第4回
旧約聖書のモチーフ 原罪と楽園追放/大洪水/バベルの塔
2018.03.06更新
戦隊ヒーローのレッドはリーダーで、パンをくわえた女子学生は曲がり角で誰かとぶつかる……。そんなお約束は西洋絵画にも。単行本出版を記念して、書籍から厳選コンテンツを特別公開!
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神はアダムとイヴをエデンの園に住まわせていました。エデンの園にはたくさんの木の実がなっていましたが、善悪の木の実(禁断の木の実)だけは食べてはいけないと神に言われていました。
ある日、イヴは蛇にそそのかされて善悪の木の実を口にし、アダムにもすすめて2人は神との約束を破ってしまいます。これが、人間は生まれながらにして罪深いというキリスト教思想の根本になっている「原罪」です。
神の怒りを買ったアダムとイヴは罰を与えられ、エデンの園を追放されてしまいます。善悪の木の実を食べた人間は、知識を得て恥や分別を身につける代わりに多くの苦悩を背負うことになったのです。
原罪の場面ではリンゴが善悪の木の実として描かれることが多く、楽園追放の場面では2人を追い立てる剣を持った天使もよく描かれます。
地上に人間が増えて悪徳や堕落が目立つようになると、神は大洪水を起こして世界をリセットしようと考えます。しかし、ノアという善良な老人とその家族は助けることにして、ノアに彼らと雌雄一対の動物を乗せる箱舟を造るよう命じます。
その後、地上は40日間の豪雨に見舞われ、150日もの間水に覆われてしまいます。ノアたちが乗った箱舟は山の頂(いただき)に留まり、ノアはそこから烏を飛ばしますが、船の周りを飛び回るだけでした。次に鳩を飛ばしますが、すぐに戻ってきてしまいます。鳩を2度目に放つとオリーブの枝をくわえて戻ってきました。最後は戻ってこなかったため、水がすっかり引いたと考えたノアは箱舟を降りて上陸します。
神が細かく寸法を指定してノアに造らせ、大洪水から救った箱舟は、のちにキリスト教絵画において教会を暗示するモチーフになります。
※ 1シュメール文明:メソポタミアに起こった初期の文明のひとつ。紀元前3000年頃から栄え、楔形文字や円筒印章、ウルやウルクなどの都市国家の遺跡で知られる
世界の言語が複数あることを説明するためのストーリー。天に近づく塔を建てようとした人間の不遜(ふそん)な行いに腹を立てた神は塔を崩壊させ、人々の言葉をバラバラにしてしまいます。
旧約聖書のこの物語の一節には、唯一の存在であるはずの神が「我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、お互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう」(『創世記』11:7)と、「我」ではなく「我々」という複数形を使う箇所があります。このため、このエピソードが他民族の多神教の神話に起源をもつことがわかります。
「バベル」とは神が言葉を混乱させた(バーラル)ことにちなむ名前ですが、かつてユダヤ民族を連行して約50年にわたり「バビロン捕囚」を行った、新バビロニア帝国の暗示でもあります。首都バビロンにはジッグラトという塔があり、その塔が崩れる話に溜飲をさげたのです。
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