Facebook
Twitter
RSS

第13回

失敗したときには「しまった!」ではなく、「自分らしくない」と言おう

2019.05.09更新

読了時間

臆病、意地っ張り、せっかち…。あなたは自分の「性格」に苦労していませんか? 性格は変えられないというのはじつはウソ。性格とは、人が生きていく上で身に付けた「対人戦略」なのです。気鋭の認知科学者である苫米地英人博士が、性格の成り立ちや仕組み、変え方などを詳しく解説します。
「目次」はこちら

 もう、おわかりでしょうか。
 思考や行動の傾向を根本的に変えるためには、まず、固定化・強化されたマイナスの自己イメージを捨てる必要があります。

 そのためには一体、何をすればいいのか。
 まず心がけていただきたいのが、「意識的に、ポジティブな自己対話を行うこと」です。

 私たちは常に、頭の中で自分と対話をしています。
 その内容は「嬉しい」「すごく楽しみ」「ありがとう」「いい人だな」といったポジティブなものから、「疲れた」「学校行きたくない」「ああ、ムカつく」「ふざけんな」といったネガティブなものまでさまざまですが、マイナスの自己イメージを持っている人、自己評価が低い人ほど、ネガティブな内容が多くなります。

 たとえば、「自分はくよくよする人間である」という自己イメージを持っている人は、何かあるとすぐに「ああ、またやっちゃった」「やっぱり自分はダメだ」といった自己対話をします。
「自分は人見知りだ」という自己イメージを持っている人は、大勢が集まる場所に行かなければならないとき、「行きたくないなあ」「またとっつきづらい人だと思われるだろうなあ」といった自己対話をするのです。

 脳は、そういった自己対話の内容を情報としてインプットし、自己イメージを強化します。
 そのため、マイナスな自己イメージを持っている人は、自己対話の内容もネガティブになり、自分とネガティブな対話をすることによって、自己イメージがさらにマイナスになるという悪循環に陥ってしまうのです。

 また、ネガティブな自己対話を行うと、失敗体験が思い出されやすいというリスクもあります。

 たとえば、「自分は人見知りだ」という自己イメージを持っている人が、いきなり大勢の初対面の人に紹介され、動揺して冷や汗をかきまくり、しどろもどろになり、挨拶もそこそこに、その場を立ち去ったとします。

 おそらくその人は、後で「またやっちゃった」「また変な人だと思われた」といった自己対話を繰り返すでしょう。
 するとそのたびに、「初対面の人たちに紹介され、動揺している自分」のイメージが、臨場感をもって、脳内で再生されます。

 脳は、臨場感が高い脳内の仮想的世界(イメージ)を「現実」として認識します。
 つまり、実際には一度しか起こっていない出来事でも、ネガティブな自己対話と共に繰り返し思い出すと、脳はそれを、何度も経験した出来事として認識し、「自分は人見知りだ」という自己イメージが、ますます強化されてしまうのです。

 意識的にポジティブな自己対話を行う必要があるのは、こうした理由からです。

 しかしみなさんの中には、「いきなり、ポジティブな自己対話を、と言われても、何をどうしたらいいかわからない」という人もいるでしょう。

 そこでおすすめしたいのが、「自分(あなた)らしくない」という言葉です。

 みなさんは失敗をしたとき、「しまった!」「最悪!」などと呟いたり、思ったりしていませんか?

 実は、私たちがふだん、無意識のうちに発しているこうした言葉は、「失敗した最悪な自分」という自己イメージを強め、自己評価を下げてしまいます。

 ですから、これからは、失敗したときには「こんな失敗をするなんて、自分らしくない」と思うようにしてください。
「失敗したのは自分らしくない」ということは、つまり、「本来の自分は、失敗するはずのない人間である」ということになります。これなら、失敗したという事実を認識し反省につなげながらも、自己評価を下げずにすむわけです。

 ほかにも、私たちの自己対話にはネガティブな言葉がたくさん使われています。
 ぜひ、それらを注意深く観察し、できるだけポジティブな言葉に置き換えるようにしましょう。

「どうせ自分なんて」「世の中、そんなに甘くない」「うまくいくはずがない」「やっぱりダメだった」……。
 こういった言葉は、すべてNGです。
 失敗したり自信を失ったり悲観的になったりしたときには、とにかく「自分らしくない。自分はもっとできるんだから」と自分に話しかけるのを習慣にしましょう。

 逆に、うまくいったときや、よいことがあったときには、自分に対し「自分らしい」「当然だ」と話しかけます。

 日ごろから、そうした自己対話を心がけることにより、少しずつ自己イメージがマイナスからプラスへと変化していくはずです。

■ ポイント

・自己評価が低い人ほど、自己対話の内容がネガティブになる。
・「自分らしくない」=自己評価を下げない言葉。
・うまくいったとき=「自分らしい!」と自分に声をかけよう。

 

「目次」はこちら

 

【単行本好評発売中!】

この本を購入する
シェア

Share

感想を書く感想を書く

※コメントは承認制となっておりますので、反映されるまでに時間がかかります。

著者

苫米地 英人

1959年、東京都生まれ。認知科学者、計算機科学者、カーネギーメロン大学博士(Ph.D)、カーネギーメロン大学CyLab兼任フェロー。マサチューセッツ大学コミュニケーション学部を経て上智大学外国語学部卒業後、三菱地所にて2年間勤務し、イェール大学大学院計算機科学科並びに人工知能研究所にフルブライト留学。その後、コンピュータ科学の世界最高峰として知られるカーネギーメロン大学大学院に転入。哲学科計算言語学研究所並びに計算機科学部に所属。計算言語学で博士を取得。徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、通商産業省情報処理振興審議会専門委員などを歴任。

矢印