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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第149回

388話~390話

2017.02.28更新

読了時間

【 この連載は… 】 毎日数分で「東洋最大の教養書」を読破しよう! 『超訳 孫子の兵法』の野中根太郎氏による、新訳論語完全版。読みやすく現代人の実生活に根付いた超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。

388 過去を含め、各国のよいところを学んで取り入れる


【現代語訳】

顔淵が天下国家をよく治めるにはどうしたらよいかをたずねた。孔子先生は言われた。「夏(か)の暦(こよみ)は、農耕に便利なのでこれを用い、車は殷(いん)のものが実用的でよい。冠(かんむり)は、周のものがよく、舞楽はやはり舜の韶しようがよい。鄭(てい)の低俗な音楽を遠ざけ、口先だけの者を遠ざけたい。鄭の音楽は人心を乱れさせるし、口先だけの者は天下を危うくする」。


【読み下し文】

顔淵(がんえん)、邦(くに)を為(おさ)めんことを問(と)う。子(し)曰(いわ)く、夏(か)の時(とき)(※)を行(おこな)い、殷(いん)の輅(ろ)(※)に乗(の)り、周(しゅう)の冕(かんむり)(※)を服(ふく)す。楽(がく)は則(すなわ)ち韶舞(しょうぶ)(※)し、鄭声(ていせい)(※)を放(はな)ち、佞人(ねいじん)を遠(とお)ざく。鄭声(ていせい)は淫(いん)にして、佞人(ねいじん)は殆(あやう)し。


(※)夏の時……夏の暦法。夏暦は今の陰暦。旧暦。

(※)殷の輅……殷の時代、天子の乗り物としたものを輅といった。木製で漆を塗った堅牢(けんろう)な車。

(※)周の冕……冕は祭礼の時にかぶる冠。周の冠が文飾豊かでよいとされた。

(※)韶舞……舜の楽で、孔子は絶賛するほど気に入っていた。

(※)鄭声……鄭国の音楽。孔子は淫びで人倫を乱すものと嫌った。


【原文】

顏淵問爲邦、子曰、行夏之時、乘殷之輅、服周之冕、樂則韶舞、放鄭聲、遠佞人、鄭聲淫、佞人殆、


389 先のことを見通し配慮しなければならない


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「人は遠い先のことまで見通して、配慮しておかないと、必ず近いところでつまずくことになる」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、人(ひと)、遠(とお)き慮(おもんぱか)り(※)無(な)ければ、必(かなら)ず近(ちか)き憂(うれ)え有(あ)り。


(※)遠き慮り……周囲を見渡し、行く先を遠くまで見渡すこと。


【原文】

子曰、人而無遠慮、必有近憂、


390 徳よりも色が好きな人ばかりというのは困ったことだ


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「困ったことだなあ。私はまだ色を好むことと同じくらいに、徳の修養が好きな人を見たことがない」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、已(や)んぬるかな(※)。吾(われ)は未(いま)だ徳(とく)を好(この)むこと、色(いろ)を好(この)むが如(ごと)き者(もの)を見(み)ざるなり。


(※)已んぬるかな……嘆いていることを意味し、「困ったことだな」、「もうだめかな」の嘆声。この論語の「已んぬるかな」は「已矣乎」であり、まだ絶望はしていない時に使われる。これに対し、213話の「已んぬるかな」は「已矣夫」であり、もう望みがないと嘆ずる意とされる。なお、この論語の内容は、すでに222話でも出ているが、そこには「已んぬるかな」がついていない。


【原文】

子曰、已矣乎、吾未見好德如好色者也、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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