第6回
旧約聖書のモチーフ スザンナの水浴/トビアスと天使 ほか
2018.03.20更新
戦隊ヒーローのレッドはリーダーで、パンをくわえた女子学生は曲がり角で誰かとぶつかる……。そんなお約束は西洋絵画にも。単行本出版を記念して、書籍から厳選コンテンツを特別公開!
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スザンナは旧約聖書の外典の中で、豊満な肉体をもった美しい女性として登場する人物。彼女は庭で水浴をする習慣があり、それを知ったユダヤ人の長老2人に、水浴中に「自分たちと関係をもたなければ、不貞をはたらいていると訴える」と脅されます。これをはねのけた彼女は、当時の法律で死罪とされている姦通罪(かんつうざい)で訴えられます。しかし長老2人の嘘が、裁判で預言者ダニエルによって暴かれ、スザンナは助け出されます。
身持ちの堅いスザンナは女性信者の鑑であり、キリスト教では美徳のエピソードとして語られています。
一方、画家たちにとってはルネサンス期以降、女性の裸体を描く口実となり、しばしばモチーフにされています。また、初期キリスト教時代には迫害を受ける人々の手本として支持され、中世にはユダヤ人や異教徒に脅かされる教会の象徴にもなりました。
ユディトも旧約聖書の外典に登場する女性。エルサレム郊外のベトリアの街に住む、美しい未亡人でした。
ある日、ユディトの住む街は強国アッシリアに攻められ、将軍ホロフェルネスの軍に包囲されてしまいます。食糧が尽きそうになったとき、ユディトはアッシリアに寝返ったふりをして敵の祝宴にのり込み、ホロフェルネスを泥酔させて首を斬り落とします。将軍を欠いたアッシリア軍は士気が乱れ、街から撤退します。
この物語では、ユディトが首を落とすシーンがよく描かれます。街を救った勇敢な女性信者、悪徳に打ち勝つ美徳のたとえなどとしても語られます。
中世から人気が高かったユディトは反宗教改革期には罪に対する勝利のモチーフとして扱われ、のちに男を滅ぼす運命の女「ファム・ファタル」や、自立した女性のシンボルとしても人気が出ました。
旧約聖書の外典に収録されたトビアスと天使の物語は、盲人のトビトが息子トビアスを貸したお金の回収に行かせるところから始まります。神は旅の案内役に大天使ラファエルを遣わし、トビアスはラファエルの力を借りて無事に集金を終え、帰宅します。旅の途中、ラファエルは魚を捕まえて胆のうを取り出し、帰ってからトビトの目に塗るように指示します。言われた通り父の目に胆のうを塗ると、目が見えるようになりました。
キリスト教では本来、高利貸しは禁止されています。しかし銀行が不可欠となったルネサンス期には高利貸し替わりの両替商が流行し、トビアスのエピソードは金融都市として栄えたフィレンツェやシエナで特に好まれました。支店間のお金の移動は身内の人間が行っていたため、トビアスを子弟の姿で描かせるなど、旅の安全を守るお守りとしても人気を得ました。
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Rohan
2018.03.23
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