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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第25回

69話~71話

2016.08.25更新

読了時間

69 人格者でなければ善悪は見抜けない


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「人のよいところと悪いところを正しくわかる人は、仁者すなわち最高の人格者である」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、惟(た)だ仁者(じんしゃ)のみ、能(よ)く人(ひと)を好(この)み、人(ひと)を悪(にく)む。


【原文】

子曰、惟仁者能好人、能惡人、


70 仁者を志している人は、悪いことをしない


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「本当に仁(最高の人格)を身につけようと志している人であれば、悪い行いをする心配はない」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、苟(まこと)に仁(じん)に志(こころ)さば、悪(あ)しきことなし。


【原文】

子曰、苟志於仁矣、無惡也、


71 正しければ貧しくても気にすることはない


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「財産と地位は誰でも欲しいものである。ただ、正しいやり方で手にしたものでないと身につかないし、危うい。貧乏と地位の低さは誰でも嫌なものである。ただ、自分の正しいと考える生き方を貫いてそうなったのなら、いいではないか。君子は、仁を忘れて、財産、地位、名誉を手にするものではないだろう。君子はたとえ食事をするちょっとした時でも、あわただしい時でも、ひっくり返りそうな大変なことが起きても、仁の人であろうとすることに変わりがないものだ」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、富(とみ)と貴(とうと)きは是(こ)れ人(ひと)の欲(ほっ)する所(ところ)なり。其(そ)の道(みち)(※)を以(もっ)て之(これ)を得(え)ざれば処(お)らざるなり。貧(ひん)と賤(いや)しきとは是(こ)れ人(ひと)の悪(にく)む所(ところ)なり。其(そ)の道(みち)を以(もっ)て之(これ)を得(え)ざれば去(さ)らざるなり。君子(くんし)は仁を去(さ)りて、悪(いず)くにか名(な)をなん。君子(くんし)は終食(しゅうしょく)の間(あいだ)にも仁(じん)に違(ちが)うことなし。造(ぞう)次(じ)(※)にも必ず是(ここ)においてし、顚沛(てんぱい)(※)にも必(かなら)ず是(ここ)においてす。


(※)其の道……自分の考える正しい道。

(※)造次……あわただしい時。

(※)顚沛……ひっくり返りそうな大変な時。


【原文】

子曰、富與貴、是人之所欲也、不以其道得之、不處也、貧與賤、是人之所惡也、不以其道得之、不去也、君子去仁、惡乎成名、君子無終食之間違仁、造次必於是、顚沛必於是、

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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