第5回
旧約聖書のモチーフ サムソンとデリラ/ダヴィデとゴリアテ ほか
2018.03.13更新
戦隊ヒーローのレッドはリーダーで、パンをくわえた女子学生は曲がり角で誰かとぶつかる……。そんなお約束は西洋絵画にも。単行本出版を記念して、書籍から厳選コンテンツを特別公開!
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アブラハムの甥にあたるロトは、神の啓示を受けてカナンへ向かう旅の途中、アブラハムと別れてソドムの街に住むことにします。
しばらくして、神は風紀が乱れたソドムとゴモラの街を天からの火で滅ぼそうと考えますが、そのことをロトと彼の家族にだけ伝えて逃がすことにします。神から「後ろを振り返ってはならない」と忠告されていた一家でしたが、途中で妻が振り返り塩の柱になってしまいます。
燃える街から逃げのびた娘2人は、子孫を残すためにロトを酔わせ近親相姦で子どもを生みます。ユダヤ教は近親相姦を認めていませんが、ユダヤ民族と対立する周辺民族は近親相姦の神話をもつ多神教を信仰していました。
近親相姦による娘たちの子どもはユダヤの対立民族の祖とされ、物語は他民族を批判するためのエピソードとして書かれています。
旧約聖書の『士師記』に登場するサムソンは、同じユダヤ人も手を焼くほどの乱暴者ですが、怪力の士師としてイスラエルを統治しました。
敵のペリシテ人の娘デリラにほれて結婚し、怪力の秘密が頭髪にあることをもらしてしまいます。身体の一部に不思議な力が宿るという考えは、相手の肉を食べてその力を得るカニバリズムの名残ともいえるでしょう。
ある日デリラに膝の上で眠らされたサムソンは、待機していたペリシテ人の兵士に髪をそり落とされて怪力を失います。捕虜となったサムソンは目をえぐり取られ働かされますが、神の力で髪が伸びると大暴れし、ペリシテ人を道連れに、がれきに埋まって死亡します。よく絵画化されるのは、髪を切られるシーンや目をえぐられるシーン。旧約聖書の中でも人気があるサムソンの物語は、オペラや映画の題材にもなっています。
イスラエルと対立していたペリシテ人の軍には、ゴリアテという戦士がいました。彼は身長3m という巨体に青銅の鎧兜(よろいかぶと)を身に着け、鉄の武器を持ち、誰もが恐れをなす存在。そのためイスラエル軍は劣勢を強いられます。そこに現れたのが、まだ年若いダヴィデ。紐と石だけを持ってゴリアテに対峙すると、額に向かって紐で石を投げます。そして命中して倒れた所に近寄り、相手の剣で首を斬り落としました。
それまで羊飼いをしながら、サウル王に竪琴を弾く楽師として仕えていた青年が、イスラエルのヒーローになった瞬間です。以降、戦いはイスラエル優位のうちに進み、ヒーローとなったダヴィデはやがてイスラエル王国の第2代国王となります。
ダヴィデはその英雄的な振る舞いに加えて、イエスの先祖ともされることから、キリスト教徒にとっても屈指の人気キャラクターです。
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