居りて……本書のように「政治家の地位にあったら」と、「心を政治に専念して」と解する説(朱子など)がある。どちらも同じような意味だが、前者のように読んだほうが通じやすい。
【原文】
子張問政、子曰、居之無倦、行之以忠、
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